表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塔の賢龍  作者: 鹿の子姫
第1章 出会い
9/59

魔法を扱う者達

魔法とは、大きく二種類に分類される。

魔獣や妖精達が使うのは、自然の力の源である精霊たちの力を借りて術をかける精霊魔術。

これは扱いやすい分大雑把な魔法しかかけられない。力魔法と自然魔法に分かれる。

シャズイーニが使えるのは力魔法のみだ。


一方で人間や少数魔族が使うのは星の力を借りて魔法を行使する星導魔術である。

これは扱いが大変難しく、威力も小さいので使いにくいものだ。

しかし、精霊魔術よりも小さな魔力で細かな術式で魔法をかけられる。元々個人の魔力所有量が生物の中で最も少ないのが人間である。

だから人間の国では星導魔術が重宝されてきた。


シャズイーニは最近魔術の本を特に熱心に読んでいた。

ドラゴンは個々の力がとても強いため、魔法に頼らなくても口から炎を吐くだけで生き残ることができた。だから誰一人として魔法に興味を持つ龍は現れなかった。


だがシャズイーニは気づいた。


自分の体内には深い傷をもすぐに直せてしまうほどの治癒力があることを。

精霊魔術の世界では生命力と魔力保有量は比例する。

つまり生命力が強い生物ほどその身に持っている魔力は多いという事だ。

生物界トップの治癒力を持つ龍族はまた、魔力保有量もトップという訳だ。


「魔力はあるのに僕らドラゴンは魔法の使い方を知らない。無知とはなんとも恐ろしい」


シャズイーニは今ファシルと一緒に基礎魔法の練習をしていた。

目の前にあるロウソクへ火を灯すだけという初歩的な魔法だが、シャズイーニは苦戦していた。


「ほら、もう少しロウソクに集中して下さい」


ファシルがシャズイーニの顔横に浮きながら注意する。

そこへ朝食のパンとスープを持ったアオバがやってきた。


「懐かしいな。俺も昔やらされたわー」


「アオバはこれが出来るのか!?」


シャズイーニからの驚きの声にアオバは物知り顔で答える。


「もちろん。こんなの指を鳴らせばすぐつくさ」


パチッとアオバが指を鳴らした。するとロウソクに赤赤とした火が灯った。


「この僕が苦労しているのにこいつはこんなに易易と......確か星読み師とか言ってたな。星の知識があるなんて羨ましい」


「あの〜。心の声全部俺に届いてますよ?」


「あ、しまった!」


アオバは笑い転げた。

いつも嫌味な龍がエコー魔法のミスで心の声をさらけ出してしまったのだ。

腹を抱えながらアオバは笑う。


「まぁそのうち出来るようになるって」


「あ! アオバ、いいこと思いついちゃいました」


ファシルが嬉しそうに跳ねる。


「シャズイーニは精霊魔術の自然魔術の練習をする。アオバはエコー魔法を練習するなんてどうでしょう!」


はぁ? とアオバが意味がわからないという身振りをする。


「俺星読み師だし。精霊魔術のことは知らんよ」


「エコー魔法は便利ですし、使えるようになって損はないと思いますよ!」


さっきシャズイーニが心の内を暴露してしまったという点で損はあると思ったが、アオバは黙った。

かくしてエルフファシル先生の元、一人と一匹は魔法を練習することとなった。



「神様は不公平だな」

アオバは独り言ちる。

アオバは一週間かけてエコー魔法を習得した。

しかしシャズイーニは初日は基礎魔法すら苦戦していたのにも関わらず、一週間後には雷を生み出すなどの上級自然魔法を習得していた。

この飲み込みの早さの差は何なのか。

人間は全生物の中で最も劣ると言われる。

一方龍族は全生物の中で最も優秀だと言われている。

やはり神は不公平に世界を作っているらしい。

シャズイーニは既にアオバが星導魔術で出来る魔法の倍の数の自然魔法を習得している。


「ほら見ろアオバ。この青い炎を! 僕の鱗をさらに美しく照らしてくれる」


精霊魔術の中でもハイレベルな青い炎生成を自分の鱗のライトアップとしか見ていないシャズイーニにアオバはうんざりした。


「はいはい綺麗ですね。それよりエコー魔法って言うのは大人数に聞かせるより目的の相手を絞って伝える方が難しいんだな」


シャズイーニは日常的にアオバにだけエコー魔法で声をかけたり、逆にアオバに聞こえないようにファシルと相談事をしている。

簡単そうに見えるが、目的の相手以外に聞こえないように力を加減するのは難しい。

そしてアオバが困ったことがもう一つ。

エコー魔法の精度というのは発信主の魔力量で変わるらしい。星読み師であるが、人間種のアオバの魔力量では、短い文を半径百メートル以内にいる相手に届けるのが精一杯であった。


「この魔法は龍族が作り出したものだからな。人間みたいにちっぽけな魔力じゃ使いこなせないさ」


シャズイーニが鼻で笑う。アオバも仕方がないことだと分かっていた。


「待てよ......龍族が作り出したということは......俺が星導魔術で同じような魔法を作り出せばいいんじゃないか!?」


その言葉にファシルとシャズイーニの動きが固まった。

一瞬の静寂。


「そーですよ! アオバならきっと出来ます!」


目をキラキラさせるファシル。一方シャズイーニは渋い顔をしている。


「アオバお前新しい魔法を作るのがどんなに大変か知ってるのか? 精霊魔術でも難しいものをさらに細かくて面倒臭い星導魔術で同じことをしようなんて無理ってもんだよ」


その時アオバはいい事を思いついた。


「いや、出来るね。ここには星の周期記録書がどこかに眠っている。それを使えば可能なはずだ。なんてったって俺は王専属の星読み師だったんだからな」


おおー! とファシルが声を上げる。

アオバは心の中でほくそ笑む。

これで上手く星の周期記録書を二人に探すのを手伝ってもらえる。

それにこれなら魔法開発という名目でアオバが周期記録書を探していても不自然に見えない。


「二人も探すの手伝ってくれるよな?」


「もちろんです!私の記憶に無い本なので見落としがあったのかもしれませんしね。ここの司書としてここの全ての本を把握しておきたいです」


即答のファシルと無言でそっぽを向いた龍は手伝ってくれるようだ。


「よし! まずは星の周期記録をさがすぞ!」


ファシルとアオバはエイ、エイ、オー! と腕を上げながらまずは西塔から探しに行くことにした。


一人中央塔に残されたシャズイーニはため息をついた。

シャズイーニとしても魔法開発はとても魅力的で、いつか自分もやってみようと思っていた。

いや、過去に一度新魔法開発に成功したのだが、その時自分がどうやって新しい魔法を生み出せたのか全く思い出せなかった。

だからアオバに先を越されることになるとは思っていなかった。

それに実はシャズイーニはアオバが言う星の周期記録書を南塔の秘密の書庫で見つけていた。

恒星アルペニオンの周期記録が細かく記されたその本にはあるメモが挟まれていた。


この本を見つけし者へ。

ここにエクーナ王国の使者が来て、この本を探していると言うだろう。だが用心せよ。その者はこの本を王国へと持ち去り、つまらぬ政治に利用しようとしている。この本があるべき場所はこのヤーゴン城である。

ーーーヤーゴン・エルグ・レグチャフ


この城主からのメッセージを見つけた時はファシルに宛てたメッセージかと思った。

彼はヤーゴンの生前からヤーゴンに仕えていたからだ。

しかしシャズイーニはこの本の存在をファシルに伝えなかった。

このメッセージは最初にこの本を見つけた者へのメッセージだと思ったからだ。

今もこのメモはシャズイーニしか知らない秘密の場所に隠してある。


「偶然にも、アオバはエクーナ王国から来たという。アオバはここに来た理由は国に追われてここに行き着いたと言っていたが......」


エクーナ王国からアオバがここにたどり着いたのは偶然だろうか。しかもなぜアオバはここに星の周期記録書が眠っていると知っていたのだろうか。

シャズイーニは目を細める。


「単なる思い過ごしならいいが......注意しておかないとな」


ここには恒星アルペニオン以外の星の周期記録書もいくつかある。アオバの目的が他の星の周期記録書ならば何ら問題はないのだ。



この世界での魔法について(ようやく)詳しく書くことが出来ました。

この世界での魔法についての質問などありましたら是非コメント下さい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Twitter @kanokohime_book
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ