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「む、あの二人……どこにいるんだ?」
夜、ゲームにログインしてギルドメンバー一覧を開くと、
レイアとマースさんが同じ場所にいてパーティを組んでいた。
ギルドメンバーの一覧には、今誰がログインしているかや
レベル、種族、職業はもちろん、現在どこにいるのか、
パーティを組んでいるのかなんかもわかる。
そして、レイアとマースさんは今二人でパーティを組み、
俺の知らない場所にいた。
[Guild] Orli >> レイアとマースさんがいる場所ってどこ?
[Guild] Reia >> 空中庭園っていう場所だよ(´∀`)
[Guild] Orli >> へー 俺も行っていい?^^
[Guild] Mars >> オーリーがここに来るにはもっとレベルあげないと無理だと思うよ
[Guild] Orli >> その辺のモンスターて そんなに強いの?
[Guild] Mars >> ソロなら60くらいないとキツいかな
[Guild] Orli >> (゜□゜;
[Guild] Reia >> 迎えに行こうか?(´∀`)
[Guild] Mars >> 来るの?
(行っちゃ悪いのかよ……)
[耳打ち] Orli >> 俺、行かないほうがいいっぽい?
もしかして、“おジャマ”なのかな?
そう思ってレイアにこっそり話しかけてみた。
[耳打ち] Reia >> そんな事ないよ(´∀`)
(なんだ、別に二人で特別何かを話してるワケじゃないんだ)
[耳打ち] Orli >> じゃあ、行く^^
[Guild] Reia >> オーリー ユナ神殿わかる?
[Guild] Orli >> うん
[Guild] Reia >> じゃあ そこの入口で待ってるから(´∀`)
[Guild] Orli >> うん^^
マースさんは何も言わなかったけど、とりあえず俺は『ユナ神殿』に向かった。
『ユナ神殿』に着くと、入口にレイアとマースさんが立っていた。
俺はエモーションで手を振りながら近づいた。
すると、すぐ傍にいた神官の亡霊みたいなアンデッドのモンスターにからまれた。
「うほっ」
ここのモンスターもどうやら俺がソロで倒すには無理そうだ。
モンスターネームが全て赤になっている。
[Guild] Reia >> オーリー パーティ組もう(´∀`)
レイアは俺をパーティーに誘うと、すぐに回復魔法でHPを回復してくれた。
マースさんは一足遅れてモンスターに殴りかかった。
(なんか……どー見ても「ちっ、仕方がねぇなー」て、感じなんだよなー。
まぁ、からまれた俺が悪いんだけど)
マースさんはさすがに俺よりもはるかにレベルが高いだけあって
次々とモンスターをなんなく倒していった。
そして、さらに言うとレイアよりもレベルが高い。
(あ〜ぁ……、俺カッコ悪ぃー)
ホントなら戦士の俺は魔道士のレイアの盾になって守る立場なのに……
今の俺はレイアにも、マースさんにも守られている。
「くっそー、手っ取り早くレベルあがんねぇかなー」
レベルをもっともっと上げて、早くレイアを守れるようになりたい。
早くレイアといろんな場所に行きたい。
ひたすらモンスターを叩きながら、俺はそんな事を考えていた。
そして、『空中庭園』に着くまで、俺は何度もモンスターにからまれた。
その度にレイアを守っているマースさんに腹が立ち、
そのマースさんに守られている自分に腹が立ち……
そんなだから、もちろん『空中庭園』に着いてからのことなんて
憶えているはずもなく。
やっぱり来なきゃよかったかな……とさえ、思った。
――次の日。
レイアとマースさんはゲームにはログインして来なかった。
それは二人でチャットルームにいたから。
このゲームにはユーザー同士がゲームに入らなくても
チャットだけする事が出来る“チャットルーム”がある。
例えば、ゲームのメンテナンスの合い間とか、
特定の人だけでゆっくり話がしたい時とか。
(二人で何話してるのかな?)
レイアとマースさんがいるチャットルームには“鍵”が掛かっていた。
それは誰にも邪魔されたくないと言う証拠だ。
(やっぱり俺、昨日二人の邪魔しちゃったのかな?)
レイアはともかくきっとマースさんにとって俺は邪魔だったんだろう。
じゃなきゃ、こんなあからさまに次の日に二人だけで
チャットルームに行くはずがない。
「ちくしょー」
モニターの前でそう言ってみたものの、今の俺は何も出来ない。
(結局、レベル上げを頑張るしかないのか……)
もっとレベルを上げて、レイアを守ってやれるようになったら
俺もどこかゆっくり出来るところにレイアを誘おう。