柊さんはなぜか不機嫌
俺の通う海徳高校には美少女がいる
漆を連想させる品のある艶
一本一本が磁気を帯び、毛がそれぞれ反発しあっているようにも見える
さらさらで触り心地の良さそうな長い黒髪
そして、それらが引き立たせるは彼女の美しい輪郭、瞳、鼻、口
近くにいても遠く感じるそのオーラは、才色兼備を体現したような彼女にふさわしく思える
さて、ではそろそろ紹介に移ろう
彼女の名は”柊 美麗”
海徳高校1年B組だ
ん?俺は誰かって?
おっと、俺としたことが…
俺の名前は”佐藤 浩介”
海徳高校1年B組
成績、普通!
顔、普通!
身体能力、普通!
キングオブ・普通の名をほしいままにしているいわゆる…モブだ
そしてなんと柊さんの隣の席という幸運を勝ち取った男
そんな幸運が起きたら俺も少しは期待しちゃうじゃん?
よくあるでしょ?
『モブが美少女と付き合えた』とか、最近多いじゃん?
でもあれはしょせん創作物ってことに気付いたよ…
世の中の他のモブ君たちはどうか知らんけど少なくとも俺はない
だって…、
柊さんが今日も今日とて俺をすっごい睨んでるんだもん…。
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「…はよ~。」
学校の1年B組の教室のドアを開け、俺は気の抜けた挨拶をした
教室は特有の喧騒さに包まれており俺の声はその中に消えていった
俺は騒ぐクラスメイトを横目に席に着いた
俺の席は教室の窓側、最後尾だ
この席は日向がいい感じに当たってとても気持ちがよい
俺が日課の日向ぼっこに興じていると前の席から声が聞こえた
「よう、おはよ。また日向ぼっこか?よく飽きないな」
そう苦笑交じりにしゃべりかけてきたこいつは俺の数少ない友人の一人
名前は”住吉 颯”
綺麗に切りそろえてある短髪が清潔感をかもしだす、所謂さわやか系イケメンというやつだ
成績はそこそこよくスポーツ万能で、部活はサッカー部に所属している
1年生にもかかわらず既にレギュラー入りしている
普通ならかかわることはないだろうが席が前後だったのと、妙にこいつとは馬が合ったという理由で仲良くなったのだ
「これは俺の日課なんだよ。こうすることによって俺の中の何かが元気になっていくんだよ」
「でたよ、浩介の謎理論」
「なんだよ、謎理論って。」
そんな感じでどうでもいい様な会話に興じていると教室の扉が開き、一人の少女が入ってきた
「お、浩介。柊さんが来たぞ。」
「だから何だよ…。」
颯のからかいを軽くスルーしつつ俺は隣の席に座った柊さんの横顔を横目に見た
長く艶のある綺麗な黒髪に長いまつげ
シミ一つない白い肌はきめ細かく、上質な絹織物のようだ
そんなことを考えていると柊さんがこちらを見た
っと、危ない危ない
横目に見ているのがばれるところだった
柊さんがまだこっちを見ている気もするが気のせいだろう。うむ、気のせいだ
さっきからすっごい敵意を孕んだ目でこちらを見ているのもきっと気のせいだ
うん、そうに違いない
「おい、今日も柊さんがすごいお前のこと睨んでるぞ。」
俺が現実逃避を始めると颯が小声で話しかけてきた
「違う、そんなことはない。柊さんが親の仇を見るような目で見てるとかそんなことはない。」
「いや、しっかり気付いてんじゃん…。」
しまった!?誘導尋問か!?
「しかし不思議だよな。柊さんって誰に対しても笑顔で接するのになぁ。」
そうなのだ。柊さんは俺以外の人間とは仲はいいし誰も起こったところを見たことないくらい物腰も柔らかいのだ。それプラスあの容姿だから彼女は非常にモテる
「お前…実は気付かないうちに何かやらかしたんじゃねえのか?」
「何もしてないよ…。なんなら今までまともに会話したこともない。理由なんて俺が一番知りたいよ。」
本当に俺は何もしてない
…ほんとだよ?いやいや、冗談はよしてじゃなくて
え、俺なんかしたっけ……だめだ…考えれば考えるほど何もしていないのに何かしたような気がしてきた
うん。考えるのはやめよう
「お、思考放棄したか。」
「人聞き悪いな。これは戦略的撤退なんだよ。」
「物は言いようだな。」
「うっせ…。」
そんな話をしていると始業のチャイムが鳴り、担任の早川先生が入ってきた
早川先生は一言でいうと小さい
身長は驚愕の153cm、小学生とあまり変わらない背丈である
おっちょこちょいなところがあり、皆からは下の名前が珠樹なんで”珠ちゃん”と呼ばれている
クラス委員の号令で挨拶をすると珠ちゃんが話し始めた
「皆さんおはようございます!今日は特に何も言うことがないので…今日も一日元気に頑張りましょう!」
そんな珠ちゃんの緩い朝の連絡を聞きながら一時間目から数学とかやだな~と考えていると
「今日の日直は佐藤君と柊さんですね。よろしくです~。」
「は?」
え?日直?俺が?誰と?
柊さんと?冗談だろ?!
恐る恐る横を見ると…。
そこには敵意のこもったまなざしを俺に向ける柊さんがいた
もう、その視線で人殺せんじゃね?って思うくらいだ
美人の怒った顔は怖いんだなと俺は改めて思った
「よ、よろしく、柊さん。」
「………。」
無視された
周りの男子たちは俺をうらやましそうに見てくる
…変わりたいなら変わってやりたいよ
もうだれか変わって?
え、無理?そうすか
俺は切実に、今日が無事の終わることを祈った
今回はお読みいただきありがとうございます。
お見苦しい文章だとは思いますがこれから精進していきたいと考えています。
誤字・脱字、矛盾点・変なところがあればお教えいただけると嬉しいです。