2 本当はラブラブなのにお互い照れ隠しで喧嘩ばっかりしてハイハイお熱いですねごちそうさまですっていう喧嘩
学校に到着した俺は自転車置き場で矢代先輩と別れ、
まだ矢代先輩に噛みつかれた頭をさすりながら自分の教室へ向かった。
そして教室にたどり着くと、中ではクラスメイトの玉木直人が、クラスの他の男子と何やら喧々囂々(けんけんごうごう)の言い争いをしていた。
が、どうせ俺には何の関係もないし興味もないのでそれには参加せず、まっすぐに自分の席に向かう。
すると俺の隣の席では先に学校に着いていた美鈴が、クラスメイトの横溝流衣とおしゃべりをしていた。
俺は至ってさりげなく
「うぃ~っす」
と言いながらその横を通り過ぎ、自分の席に着く。
それに対して横溝流衣も
「うぃ~す」
と俺に返し、美鈴は返事をしたんだかしないんだか分からないまま、プイッとそっぽを向いてしまった。
う~む、これが矢代先輩の言う所の、恋の病というやつなのだろうか?
俺の今までの経験で言うと、これは今朝俺が美鈴にあんな事をしてしまったのを怒っている状態だと思うんだけど、今の美鈴はそうではないのだろうか?
う~む、分からん。
分からんぞ!
と、心の中でモンモンとしていると、そんな俺と美鈴の妙な感じを察したのか、
割とそういう空気に敏感な性質の横溝流衣が、
ピタッとおしゃべりをやめて美鈴と俺を交互に見やり、至ってさりげない口調で言った。
「あれ?どうしたの二人とも、喧嘩でもしたの?
あ、ちなみにここで言う喧嘩は、あんた達がいつもやってる
『本当はラブラブなのにお互い照れ隠しで喧嘩ばっかりしてハイハイお熱いですねごちそうさまです』
っていう喧嘩じゃなくて、ガチで口も聞きたくないし顔も見たくないっていうタイプの喧嘩よ?」
「おいおいそれはどういう事だよ⁉どっちタイプの喧嘩もしてねぇよ!」
「そうよ!どうして私が照れ隠しで稲橋君と喧嘩しなくちゃいけないのよ!」
横溝流衣の言葉に同時に声を上げる俺と美鈴。
その声が完全にかぶったのでお互い何を言っているのか分からなかったかも知れないが、
横溝流衣はやれやれという様子で肩をすくめ、
「はいはい、よぉく分かりましたよ」
と言い、それ以上この話題に触れる事はしなかった。
ちなみに横溝流衣は背中まである髪を明るい茶髪に染め、
耳にピアスもしているいわゆるギャル的な女子だが、
美鈴とは何故か馬が合うらしく、クラスではよく一緒にツルんでいる。
一見チャラチャラしていて軽いノリだけど、人を観察する能力に優れ、
意外と面倒見もいいので、クラスメイトの人望もあつい(見た目がアレなので、先生達のウケはよくないみたいだけど)。
その横溝流衣に、俺は話題を変える為に尋ねた。