04話
『時間』という概念は人によって作り出された、一種の『幻』なのかもしれない。
世界は本当にこの幻通りなのだろうか。
望んだ時に戻れるなら、それは本当に幸せなことなのだろうか。
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「斎藤孝彦。転生の準備が整いましたよ最後に私から一つあなたにプレゼントを差し上げました。あちらの世界についてからステータスを確認してみてくださいね」
そういえば俺の自己紹介を忘れてた。俺の名前は斎藤孝彦、16歳の自宅警備員だ。と言っても色々あって死んじまったからこれも過去の栄光だけどな。
「勇者となる者、タカヒコ。貴方に私からプレゼントを差し上げましょう。と言っても今すぐ確認してしまっては楽しみがなくなってしまいますから、ぜひあちらの世界でプレゼントを開けてみてください」
女神様からのプレゼント…楽しみだな!
「タカヒコ…」
俺が女神様からのプレゼントに興奮していると、アスカが体をもじもじさせて何か言いたげだ。俺にロリコン趣味はないが…
うん、なんか可愛いな。
「どうしたアスカ、そんなに体をもじもじさせて。まぁ、そのまま続けてくれても問題ナッシングだけど」
「へっ?」
「いや悪い。今のは自分でも気持ち悪かったわ。それで何か俺に言いたいことがあるんだろ?」
「はい!えっえーと…元の世界、あっ、私の居た世界に戻れたら、あの…その…仲間になってくれませんか?」
人生の選択で意外と気にしないが自分という存在を決定づけるものに「仲間」というものがある。
いい仲間に巡り合う事ができれば、それだけで楽しい日々が過ごせる。逆は言わずともしかりだ。
目の前にいる幼女―アスカ・フォレストは言ってしまえば不幸な女の子だ。
運命にない死を遂げ、元の世界に戻るために俺を殺めた。先ほどからの彼女の言動や立ち振る舞いを見ていると、俺を殺めたことが彼女の本意でないことは十分に伝わってきた。
だから俺はこの選択、
≪仲間になる≫
≪仲間にならない≫
この二択の選択をこう選ぶんだ。
「もちろん、喜んでお供させてもらうぞ」
≪仲間にする≫ ◀
≪仲間にしない≫
俺がこう選択すると、アスカの顔は満面の笑みに包まれた。
おい…何かに目覚めそうなんだが。
「二人とも早速仲良くなったようですね。さぁ、二人の冒険が実り多いものとなりますように」
こうして俺は、人生の選択をミスし、死を遂げ、異世界で勇者となる。
―――――
花だろうか、いい匂いが俺の鼻腔をくすぐる。
目を開けてみる。空だ、青い空がどこまでも俺の前に広がっている。
視線を横にやる、少女が横になっている、可愛い寝顔だ。
体を起こす、小高い丘のようだ。
「うわっ…」
思わず言葉が詰まる。
目の前に広がるのは、前世のようなコンクリートジャングルではない。どこまでも広がる草原、青々と天に背を伸ばしている木々。
ここは、いつの日か夢に見た、ゲームの世界の様だった。
「タカヒコ、おはようございます」
後ろで声が聞こえ、振り返ると、目覚めたばかりの少女が濁りのない、透き通った目を輝かせながら座っている。
そんな彼女も体を起こし小高い丘からこの世界を見渡す。
「あっ…っ…」
急に少女は涙を流す。前世では日々自宅を守ってきた俺氏、もちろん姫君とお付き合いをしたことなどあるはずもなく、どうすればよいか全く分からない。
「どっ、どうしたんだアスカ!」
「へっ…へへ。すみません。この丘から見渡す、この草原の景色、お花の香、あぁ元の世界に私の大好きな時に戻れたんだなっていう安心からでしょうかね、つい泣いてしまいました」
そういう少女の表情はどこか安心したような、年相応の可愛らしいものとなっていた。
「よかった」
「へっ?」
「いや、女神様に紹介された時からずっと、アスカはなんか悲しそうな顔してたから、泣きながらでも嬉しそうにしてくれて」
「いや!私そんな顔してましたか?」
「あぁ、そりゃ、全身から負のオーラを感じるほどにな」
「恥ずかしい…」
こうして降り立った異世界、人は後にこの世界を「スターフォート」と呼ぶこととなるのだった。
―――――
「きゃぁー!」
女性の悲鳴が、子供の泣き声が飛び交う。
空は真っ赤に染まり、畑は荒れ、人々は死に伏し、家は燃え、大地はひび割れている。
「ぐふぉお」
人を殺そうとはだれも思わないだろう、殺したいとはだれも思わないだろう。
「うわぁぁーん」
糸は細い、脆い、すぐにほつれ、絡まってしまう。
一度、どこかで切れれば、使い物にならない。
世界も同じだ、どこかでほつれれば、おのずとその糸は絡まっていく。