05話
力は何物にも代えがたい武器だ。
他人に奪われることがなければ、落として失くす、なんていう事もない。
誰もがうらやむ力は永遠語り継がれるだろう。
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木々の隙間から漏れる、優しいお昼の下がり。
異世界に転生した俺は小高い丘を駆け下り、森の中を歩いていた。
もちろん隣には俺の仲間である、アスカも一緒だ。
ここで俺はふと、女神様のことを思い出した。
「なぁアスカ」
「どうしましたかタカヒコ?」
「さっき女神様が言ってたプレゼント?についてなんだがな」
「すみません!私としたことが、タカヒコはこの世界初めてでしたね。」
そう言うとアスカは彼女の体の割には大きなポシェットをゴソゴソと漁りだした。
「ポケットとかにこんな物はありませんか?」
アスカはピンポン玉のようなアイテムを見せながらこう言った。そんなのあるかな?ポケットを探してみると俺も持っていた。
「ありましたね。これをこうやって押すとほら、ステータスが表示されるんですよ」
アスカがピンポン玉に軽く触れると、そこにはステータスが表示された。俺もアスカに習ってピンポン玉に軽く触れてみると文字が目の前に表示された。
「はいでましたね。えぇっと、タカヒコの職業は『勇者』、レベルは『1』、魔法は『火属性』、魔法レベルは『1』、スキルは…」
アスカはここまで読むと言葉を詰まらせた。どうしたんだろう。
「どうしたんだアスカ。俺のスキル早く教えてくれよ」
「ご…ごめんなさい。タカヒコのスキルは『エフォーター』つまり、努力する者という意味です。このスキルは経験はもちろんですがタカヒコがする事成す事すべてが努力となり、別のスキルを発現させることができるものです。こんなの見たことありません」
「俺のスキルってすごいのか?」
「す…すごいも何も、スキルは生まれた時から持っている個人固有のもので、普通は一つ、上級勇者でも二つが限界です。でもタカヒコの場合「エフォーター」の効果でどんどんスキルを増やしていくことができます。例えば魔法の例ですけど、タカヒコの魔法は『火属性』です。火属性の魔法を持っている者が得られるスキルに『火柱』(ファイヤーチャージ)や『火玉』(ファイヤーボール)があります。通常はどちらか一つなのですが、タカヒコの場合どちらとも習得可能ということです。これは上級勇者以上の力ですね」
はい来ました、転生系ラノベあるある主人公最強な件、通称チートだぁー!
「やはりタカヒコは私の見立て通り私を…この世界を救ってくれる勇者のようですね」
「俺は勇者だからな。アスカのこと絶対に守るぜ」
「えへへ…タカヒコは頼もしいですね」
アスカが照れたように笑った。もう俺ロリコンでいいや。そうだ、さっきから気になっていたことがあるんだった。
「そうだアスカ、さっきから気になってたんだがお前が言ってる「この世界を救ってくれる」っていうやつどういう意味なんだ?」
「あっ…そうですねまたまた私としたことが…タカヒコにこの世界で何が起こっているかをお話ししないとですね」
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アスカが話してくれた事はこうだ。
この世界では平和な時代が何百年もの間続いていたらしい。
だがある日、突然魔王軍が現れ無差別に人々への攻撃を開始。破壊された村や町、亡くなった人は数知れないという。
この世界の魔王は俺同様に「エフォーター」のスキルを持っており人類が立ち向かえる相手ではないそうだ。
また魔王軍には9人の幹部がいるらしい。そいつらもかなり強いとのことだ。
「この世界の魔法は9つあります。火、水、草、電気、闇、岩、回復、飛行、そして8つすべてを扱える光です。魔王軍の幹部はそれぞれの魔法の使い手です」
光の魔法を持ってるやつチートレベルで強いんじゃねぇかよ。まぁ俺もチーターなんですけどね…。俺勝てるかな…なんか不安になってきたぞ。
「アスカ、俺も光魔法を手に入れることはできるのか」
「そうですね…確かスキルに魔法強化というものがあった気がします。そのスキルを得られれば可能かもしれません」
やっぱ勝てるかも俺。てか魔王軍だっけ?響き最高すぎなんですけど!
「ですからタカヒコお願いです」
「急にどうしたんだアスカ」
「この世界の魔王を倒してください。これは、転生者であり、女神・フラ様に認められた貴方、タカヒコにしか出来ない事なんです!」
魔王討伐か。誰もが憧れるシチュエーションだな。例外でなく俺もそのうちの一人だ。
魔王倒したら何かいいことあるかな。楽しみすぎるんだけど。
「どうですか?やってくれますか?」
こんな最高のシチュエーションやらないわけないですよ。
「もちろん!この勇者タカヒコが魔王の一つや二つ、倒してやるさ!」