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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た5  作者: 椎家 友妻
第一話 微妙な二人と、衝撃の事実
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6 おかしな美鈴

 さて、朝の教室ではそんな事があったのだが、その後俺と美鈴はどんな感じかと言うと、


 何だか、ギクシャクしていた。


 例えば数学の時間。

俺はうっかり教科書を忘れてしまい、隣の美鈴に見せてもらおうと、小声で話しかけた。

 「おい、美鈴」

 「・・・・・・」

 しかし美鈴は何やらボーっとしていて俺の声に気付かない。

なので俺はもう一度声をかける。

 「おい、美鈴よ」

 すると美鈴はビクッとなって俺の方に振り向き、小声でこう返す。

 「え?あ、私、美鈴?」

 「お前以外に誰が美鈴だよ?何をボーっとしてるんだよ?」

 「べ、別に、ボーっとしてる訳じゃないけど、な、何か用?」

 「いやぁ、実はうっかり教科書を忘れちまったんだよ。悪いんだけど、見せてくれねぇかな?」

 俺がそう言うと、美鈴は閉じた教科書を両手で持ち、特にふざけた様子もなく言った。

 「はい、これが数学の教科書よ。どう?見えた?」

 そして教科書を自分の前に置き、またボーっと明後日の方向を眺める。

このままだと美鈴は、俺に教科書を見せてくれそうにないので、俺は改めて美鈴に声をかけた。

 「いや、あの、美鈴さん?俺が言ってるのはそういう事じゃなくてね?

開いた教科書を見せてくれって言ってんの。こう、机をくっつけてね?」

 そう言って俺の机を美鈴の机にくっつけようとすると、美鈴はいきなり立ち上がって叫び声を上げた。

 「なっ⁉私にくっつきたいってどういう事よ⁉ここここんな時に何言ってんの⁉」

 しかしこの場合、何言ってんの⁉

と言いたいのは俺の方なので、俺は負けじと声を荒げた。

 「それは俺のセリフだよ!

俺はただ教科書を見せてくれって言ってるだけなのに何でそういう話になるんだよ⁉」

 そして俺はハッと我に返り、辺りを見回すと、クラス中の視線が俺と美鈴に注がれているのに気がついた。

皆突然の出来事に目を丸くしている。

そんな中数学教師の(すが)(かわ)珠江(たまえ)先生(女性。二十四歳独身)は、

俺と美鈴を交互に見やり、どちらかというと気弱な性格の彼女は、

俺と美鈴のどちらに非があるかではなく、

どちらに罰を与えればこの場を丸く治める事が出来るかを瞬時に判断し(たと思われる)、咄嗟(とっさ)にこう叫んだ。

 「稲橋君!廊下に立ってなさい!」

 まったく、人生とはちょいちょい理不尽な事があるもんだ。

 で、その後の休み時間で美鈴は俺にワビを入れるどころか、

ますますよそよそしい態度で距離を置くようになった。

俺から声をかけようとしてもプイッとソッポを向くし、近付こうとするとスイッと離れて行く。

 何だよ、何なんだよあの冷たい態度は⁉

メッチャ分かりやすく()けられてるじゃねぇか!

ついこの前までは何かにつけて文句を言われたりカンシャクを起こされたりしてたけど、避けられるという事はなかった。

つまりこれって、本格的に俺は美鈴に嫌われちまったって事じゃないのか?

俺が前に美鈴にあんな事を言ったから(別に美鈴に向かって言った訳じゃないんだけど)、本気で気持ち悪がられてるんじゃないだろうか?

沙穂さんや矢代先輩の言う事は実は全くの正反対で、

美鈴は俺に心が(かたむ)きかけているどころか、

むしろどんどん離れていってるんじゃないのか?

う~む・・・・・・。

 ありえる。

 いや、ダメだ。

こういう事を一人で考えていると、どんどんマイナスな方向にばかり考えがいっちまう。

こういう時は誰かに相談するのがいいよな。

かといって誰かれ構わず相談するのはかえって状況をややこしくするからダメだ。

玉木、は論外で、

横溝流衣、は美鈴にうっかり(もしくはワザと)(しゃべ)りそうで怖いし、

本坂(もとさか)先輩、は、この手の話にウトそうだし、

尾田(おだ)先輩、は、やめとこう・・・・・・。

 こうなると、若干苦手ではあるけど、あの(・・)()に相談するしかないか・・・・・・。



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