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突き飛ばされて異世界転生したら勇者になってくれと言われたんだが  作者: 浜 タカシ
現世 終わりという名の始まり
2/19

02話

仮に目の前に大福があるとしよう。一つは激辛、もう一つは美味しいイチゴ入りだ。激辛大福を食べる確率は1/2。確率が高いと思う人もいれば、低いと思う人もいるだろう。

それでは毒入り大福と、イチゴ大福では?きっと1/2が恐ろしい確率に感じてくるのではないだろうか。

命を懸けた二択の選択は、時にとてつもなく残酷なものである。


―――――


時計の短針はもうじき9を指そうとしている。普通なら学校へ行き、勉学に励むべきなのだろうが、俺は普通ではない。学校に行く無駄な時間があれば己のために費やす方が合理的だ。

こう聞くと引きこもりのように聞こえるがそうではない。俺とて太陽光を浴びないと生きていけないのでたまに散歩を嗜む。今日は散歩ついでにクソオブクソゲーの呼び声高い「スターフォートアドベンチャーⅡ」を買いに行こうと思っている。

言わずと知れた「スターフォートアドベンチャー」は一度死ぬと最初からやり直し、それ故にクリアどころかラスボスに到達できたものも数えるほどしかいないという鬼畜ゲーだ。

じゃあなんでそんなクソゲーとか鬼畜ゲーとかぼろクソに言ってるゲームを買いに行くのかって?まさかお前ドⅯか…。

おいおい待ってくれよ、俺はドⅯなんかじゃないぞ。ただつい短針一周分前に前作の「スターフォートアドベンチャー」を世界で初めてクリアしたから、ぜひ続編もクリアしたい。つまりゲーマーの意地ってやつかな。

とまぁかっこつけながら玄関をくぐる。ぐっ…久しぶりの日差しが体を攻撃してくる。とまぁこんな風に日差しの洗礼を受けながら俺は日課の散歩を始めたのだった。


―――――


「今日も疲れた疲れた…」


私はその日もいつもと同じように魔法の練習を終え村に帰った。でも、そこに私の知っている村はなかった。目の前にあるのは畑が荒れ、水が枯れ、家が燃え、村の人たちが死に伏している、そんな地獄絵図だった。私はショックのあまり体の力が抜け、地面に伏してしまった。


グサッ「ウッ…」


突然、背中に激しい痛みが走った。突き刺すような鋭い痛みだ。私の意識はだんだんと遠のいていった。


―――――


「うぅー」


私は拍子抜けた声を出しながら目を覚ました。ここはどこだろう?真っ白で何もない。

「目が覚めましたかアスカ・フォレスト」


誰だろうこの人は。綺麗な人だ。

「私は森の神フラです。さぁ、その椅子にお座りなさい」


森の神・フラ様といえば私たちフォレスト族が信仰する女神様だ。でもどうして女神様が私の前にいるのだろう。私はそんなことを考えながら椅子に腰かけた。


「いいですか。アスカ・フォレスト。驚かないで聞きなさい。貴女はつい先ほど亡くなりました。」


フラ様は何をいっているのだろう。私が死んだ?そんなはずは無い。現にわたしはこうしてフラ様と喋っている。


「まぁ驚くのも無理はないでしょう。あなたの場合、死ぬはずではなかったのですから。不幸でしたね。」

「ではどうして私は死んでしまったのですか?死ぬ運命ではなかったのですよね」


私は咄嗟に聞き返した。


「そうですね。あなたにはお話しした方が良いでしょう。あなたが運命では無い死を遂げたのは、貴女を殺した者が異端の存在、転生者と呼ばれる者だったからなのです。何せ彼らは異端の存在。本来この世界に存在しない者なのです。だから他人の運命を変えてしまうことがある。そういうことです」

「そんな…」


私はフラ様の口から淡々と語られる話が現実のことなのか分からなかった。まるで他人事のような感覚だ。


「アスカ・フォレスト。今回貴女は運命とは異なる結果での死を遂げてしまいました。転生者の暴走を止められなかった我々神にも責任が少なからずあります。ですから貴女には二つの選択肢を与えましょう」

「選択肢?」

「えぇ、貴女がこれからどうするかを決める選択です。通常は別の世界、つまり異世界に赤子として転生させます。この時今までの記憶はすべて消してしまいます。ですが今回貴女は運命にない死を遂げてしまった。この救済として元の世界に戻ることもできます。この場合通常とは異なり記憶やステータスはそのままです」

「元の世界に戻してください!」

「アスカ・フォレスト。慌てないでください。二つ目の選択肢には条件があるのです。それは『異世界の者を仲間にしないといけない』ということです。本来あなたは異世界に転生するというのは先ほどお話ししましたね?でも貴女がこれを選べば貴女は異世界ではなく元の世界に戻ってしまう。だから世界の均衡を保つために、他の世界の者を貴女の世界に転生させる必要があるのです」

「つまり私が異世界に行って誰かを仲間にすればよいのですか」

「えぇ。でも転生させるには『誰かに殺された』という条件が付きます。つまりあなたの手で仲間になるものを殺める必要がある。ということになりますね」

女神様は笑いながらこうも恐ろしいことを語った。

「そっ…そんな…」


人を殺めるなんて私にはできない。でも私は元の世界に戻りたい。私の心は揺れていた。


「無事に仲間を見つけ、転生させることができれば、貴女が望む時に戻してあげることもできますよ」


私が望む時…。私はお父さんとお母さんと楽しく暮らしていたあの時に戻りたい。私の心は決まった。


「決めました。元の世界に戻してください」


私は女神様の目をまっすぐ見て言った。

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