2 ブラックボックス解放
「頭、ナデナデして欲しい・・・・・・」
「あ、頭、ナデナデ?そんなんで、いいの?」
「うん、ダメ?」
「い、いやいや、いいよ。いくらでも、ナデますよ、はい」
「えへへ、やったぁ♡」
ん?
んん?
んんん⁉
何やら思っていたものとは違う音声が聞こえてきて、俺は自分の耳を疑った。
これはもしかして、いや、もしかしなくても、
ライブの後の、スタッフルームでのアレ(・・)の映像じゃないのか?
それが証拠に美鈴の顔は、真っ赤になるのを通り越し、もはや青ざめている。
そんな美鈴に構わず、周りの女性陣は目をランランと輝かせながらその映像に見入っている。
「こ、これ、美鈴さん、なんですか?な、何だか、いつもの感じと、全然違いますね・・・・・・」
と、目を丸くしながら由乃さんは言った。
「あらあら、美鈴さんは羞恥心を取り払うと、こんなにも甘えん坊になっちゃうんですね」
と、にやにやしながら春香さんは言った。
「改めて見てみると、ホンマに別人やなぁ。でもこれが、みっちゃんのホンマの姿なんやで?」
と、美鈴の肩をポンと叩きながら矢代先輩は言った。
「照れも恥じらいもなく聖吾君に甘える美鈴ちゃん、いいわぁ♡見ているだけで鼻血が出そうよ」
と、既に鼻血が出ている沙穂さん。
「う、う、嘘だ。こんな、こんなの、私じゃ・・・・・・ないっ!」
と、真っ青になりながら叫ぶ美鈴。
もはや今すぐにでも失神しそうな勢いだ。
なので俺は慌てて美鈴にフォローを入れる。
「そ、そうだよな!こんなの美鈴じゃないよな!
昨日のお前はライブで舞い上がって、ちょっとおかしくなってたんだよ!
アレは美鈴の本当の姿なんかじゃなくて、きっと悪魔か何かにとりつかれていただけなんだよ!」
しかしそんな俺のフォローもむなしく、美鈴にとどめを刺すように、
沙穂さんのスマホから次のセリフが聞こえて来た。
「はぁ~♡幸せ♡美鈴、聖吾君に頭をナデナデしてもらってる時が、一番幸せだよぉ♡」
映像の中の美鈴は、世界で一番幸せな顔をしているが、
その様子を目の当たりにしている美鈴は、世界で一番不幸な顔をしていた。
「い、い、いやぁあああああああっ!」
ホラー映画の断末魔のような叫び声が、沢凪荘に響き渡る。
今日も、沢凪荘は賑やかです。
沢凪せ女り~た5 完




