2 確かな成長
むにゅっ。
俺は、目を(・)覚ました(・・・・)。
そう、今までのあれは、当物語の主人公である俺、稲橋聖吾の夢だったのだ。
ここは俺が住む、沢凪荘という木造平屋建ての、四畳半の自分の部屋である。
それにしても、我ながら毎度毎度色んな夢を見るけど、今回はやけにポエムっぽい夢だったなぁ。
俺の中にも詩人としての才能が芽生えたという事だろうか?
それにしてもあの妖精は綺麗だったなぁ。
もう少しで触れる事ができたのに。
いや、ちょっとだけ触れる事はできたんだっけ?
むにゅっていう手ごたえがあったもんな。
しかもやけにリアルな感触だった。
おや?しかし待てよ?
あれが夢の中の出来事なら、今現在、俺の右手にあるこのむにゅっとした柔らかい感触は一体何なんだ?
俺はまだ夢の中に居るのか?
そう思いながら、俺は自分の右手に顔を向ける。
すると、何と、
俺の右手が、布団の傍らに座る美鈴の乳房にむにゅっとタッチしていた。
「のわぉわぁああああっ⁉」
絶叫。
ななな何で俺は朝っぱらから美鈴のお乳に触ってるんだ⁉
モーニングサービスか⁉
そんな訳ないだろ!
という事はこれは夢か⁉
現か⁉
幻か⁉
目の前の出来事を受け入れる事が出来ず、ひたすらパニックになる俺。
しかしそんな中、ハッキリと言える事がひとつだけあった。
美鈴は、俺と初めて出会った時よりもお乳が育っていた。
んなこたぁどうでもいい(事はない事はないこたぁない)!
確か俺が初めて美鈴と出会った時もこんな事があった(第一巻参照)。
そしてその時は美鈴の力強いストレートパンチが、俺の鼻っ柱に炸裂した。
その記憶が瞬時によみがえった俺は反射的に美鈴のお乳から右手を放し、
残像が見えるほどのスピードで布団から飛び起き、
寸分の無駄もない動きで美鈴の前で土下座をして叫んだ。
「す、す、すみませんでしたぁっ!」
が、そんな事で許されるはずがないという事は俺とて十分に承知している。
この後強烈なストレートパンチかビンタを食らい、
美鈴はトライアングルを力一杯叩き鳴らしたような声でこう叫ぶだろう。
『こ、こ、このバカ!スケベ!変態!朝っぱらから何すんのよ⁉』
はい、そうですね。
寝ぼけていたとはいえ、それはやっちゃあいけないですよね。
ここは甘んじて美鈴さんの手痛い罰を受けましょう。
俺はそう腹をくくり、畳がはげるほどに自分の額を床にこすりつけた。