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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た5  作者: 椎家 友妻
第三話 彼女の事情と、彼女の素性
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5 転校デビュー、大失敗

 「と、と、東京から来ました、や、や、や、山本、よ、由乃、で、ですっ。

よ、よ、よろしぐ、おねげぇ、じばすぶっ⁉」

 その日の朝礼で、俺達の教室で鏡先生に紹介され、

教壇に立った山本由乃さんは、文字通りカチンコチンに緊張し、

東京から来たとは思えないナマリで自己紹介をした。

前の学校ではほぼ不登校の状態だったらしいので、今は頭が真っ白になるくらい緊張しているんだろう。

美鈴は無理矢理彼女をここに連れて来たけど、果たしてこれでよかったのかどうか。

今の由乃さんを見ていると、本気で不安になってきた。

 ちなみにちょっと前にウチの姉ちゃんが、

特別短期留学生としてミナ高にやって来た時もこのクラスにやって来て、

今回も転校生の由乃さんがこのクラスにやって来た訳だが、

これには一応理由があって、鏡先生いわく、

このクラスは他のクラスよりも生徒数が少ないので、転校生や留学生があった場合、

優先的にこのクラスに回って来るんだそうだ。

まあ、その辺は学校の事情なので、そうなんだと納得するしかないんだけど。

 さて、そんな調子で今日から俺や美鈴と同じクラスの一員になった山本由乃さんだが、

極度の引っ込み思案で人見知りの彼女が、最初からクラスの皆と打ち解けられるはずもなく、

横溝流(よこみぞる)()を始めとするクラスの女子達に囲まれ、

 「ねぇねぇ、東京では今、どんなファッションが流行ってるの?」とか

 「向こうでは彼氏は居たの?」とか

 「東京に住んでたら、芸能人やアイドルに沢山会えるんじゃない?」

 とかの質問攻めにあっても、それにうまく答えられず、

由乃さんはまるで塩をかけられたなめくじのように(ちぢ)こまり、

本当に溶けてなくなってしまうんじゃないかと思えるくらいに小さくなってしまった。

そんな由乃さんに美鈴が助け舟を出し、周りの女子達との仲を上手くとりなしていたが、

今までずっと自分の部屋に引きこもっていた彼女が全く知らない土地に引っ越してきて、

知らない学校で知らない人間ばかりの中で生活していくのは、

彼女にとっては富士山よりも高いハードルに違いない。

 どうして春香さんは、そんな由乃さんをこんな田舎町の学校に転校させたのか?

そしてそもそも、春香さんと由乃さんは一体どういう関係なのか?

その辺が俺にはどうにも引っ掛かるのだった。

まあ、そんな所に首を突っ込んで、俺がどうこうできる訳でもないんだけど。

 それにしてもこの調子だと、由乃さんはこの学校でも孤立してしまうんじゃないだろうか?

お人好しで面倒見のいい美鈴が居るとはいえ、

それだけで由乃さんの極度の人見知りが治るとも思えないし。

きっと教室で大声で叫ぶなんて事は絶対にないだろう。

と、この時の俺はそう思っていた。

 が、そんな俺の思いこみは、次の休み時間で吹き飛ぶ事になった。



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