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第四十四話 マルチ商法と自己啓発セミナーと宗教と

「おい、あのマーク見たことあるぞ!」


 メッセージの主は吉井だった。


「えっ、本当か!?どこで?」

「同期の山崎って覚えてるか?お前と同じでドラッグマニアだった。」

「勿論覚えてるぜ。あいつの部屋、凄かったからなあ。」


 山崎というのは吉井の幼馴染であると共に、二人の大学時代の同期で、済と同じくドラッグマニアだった。済と違うのは、済が知識だけで満足するタイプだったのに対し、山崎は実体験を求めるタイプだったことだ。


 済はたまに山崎のアパートに潜り込んでいたが、いつもどこから来たかよく分からない人間がたむろしており、山崎の謎のコミュ力が見て取れた。済はそこで謎の人間達と麻雀をしながらドラッグ談義や東南アジアでの怪しいバックパック体験を話して過ごし、まるで魔窟のような場所だと思っていた。山崎はよく東南アジアに旅行をしており、自分から言うことはなかったが間違いなく「やっていた」と思う。


 そんな山崎だったが成績はトップクラスで、優秀だが頭のネジが外れているタイプだった。確か「俺は何かを破壊することに力を使いたい」などと言って農薬メーカーに就職したはずだ。


「そうそう、それで学生時代、あいつと大久保に焼き肉食べに行ったことがあるんだよ。そしたら、変なマークの付いた服着た奴が新大久保の駅前で謎のカウンセリングのチラシを配っててよ。」

「おいおい、それってまさか……。」

「その日は昼間からたらふく飲んでたもんだから、酔った勢いで行ってみたら、えらく立派なビルでさ。ウソ発見器みたいなやつに付いた金属の棒を握らされて、どうでもいい質問をされたよ。終わったあとに『謎の時間だったな』って山崎に話したら、あいつはちょっとスッキリしたような顔だったな。そこの団体というのが……」

「サイエンス・ムーブメントってわけか。」

「その通り。でもこれには続きがある。就職してからあいつも俺も大阪勤務になったから、たまに会ってたんだよ。そしたら、二年目の秋頃だったかな。二人でしこたま飲んだ時に、入信してることを打ち明けられた。めちゃめちゃ金取られてるわけじゃないって言ってたから、反対もしなかったけどな。その時は確かに、サイエンス・ムーブメントって言ってたんだが……三年前かな、久しぶりに会った時にまだ入ってるのか聞いたら、独立した教祖に付いていくことにしたって言うんだよ。その時に奴が着けてたのが……あのマークのバッジだった。何でもそこじゃ理系が優遇されるらしくて、出家したら給料も結構貰えるらしい。あいつの職場キツそうだったからな。もしかしたら出家してるかもしれん。」


 同期の山崎が、科学の道に入信していた……。しかも理系が優遇される仕組みになっている。嫌な予感がした。


「マジか!出家してるのに金が貰えるというのも宗教的にはおかしな感じがするが……まあ清氷富美子みたいな感じか。あのマークなんだが、杉永さんて知り合いから調べるようにお願いされたんだよ。彼女がどこで見たと思う?MASKのビル内だ。」

「おいおい、それってまさか!」

「ちょっと三人で話す必要がありそうだな。今時間大丈夫か?」


 済は早速、Skype会議を設定した。


「こちらは大学同期の吉井くん。化学メーカーに勤めてて今は大阪勤務。サークルに潜入してもらってます。それからこっちは杉永さん。学生時代一緒にデモやってて、今はマスコミの記者さん。」

「吉井です。よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします!」


 自己紹介と学生時代の学部の話もそこそこに本題に入る。陽子がMASKの地下で撮影した動画ファイルを送り、吉井に確認する。山崎の件については陽子に説明済みだ。


「ヤマサキさんが着けてたのはこれで間違いないですか?」

「これですね、間違いない。しかし、もしもMASKの地下にこれがあったとすると……。」

「MASKと『科学の道』が繋がっている?しかもMASKはサークルとも関係してるから、サークル→MASK→科学の道っていう構図が見えてくる。この間に一体何があるのかな?」

「宗教団体と自己啓発セミナーが関係してるのは珍しくない。『定説です。』のライフスペースは自己啓発セミナー業者が宗教団体になってた例だし、他にも『かぼす』っていうフォークデュオの南山の母親がやってる宗教団体は、幹部が自己啓発セミナー会社を経営してるので有名だった。そして、自己啓発セミナーは元々マルチ商法のセミナーだったわけだから、三者は近いところにある。それでも、三つが一体になったケースは聞いたことないけど。それより、山崎って今どうしてるんだ?」

「それが最近、全然連絡取ってないんだよな。連絡してみるか。」


 吉井がそう言った時、済が開いていたTwitterの画面に不穏なツイートが流れ込んできた。


「おい、ちょっとテレビ点けろテレビ!日テレ!」

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