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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た5  作者: 椎家 友妻
第四話 春香の願いと、母親の狙い 
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1 彼女が綾音?

 その日の夜、俺はバイト先のファミリーレストラン『ニューハーフ』で皿洗いをしながら、

今日の昼休みの出来事を考えていた。

 あの時由乃さんはハッキリと言った。

 デビュー当時の(さい)(さき)綾音(あやね)は双子の姉で、最近の彩咲綾音は由乃さん自身だったと。

 その後昼休み終了のチャイムが鳴って、由乃さんはその場から逃げるように走り去り、

結局そのまま授業には顔を出さなかった。

担任の鏡先生には、由乃さんは体調を崩して早退したと伝えておいたので、まあ問題はないだろう。

美鈴の方は、由乃さんが帰ったのが自分のせいだと思い込んでいるので、

結構落ち込んでいるみたいだけど、沢凪荘に帰って話をすれば、また仲直りできるだろう。

 それより今は、由乃さんだ。

由乃さんの正体は、実は彩咲綾音だった?

しかもデビュー当時は由乃さんの双子のお姉さんが彩咲綾音をしていて、

ある時期を境に由乃さんが入れ替わって彩咲綾音を演じていたのか?

まあそれなら、美鈴や玉木が言うように、デビュー当時と最近の彩咲綾音が、

別人のように変わったというのもうなずける。

いくら双子の姉妹で見た目はそっくりでも、中身がまるっきり違う事はよくある話だ。

しかも春香さんの話では、由乃さんのお姉さんはどんな分野でも人並以上の能力を発揮する天才タイプ。

それに対して由乃さんは、何をやってもなかなか身に付かない超不器用タイプ。

そんな超不器用タイプの由乃さんが、

天才タイプの双子のお姉さんと同じように彩咲綾音を演じるというのは、相当難しいものがあるだろう。

ファンの目からすれば、事務所の思惑(おもわく)でガラッと路線変更をしたように見られても仕方がないのかもしれない。

 でも、例え由乃さんの言った事が事実だとしても、

実際問題、あの超引っ込み思案で極度の人見知りである由乃さんが、

ジル・ジェラードのパーティーで歌を披露(ひろう)し、

俺とダンスをしたあの彩咲綾音と同一人物だとは到底(とうてい)信じられない。

見た目が全く違うのはもちろんだけど、

あの時俺が会った彩咲綾音は大勢の人前でも全くビビる事もなく歌を歌い、

押し寄せるファン達と笑顔で交流し、引っ込み思案で人見知りな所など微塵(みじん)も感じさせなかった。

見た目はメイクや衣装でどうにでもできるかもしれないけど、

性格までもそこまで変えられるものだろうか?

ステージに上がるとスイッチが入って、全くの別人になってしまうとか?

 う~む、分からん。

とりあえず、この事は誰にも言わない方がいいだろうな。

本当かどうかも定かじゃないし、その辺の詳しい事は、春香さんが知っているだろうからな。

彩咲綾音の突然のアイドル活動休止宣言と、

その彩咲綾音であるかもしれない由乃さんが沢凪荘にやって来た事には、何らかの理由があるんだろう。

そしてその事に、春香さんが深く関わっている。

まあ俺はそもそも部外者だし、そこに首を突っ込まなきゃならない理由は何もない。

ここは下手に関わらず、そっと様子を見守る事にしよう。



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