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マルチ商法女と戦っていたら、もっととんでもないものと戦うことになってしまった件  作者: 青山済
第三章 サークル構成員、吊し上げ作戦
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第三十話 吊し上げ会終結、そして新章へ

 市村が完全に意気消沈モードに入ってしまったため、済はクロージングに入ることにした。


「ふぅ、いやいや熱くなっちゃってすみません。地雷を踏み抜いた相手には、やり返さないと気がすまないタチなもので。でも今日は吐き出せてすっきりしました。ありがとうございます!なかなかおもしろい体験をさせてもらったので、今日のお代は僕が払っておきますよ。せっかくなので、僕も知らないようなサークルの情報とか教えてもらえますか?そしたらオタク飲み会の知り合いに、『あそこはマルチもどきの飲み会だ』って言いふらすのはやめます。」

「あの会を潰されたら困ります……。僕たちは素直にオタクの話し場を作りたいと思って三年間頑張ってきたんです。これまでの話からすると、ワタルさんはサークルが元々ニューステージの販売チームだったことも、月十五万円の自己投資も知ってるんですよね。ということは幕張の全国会議のことも知っているんじゃないですか?」

「勿論です。一万人集会とかいうやつですよね。」

「それもご存知でしたか……。となると、多分僕の知ってることはワタルさんも知っていると思います。ワタルさんが言っていた通り、僕とターリー、サスケは皆こしじさんの弟子で、自己投資をしながら経営の勉強をしているんです。オタク飲み会も経営勉強の一環で、皆に満足してもらいつつ、僕らも収益を上げるっていう……。」


 飲み会で収益を上げる、といえば聞こえが良いが、要は高めに会費を取ってピンハネをしているのだった。済はもちろん知っていたが、会を閉めるため黙っていた。


「自己投資のお金を補充するために、三人で集まって飲み会とかバーベキューをやってるんです。実は僕もサークルのことを全部知ってるわけじゃないんですよ。まだ三系列までしかいったことないですし。九系五十人達成して、上のほうに行った人にしか教えてもらえない、サークルの真髄となる教えがあるらしい、というのは噂で聞いたことがあるんですが、それくらいですね……。」

「サークルの真髄となる教え?それはどのくらいの人が知っているんですか?」

「僕もたまたま、酔った師匠から聞いただけなので、周りにはほとんど知ってる人はいないと思います。後で師匠に聞いたらとぼけられたので、もしかしたら寝言かもしれないですが……。」

「分かりました。一応覚えておきましょう。」


 思いのたけをぶつけることができた上、市村を降参モードにすることができた。さらに新しい情報も手に入れられたため、済としては満足だった。


 ◇


 会計を済ませた後、三人はすぐ近くの店で打ち上げを開くことにした。一軒目が居酒屋だったため、二軒目はスペインバルにした。間接照明が多様された店内はなかなかおしゃれで、壁にはワインが並んでいる。


 メニューはなかなか気が利いており、味の個性を示したグラフがワインの一本一本に描かれていた。それぞれ思い思いのワインを注文し、乾杯する。


「皆さんのおかげで楽しい夜になりました、乾杯!」

「乾杯ー!!」

「それにしても青山さん、完全にキレちゃってましたねー笑」

「ちょっと酔っちゃったからですかね、あとやっぱり搾取してる人間は許せないですね!」

「青山さん、学生の頃も荒ぶると手がつけられなかったからね笑」

「えっ、そうだったっけ?至って温厚だったはずなんだけどなー汗」


 枝豆やサラダをつまみながら、これまでの戦いを振り返る。市村の話以外にも、入里麻里奈をコメント攻撃で再起不能にした話やニューブリッジの話、現在潜入中の吉井の話などで、その場は大いに盛り上がった。

 このまま打ち上げが終わるかに思われたが、済がMASKについて説明していた時、事態は急展開を迎えた。


「それで、サークルって自己啓発セミナーとも関係してるんですよ。まあ、自己啓発セミナーって、もともとマルチのセミナーだったから繋がってるのは当たり前といえば当たり前なんですけどね。自己啓発セミナーの業者はMASKグローバルっていうんですけど、そこの代表が梅田っていうおっさんなんです。見るからに怪しいでしょう?」


 済はスマホを取り出し、光沢のあるスーツを着た男性が腕組みをしている写真を見せた。歳は五十代半ばだろうか。色黒の顔は脂ぎっており、見るからに胡散臭い。昔お昼のワイドショーで司会をしていた男性芸能人を思わせる。


 ところがその時、陽子が思わぬ反応をした。


「あっ、私この人見たことある!」

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