表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

5 自我の【崩壊】

 断片的にある記憶の中に、僕の姿をした獣が皆を襲っている。最初は一番近くにいたNo.023の首を掴み、涙を零すNo.023を殺した。


 次に俺の変化に動揺してしまったNo.053が僕を呼ぶと同時に崩れ去り、攻防を交わしたものの一瞬の隙をついてNo.080を殺した。


 皆を守る個性が欲しいと願ったNo.071は涙で顔をぐちゃぐちゃにし、僕にダメージを与えたもののNo.064を庇うと同時に崩れた。


 普段は大人しく自己主張の少ないNo.064が個性の真価を発動し、丸一日ほどの攻防で衰弱させ、殺した。


モニターはとっくの前に壊れ、部屋は見る影も残さず建物と同時に崩れ瓦礫の上に僕とNo.がいた。


 丸一日のNo.064との交戦で薬の効能が弱まり、理性と暴走状態の狭間の感覚で、僕達は対峙した。


 膝から崩れ、座り込むNo.002に一歩、一歩と近づく。俯きながら涙を流すNo.002にもはや抵抗の意志など感じなかった。


 「ねぇ、No.099。やっぱりこの世界はどうしようもなく理不尽で、優しさなんて欠片もないね…」


 自虐気味に無理をして笑うNo.002を横目にザッと距離を詰める。


 「私達、どうしたら良かったんだろう。どうすれば、あの頃に戻れるのかな…」


 もう『僕』は死にたいのに、身体は勝手にNo.002へと近づいていく。


 「いつかどうせ死ぬなら、皆の腕の中で死にたいとは願ったんだけど。…幾ら何でも早すぎだよ」


 僕とNo.002の距離は0となり、涙で頬を濡らし顔を見上げる。


 「No.099。いつか言った約束、守ってね。そして…」


 そっと壊れモノに触れるかのようにNo.002の手が頬へと触れる。


 「どうか、私達のことを忘れて生きて…。愛してる。私の可愛い弟」


 触れた手から腕へと、身体まで崩壊が広がる。それと同時に身体が呪縛から解き放たれる。腕の中には夥しい量の血液とNo.002だったモノ。


 それを狂ったように握りしめればさらに崩壊は進み灰へと化した。風の流れに乗り、己の手を離れ上昇する灰を見て【僕】は弾けた。


 「ハ、ハハハッ、ハハ…、ハハハッツツツ!!! 『壊す』って、『楽しい』ことだッツ?!!」


 壊れたオモチャみたいに嗤って笑ってわらってワラって…、〈俺〉は【僕】を殺した。 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ