おばあちゃんは魔法使い
僕のおばあちゃんは魔法使いかもしれない…
僕はおとうさんとおかあさんとお父さんのお母さん…つまりおばあちゃんと四人で暮らしている。
僕のおとうさんとあかあさんは仕事がいそがしくてご飯の用意とか家の掃除に服を洗うのはいつもおばあちゃんがやっていた。
僕はおばあちゃんが休む姿を見た事がない!
おばあちゃんは気がつけば台所にいたり洗濯物を畳んでいたり、庭の花に水をやっていたりと休んでる姿を見た事がない!
一度おかあさんに言われておばあちゃんの手伝いをしたら僕はすぐに疲れてしまって休んでいた。
その間もおばあちゃんはずっと動いている。
「おばあちゃん疲れないの?」
「ん?」
おばあちゃんは箒で庭をはきながら振り返った。
「疲れたら休んでるよ」
本当かな?
僕は今度おばあちゃんの休む姿を見てみようとおばあちゃんを一日観察してみた。
今は台所で何かいい匂いがする物を作っている。
じっと扉の影に隠れて見ていると、くるっと振り返って笑顔を向けられた。
「はい、おやつだよ」
「わぁ!」
見るとおばあちゃんが歪な形のドーナツを見せてくれた。
ゴツゴツした形に砂糖がたっぷりとかかっていてまだ湯気が出ている。
「美味しそう!」
「いっぱいお食べ」
おばあちゃんはテーブルに運んでくれるとニコニコと僕が食べる様子を眺めていた。
あまりの美味しさに全てのドーナツを食べるとお腹がいっぱいになる。
「美味しかったー」
僕はその場でゴロンと横になるとそのまま眠ってしまった。
そしてハッとして起きるとお腹にはタオルがかけられていて隣ではおばあちゃんが日向のなか針仕事をしていた。
僕の取れかけたボタンを直してお父さんの靴下の穴を塞いでいる。
やっぱり休んでいない…
テーブルを見れば当然僕が使ったお皿にコップは片付けられて綺麗に拭かれている。
僕のおばあちゃんはすごい!魔法でも使っていなきゃこんな事はできないに違いない。
それにもうひとつ僕は徹底的な証拠を見つけた。
それはおばあちゃんのポケットだ。
おばあちゃんは朝起きると必ず割烹着を着ている。
僕はそれを脱いだ姿を見た事がなかった。
その割烹着にはおへそら辺に大きなポケットが付いていてここからはなんでも出てくるのだ。
僕が髪で手を切った時はすぐに絆創膏が出てきた!
くしゃみをして鼻水を垂らすとティッシュが、お腹がなると飴が…これはちょっと黒飴で好きじゃなかったけど…
とにかくおばあちゃんは僕が困った時になんでもそのポケットからなんでも取り出すのだ!
「おばあちゃんって…やっぱり魔法使いなの?」
僕は耐えきれなくなって聞いてみた。
おばあちゃんはびっくりした顔で目をまん丸にして僕を見つめるとなんでそう思ったのか聞いてきた。
なので僕はずっと前から思っていた事を話した、休まないで働いて僕の困ってる時に何も言ってないのに助けてくれて、ポケットからはなんでも出てくるのだと…
そう言うとおばあちゃんはにっこり笑ってこう言った。
「それはね、おばあちゃんが僕の事が大好きだからわかることなの。だから誰でも魔法使いになる事が出来るんだよ」
「ぼ、僕も!?」
「うん、僕が大きくなったらきっとなれるよ」
そう言ったおばあちゃんはもういない。
部屋にはあの時のおばあちゃんが写真の中でこっちを見ている。
僕は大きくなって私になった。
家族が出来て今度子供も生まれる…
おばあちゃんに手を合わせてその事を報告にきた。
おばあちゃん、僕はまだ魔法使いになれてないよ。
でも生まれてくる子の為に魔法使いになってみせるよ。
おばあちゃんはにっこりと笑っていた。