3 あっさりキレた
「さっきから聞いていたら、随分と一方的な言い草ではありませんか?
確かにあなたは由乃さんの母親かもしれませんが、あの子の人生はあの子のものです!
それを散々踏みにじった挙句、更にそれを利用しようとするなんて、
あなたはそれでも由乃さんの母親なんですか⁉」
ぐはぁ!
美鈴のヤツ、思いっきり火に油を注いじゃったよ!
すると案の定由乃さんの母親は更に逆上し、悲鳴にも近い叫び声を上げた。
「何なのよあなたは⁉私は客よ⁉そんな失礼な物言いをされる筋合いはないわ!」
ほらやっぱりこうなったよ。
一体どうするんだよこれ?
と、途方に暮れていると、由乃さんの母親はガバッと立ち上がり、テーブルの上に千円札を乱暴に置いた。
そしてそれ以上は何も言わず、ズカズカと店から出て行った。
なので俺も慌てて店から出て、由乃さんの母親を呼びとめる。
「ちょ、ちょっと待ってください!ウチのウエイトレスが失礼な事を言ってすみませんでした!」
すると由乃さんの母親はその場で立ち止まって振り返り、怖い顔で俺を睨みつけながらこう返す。
「フン!いいわよ!そうやって私を悪者にしていればいいんだわ!
だけど由乃は返してもらいますからね!」
「そ、その事なんですけど、実は今度の日曜日の夜、この店で由乃さんがライブをするんです!
お母様もよかったら、そのライブに来ていただけませんか?
由乃さんもお母様に、伝えたい事があるみたいですし」
俺はそう言ったが由乃さんの母親は
「そんなもの、興味がないわ!」
と言い放ち、そのままスタスタと歩き去ってしまった。
店に戻ると、美鈴がスタッフルームで本坂先輩にお叱りを受けていた。
何とかライブ会場の手配はできたけど、これで本当に大丈夫なんだろうか?
俺の不安は、ますます募るばかりだった。




