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黒羽と薄紅  作者: 翠嵐
【一章】薄紅の燐光
1/2

始まりの日

大和国首都ギフテッド対策室は重い空気で満たされていた。

その原因は一週間前に捕縛、保護されたある人物の処遇をめぐっての会議が行われている為だ。

その人物は、ギフテッドによる大規模な犯罪組織の構成員であり、強力なギフトを用いて大和国の要人を20人程暗殺している、特A級犯罪者であり本人に暗殺を行っていたという意識がないため、対策室では対応を決めかねていた。


「それで、薄紅の対応はどうするんだ?あの少年は殺人に対して忌避感が無いどころか生活する上で必要だからという理由で大和の要人述べ21人が殺害されているのだぞ、ボディガードも含めたら100人以上は奴に殺されている、たった1人の少年にだ」


「そもそも、薄紅のギフトはまだ研究員たちが調べている最中だろう?」


「このままだと心神喪失及び責任能力の無さを理由に沙汰が降りるんじゃないか?」


「室長としてはどうお考えで?」


対策室の面々は様々な事を話しながらも、「薄紅」に対しての対応を決めかねている。その中で1人の対策室のメンバーが長い机の1番上座にあたる席に就いている白髪混じりの50歳前後の男に視線を向け、そう言った。


「そうさなぁ、あいつ強いしなぁ、確か戦闘スコアs2だろう?しかもギフトを使わずでだ。研究員曰く使い勝手の悪いギフトとは判明しているらしいが、恐ろしいなぁ、このままだとあいつに対してうちらが出来ることは監視と、拘束具を付けて様子見しかできんよな」


その男は、ゆったりとした口調で薄紅に対して、対策室で出来ることは無いと暗に告げた。


「しかし!それではあまりにも軽いのではありませんか?」


対策室メンバーの一人が声を荒らげながら室長に対して言った。


「と、言われてもな、あいつ自身人殺しが悪いものだと認識していないし、そう育てられている。俺らとしてはあんな奴を育てる余裕を作らせたのが悪いとしか、な」


室長は苦い顔で犯罪組織にああいう存在を作らせた怠慢に自分達の責任があると言った。


「しかし、s2クラスを抑え込める奴がこの中に何人いる?居ても2、3人だろう?監視も難しいな、それに、あいつの戦闘能力は隠密系統特化だしな…」


「五華族のどこかに監視と保護を頼むのはどうでしょうか?五華族ならばs2相当のギフテッドであればどの家も抑え込めるのでは?」


メンバーの1人がそう提案した。五華族とは大和国の建国から存在する歴史のある一族達であり、五華族の人間全員が強力なギフトを所有している事で有名である。


「霞家はs2を抑え込めるか怪しいだろう?白百合のとこは俺らと折り合い悪いから多分受けてくれないだろうし、菫は可能性としてはありだが俺はあの家が好かん。となると、牡丹と櫻になるが、あの家が素直に俺らの申し出を受けるとも思わん。まぁ八方塞がりってやつだな」


「室長、、そんなに軽く諦めないでくださいよ」


室長は五華族の中の候補を探すが、どうしようもないというように天を仰いだ。


「面白そうな話をしてるじゃない?私も混ぜてくれるかしら?」


すると会議室の入口から顔を出したのは、黒いドレスを身にまとった、この世のものとは思えない美貌の女性であった。


「げっ、黒羽の、なにしにきやがった」


「あら、私が混ざるといけない話しかしら?条件次第では薄紅を預かろうかと思ったのだけれど、」


室長に黒羽と呼ばれた女性は優雅な口調でそう告げた


「それは、、ありがたいが、黒羽のお前あいつ悪用しないだろうな?戦闘能力s2だぞ?しかもギフトを使わずに、悪用されたらたまったもんじゃない」


室長は苦い顔をしながらも、少し期待を含ませ黒羽に言葉をかえした。


「建国より大和を裏から守り、危険を排除してきた黒羽に対して大層な事を言うのね?私は薄紅が気になるだけよ、他意はないわ」


そう黒羽という一族は裏から大和を支えてきた、諜報、暗殺に特化した言うならば裏の華族の一つである。


「それに薄紅の戦闘能力は偉く黒羽にお誂え向きじゃない?あれだけの力を護国に使えるとあらば、帝も承認してくれるはずよ、違うかしら?」


黒羽はまさに名案とばかりに少し頬を緩ませながらまるで少女のように朗らかに告げる


「それもそうだが、、まぁいい、上に確認を取る。沙汰は追って伝える薄紅に対する処罰はもちろん、黒羽の保護に関してもな」


室長は黒羽に丸投げすることに決めたようで、少し疲れた顔でデバイスを開き書類の作成を始めた。


「まぁ、それは良かったわ、それと私は薄紅を見てみたいのだけれど、仮にも息子になるわけだし。報告書しか見ていないのよね私」


「好きにしろ、s-5885の特殊独房に拘束具付きでぶち込んでるよ」


「ご丁寧にどうも、それでは結果の報告を楽しみにしているわ」


黒羽が会議室から出ていくと室長は大きなため息を付いた。


「はぁ、、女狐が…」

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