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「あれ?一人足りない。」


午前中の最後の種目、『百足競争』に出る俺と大山が


入場ゲートの横で待機していると体育委員の大里が


人数を数えながら言った。


そして、誰がどの種目に参加するか書かれているリストを見ながら、


「あー、まだ杉田さんが来てないのかー。


 何やってんのかなぁー?」


と、眉間に皺を寄せた。




するとそこへ成瀬さんが来た。


「大里くん。」




「あー、成瀬さん、ちょうどいいトコに来た。


 杉田さん知らない?次の百足競争に出るはずなんだけど


 まだ来てなくて。」


大里がそう言うと成瀬さんは


「その事なんだけどー・・・実は真沙美ちゃん、


 怪我しちゃって、百足競争に出るの無理そうなの。」


と言った。




「えーっ、マジで?さっきのクラス対抗リレー?」




「うん・・・。」




杉田さんは二つ前の『クラス対抗リレー』にも出ていた。


その時、他のクラスの子が転んだのに巻き込まれて


杉田さんも一緒に転んだ。


どうやらその時に足を痛めたらしい。




「うーん・・・どうしよう・・・。


 あ、そうだっ。」


大里はそういうと何か閃いた様に目の前の成瀬さんに


にやりとしてみせた。




「成瀬さん、代わりに出ない?」


「え。」


「てゆーか、出て?」


「で、でも・・・」


「午前中最後の種目だし。」




意味わかんねーよ。




「・・・え、と・・・」


成瀬さんは困ったように言葉に詰まった。




「私、運動神経良くないから、きっと足を引っ張っちゃうし・・・。」




「大丈夫、大丈夫。」


大里はそう言いながらにっこり笑った。


この際、代わりに出てくれるなら誰でもいいのか


完全に上手く丸め込もうとしている。


そして、ちょうどその時、


“次は午前中最後の種目、『百足競争』です。”という、


アナウンスが響いた。




「じゃ、成瀬さん、よろしくぅっ!」


大里はそう言うと無理矢理、成瀬さんを『百足競争』に参加する


俺達と一緒の列に押し遣り、「頑張って〜♪」と手を振った。




入場行進が始まり、成瀬さんは逃げるに逃げられず


結局、そのまま『百足競争』に出るハメになった。




「最初は“せーの”の合図で右足からね。


 後、成瀬さんは杉田さんの代わりだからココね。」


チームリーダーの青山はそう言うと大山と俺の間に


成瀬さんを並ばせた。




「う、うん・・・。」


すっかり逃亡意欲を失くした成瀬さんは大人しく


大山の後ろに並んだ。




俺達がスタートする順番になり、リーダーの青山の後ろに


もう一人の女子・瀬川さん、その後ろに大山、


成瀬さん、俺の順に並んだ。


成瀬さんは恥ずかしそうに大山の肩に手を置いた。


そして、俺も成瀬さんの肩に手を置くと


その肩はとても細くて小さかった。




ちっちぇーなぁー。




背が低い成瀬さんは何もかもが小さいのか


練習の時に触れた杉田さんの肩幅よりも


さらに小さかった。






間もなくして、スタートピストルが鳴り響き、


俺達の百足チームはスタートした。


出だしは好調。


飛び入り参加の成瀬さんも一生懸命、


みんなと歩調を合わせている。




だけど、隣の“ムカデ”が一気に追い上げてきた。




お?


ヤバいんじゃねぇの?




そう思っていると先頭の青山も焦ったのかいきなりスピードアップした。


しかし、号令も何も無しにスピードアップしたもんだから後ろは大変だ。


瀬川さん以降、バランスを崩し、青山も後ろに引っ張られるように体勢を崩した。


まさに“親亀こけたら、子亀もこけた”状態。




「おゎっ!」


「きゃんっ!」


「わぁーっ!?」


「きゃっ!?」


「うわっ!?」


後はバッタバッタと五人仲良く崩れていった。




焦り捲くっている青山はまだみんなの態勢が整っていないのに


再び足を進めようと右足を前に出し、そしてまた全員がこけた。




これ・・・『百足競争』じゃなくて『七転び八起き』じゃないのか?




「青山落ち着けっ。」


「待って〜。」


「まだ後ろは立ち上がってないぞー。」


そんな事を言いながら、結局、俺達はその後さらに何度も転んでビリ。


みんな両膝や両腕に擦り傷を作り、五人で救急テントに


絆創膏を貰いに行った。

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