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塔の賢龍  作者: 鹿の子姫
第1章 出会い
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黒い龍

今から千年前、世界は一匹の黒い龍に支配されていた。


「魔龍」と呼ばれるその龍は、アラストリンという美しい黒いメス龍だった。


魔界で育てられたアラストリンは、悪魔のねじ曲がった心を持ち、恐怖と呪いで生きとし生けるもの全てから恐れられた。


最初に立ち上がったのはアラストリンと同じ龍族だった。

しかし、アラストリンの扱う魔界の魔法を打ち破ることが出来た龍は一匹たりともいなかった。

アラストリンの怒りを買った龍族はアラストリンに肉として狩られるようになり、その個体数を大きく減らした。


数年に一度、「勇者」とよばれる者達がアラストリンを倒そうと立ち上がるが、アラストリンの強大な魔法の前では勇者は武器を持たぬ赤子のように為す術もなく塵に変えられた。

誰もがアラストリンを恐れ、アラストリンに挑む者もついにいなくなった。

誰もがアラストリンにひれ伏した。

その頃、魔龍を神聖視する「魔龍会」が誕生した。

彼らは魔龍に捧げものをすることで、魔龍の手下として暗黒の時代の中、大いに繁栄した。

全てを手に入れたアラストリンは退屈を感じていた。

そして、人々に賭け事を持ちかけるようになった。


「もし我に勝つことが出来れば、将来の繁栄を約束しよう」


アラストリンは頭もよかった。希望に胸を踊らせた挑戦者たちを打ち負かし、絶望の表情を浮かべた敗北者を喰うのが楽しくてたまらなかった。

そんな世界が三百年ほど続いたとき、一人の勇者が現れた。

諸君も一度、いや三度はその名を聞いたことがあるであろう。


そう、「アロー」だ。


種族名は長い歴史の間に廃れてしまったが、「アロー」と言う名だけは千年経った今でも英雄として世界中で語り継がれている。


「賭けをしよう」


アローはアラストリンに賭けを申し込んだ。

最初は小さな賭けだったが、だんだん賭け金を多くしていった。

そして最後の勝負。

アローは全世界の生命を賭け、アラストリンは自分の命を賭け台の上に乗せた。

ルールはコイントスだった。

アローが表。アラストリンは裏に賭けた。

一見運任せの勝負に見えるが、魔法が使える魔龍とアローはお互いに魔法をぶつけながら自分の望む向きにコインを動かそうとする。

コインが投げられ、地面に落ちる頃にはコインは端が歪んで表面は溶けかかっていた。

強い魔法のぶつかり合いでコインが変形したのだ。

全世界の運命がかかったこの勝負、コインの向きは表。

勝者はアローだった。

ついに世界は魔龍から開放されたのだ。

主人を失った魔龍会は散りじりになった。

しかし、アラストリンが遺した次の魔龍となる龍の卵は、アラストリンの巣からついに発見されることは無かった。


様々な噂がある。

実はアローにはアラストリンを殺せるまでの力が無く、どこかにアラストリンを封印したという説。

アラストリンの遺した卵は魔龍会が千年たった今も魔龍復活に向けて保管しているという説。

どれも真相は定かではない。

魔龍会に関わる事は、どの種族の世界でも禁忌とされ、厳しく処罰される。

この書を読んでいる諸君がもし、魔龍会の影を見たことがあるのならば。

絶対に近づいてはならない。

そして、魔龍復活だけは絶対に阻止しなければならない。

世界の平安を願って。

ーーーレグルス・エバーン




「おいシャズイーニー」


アオバが読み終わった本を手で振り回しながらシャズイーニに呼びかける。


「なんだよ」



「この本なんだけどさー。魔龍会のことバッチリ明記してあるじゃん。エクーナ大国なら持ってるだけで処罰対象の禁書中の禁書だよ。なんでここにあるの」


「それは僕が使われなくなったエルフの遺跡から持ち出してきた本だ。多分百年は前の本だよ」


「へ〜。じゃあこの作者のレグルスって人もエルフなのかな」


「さあな。僕らの知ったことじゃないさ」


アオバは手に持っていた分厚い本を閉じると、元あった場所に丁寧に戻した。

みんな大好き魔龍のご登場です!

実はアラストリンという名前は私の好きなとある海外児童書から頂いました。

わかる方には分かるかも?笑

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