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マルチ商法女と戦っていたら、もっととんでもないものと戦うことになってしまった件  作者: 青山済
第三章 サークル構成員、吊し上げ作戦
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第二十話 潜入、キソコソ西田サロン

 ターリーの情報を求めてTwitter、Instagram、Facebookなどを一通り調べたところ、当初の意図から離れて周辺情報を集めることができた。ところがまだ本人には行き着かず、済は疲れを感じていた。このまま頑張っても何も出てこないのではないか……。弱気が脳裏をかすめる。しかし済には入里特定の経験があった。ネットで活動したからには必ず足跡が残る。諦めずに調べていれば、必ず本人に辿り着くはずである。


 特に、Facebookアカウントは必ず持っているはずだった。何故ならキソコソ西田サロンはFacebookグループで運営されており、入会にあたっては必ずFacebookのアカウントが必要になるからである。済は吐き気を催すくらいあの界隈が嫌いだったが、仕方なく料金をチェックしたところ月額千円だった。情報を取るだけ取ってやめれば、酒を数杯飲んだと思って諦められる金額だ。一ヶ月だけと決め、済は西田サロンに登録することにした。


 キソコソ西田サロンを検索し、入会ページに飛ぶ。でかでかと表示された、お笑い芸人西田の顔写真を見ないようにしてサイトをスクロールし、入会ボタンをクリックした。ここからFacebook会員情報をリンクさせ、クレジットカード情報を登録するのだ。入会にあたっては事前に審査があり、悪徳商法や新興宗教の投稿ばかりしていた済は一瞬落とされるかと思ったものの、翌々日にはあっさり審査が通っていた。どうやらスパムアカウントかどうかを確かめるだけのものらしい。会員登録が完了するとFacebookの非公開グループのリンクが送られてくるため、ここでグループへの登録申請をするとそれが許可され、晴れてキソコソ西田サロンの内容を見ることができるようになる。サロンの内容はというと、時事ネタや現在の活動に関する西田のコメントが毎日投稿されるのを見てコメントするのがメインの機能で、それ以外にも会員が勤めている店舗の情報が公開されていたり (行くと割引されるらしい) 、Discordのサーバーで別途会員が企画しているプロジェクトについて会話ができる機能もあった。プロジェクトは多くがカフェバーのオープンや西田の講演会に関するもので、済にとっては全く興味がなく、「やる分には勝手にやってもらえばいいのでは」程度にしか思わなかった。


 済の主目的はターリーの特定なので、投稿は少し読んだもののすぐに会員情報の検索に入った。といってもキソコソ西田サロンの会員は1万人を超えており、目で確認できる分量ではない。そこで済は、まずFacebookの現住所を亀戸に変更した。これで会員リストを参照すると、周辺の知り合いという枠で会員を絞り込めるのだ。他にも出身地が鹿児島県の某地方という条件で検索したり、「ターリー」から連想される田尻や有田といった名前で絞り込んでみたが、残念ながらいずれも不発で、ターリーは出てこなかった。他の二人に比べると随分ガードが固い。さすがに特定の手札を使い切ってしまった済は長期戦を覚悟したが、決して諦めることはなかった。それからは毎日Twitterの脱会者TLや、キソコソ西田サロンの新規投稿への反応をチェックし、本人に繋がる情報が現れないか確認した。


 仕事が終わったらしばらく調査をし、勉強をして就寝する。そんな日々を二週間ほど続けたある日、出張帰りの新幹線の中で事態は急展開した。大阪での打ち合わせを終え、帰りの新幹線の中で脱会者TLを眺めていた済は、あるツイートに目を止めた。


「注意!このPeaceProjectというイベントは、錦糸町周辺の『やまむ』という師匠のイベントです!最近は渋谷のWORMというクラブでやっているようですが、ほとんどサークルの人間しかいないので気をつけて下さい!」


 添付された画像には、クラブでピースサインをして集合する、パリピには見えない人々が写っていた。クラブイベントであれば、ヒューマンビートボックスのスタッフをしていたターリーも近い場所にいるかもしれない。そこで「PeaceProject ターリー」というキーワードで検索を掛ける。するとPeaceProjectのスタッフと思われる人物のInstagramフォロー一覧のページが引っかかった。そこにはこうあった。


「ターリー @terrlliy」


 震える指先でアカウント文字列をコピーし、アドレスバーに貼り付ける。出てきたアカウントには本人写真のアイコンと投稿が二つ。そこに写っていた西郷隆盛似の男は……間違いなくターリーであった。東京に向かう新幹線の中で、済は一人興奮を隠し切れず、小さくガッツポーズをした。


 ようやく本人の写真が投稿されているSNSアカウントに辿り着いたものの、ここからが本番だ。ハンドルネームから本名を探り出すのは簡単ではない。とりあえず投稿されている画像を隅々まで眺め、本人に繋がる情報を探す。ところがこのフェーズはあっさりと終わりを迎える。一つ目の投稿はラーメンの写真で、これといったヒントはなかった。しかし二つ目の投稿にそれはあった。上野公園の銅像の前に立つターリー。その顔をよく見ると、周囲に薄い枠が付いており、その下に何か記号のようなものが書かれていた。画像を拡大して見ると、それは漢字三文字の上半分だった。下半分がトリミングの関係で切れているのだ。 


 済は漢字の下半分を脳内で補完し、Facebookの検索窓に打ち込んだ。

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