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「竹之内くん、今日は湿布貼ってないんだね」


朝、HRの前に教室で話していると真沙美ちゃんが


竹之内くんの方に視線を向けた。




「あー、ホントだ。でもまだ青痣が残ってるね」


そして香ちゃんも竹之内くんの方に視線を向けた。


私も竹之内くんの方に顔を向けると


確かに昨日まで湿布をしていた左手には何もなく、


手の甲に薄っすらと痣が残っていた。




(もう大丈夫なのかな?)




全治3日と聞いているけれど、それでもまだ少し心配だった。




私が竹之内くんをじっと見つめていると視線を感じたのか、


竹之内くんも私の方に視線を向け、思わず目が合った。


私はすぐに視線を外した。




竹之内くんとは最近、よく目が合う。


私が竹之内くんの姿を目で追っていると必ずと言っていいほど


竹之内くんが私をちらりと見る。


そして、お互い慌てて目を逸らす――。










――翌日。


今年最後の登校、終業式のこの日は私と竹之内くんが日直だった。




「左手、もう大丈夫?」


左手の痣はもうほとんど目立たなくなっていたけれど気になっていた私は


終業式が終わったHRの後、一緒に黒板を消している時に聞いてみた。




「……えっ?」


竹之内くんは何か考え事をしていたのか、反応するのに間があった。




「手……もう大丈夫かなー? って……」




「あ、ごめん。うん、もう全然平気」


竹之内くんはそう言うと左手を私に開いたり握ったりして見せた。




(よかった……)






「あのさ……」


そして、再び二人で黒板を消していると竹之内くんが


何か思い切ったように口を開いた。




「イブの夜、何か予定とかってある?」


私が視線を向けると竹ノ内くんは黒板を消しながら言った。




「ううん」




「じゃあ……24日、夜10時に『空中庭園』で待ってて」




「え?」




竹之内くんはそれだけ言うと黒板を消し終わって自分の席に戻った。




“『空中庭園』で待ってて”




それは一体どういう事なのか?


私はその意味がよくわからずにいた。




『空中庭園』とは、あのゲームの中で私とオーリーがイベントの後や、


二人でゆっくり話したい時によく一緒に行く場所だ。


竹之内くんがライアさんなら……いや、でも、


ライアさんとは『空中庭園』に行った事なんてないし……。






「た、竹之内くん」


私はどういう事なのか確かめようと自分の席で日直日誌を


書き始めた竹之内くんに声を掛けた。




「さっきのって……」




「ん?」


竹之内くんは日直日誌を書きながら少しだけ顔をあげた。




「あ、の……」


竹之内くんの前の席には大山くんもいた。


どうやら待っているみたいだ。




(いきなり、「ライアさんなの?」なんて言ったら変だと思われるよね?)




「え、と……」




「成瀬さん、黒板の日直の名前今のうちに書き換えなよ。


 慧、もうちょっとで日誌書き終わるから」


私が何て言おうか迷っていると大山くんに言われた。




「あ、うん……じゃあ、竹之内くんのも書き換えておくね」






日直の名前を書き換え終わるとちょうど竹之内くんも日誌を書き終わり、


パタンと日誌を閉じた後、私に視線を向けて「日誌は俺が先生に出しておくから」と、


席を立つと大山くんと一緒に帰って行った。




「あ……」


結局、聞けなかった――。

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