親子の再会
アオバは王城内にある巨大な浴場を堪能していた。
シャズイーニでも余裕で入れそうな巨大な浴槽である。と言っても、入口が狭いのでシャズイーニは入れないのだが。
アオバが星読み師だった頃は、王城に仕えていても王城の浴場を使用することは禁じられていた。
だから一般の王都民同様に、王都各所にある湯屋で入浴するのが当たり前だった。
王都の湯屋も大人数が入浴できる巨大な造りだった。
しかし、この浴場はそれを上回る大きさだ。
巨大な浴場に一人で湯に入るのは、開放的でリッラクスするが、同時に寂しくもあった。
王都の賑わった浴場で育ったアオバにはこの浴場は広すぎた。
身体を洗うための下女が浴場で待機していたようだが、アオバは服を脱ぐ前に丁重にお断りしておいた。女性に裸を見せて身体を洗わすなんて想像しただけでも顔が熱くなる。
「王族にはこれが普通なのか......」
アオバの独り言は広い浴場内で反響する。
アオバは久しぶりに長湯をしようと意気込んでいたが、大きな浴場内が静かすぎて逆に落ち着かなかった。
結局、ちょっともったいないと感じたが、早々に湯船からあがって部屋に戻ってきてしまった。
だだっ広い自分の客室で同じところをウロウロしていると、ドアがノックされた。
「アオバ・エルグ・リトゥーバ様。お客様がお見えになりました。お通ししてもよろしいでしょうか?」
(こんな夜にわざわざ俺に客?)
訝しく思いながらもアオバはメイドに許可を出した。
ドアが開き、メガネをかけた五十代半ばの男が入ってきた。
その姿にアオバは目を見開く。
「ち、父上!!」
その男、アオイ・エルグ・リトゥーバはアオバの父だった。
鬼才の星読み師として名を馳せていた父。
アオバが王専属の星読み師に王から任命されたのも、この父の後押しがあったからだ。
「久しいな。アオバ」
アオイは厳しい目つきのままアオバを見据えて言う。
アオバは思わず背筋を伸ばした。
「私は...その...縁を切られたはずでは......」
アオバが言いずらそうに言う。
アオバは長老会に嵌められたとはいえ、失態を犯して星読み師を罷免されてから、この父からの反応は何も無かった。厳しい叱責すらも無かった。
あの時は父からの無言の圧力をアオバは感じていた。アオバは無言で親子の縁を切られたものだと思っていた。
「何を言っている。私は縁を切るなど一言も言っていないぞ」
「へ?」
アオバは思わず聞き返した。
「お前を一人前の男として認めた上で、あえて私はお前が失態を犯した時に何も言わなかった」
「じゃあ俺は......」
「もちろん我が自慢の息子だとも」
目をしばたくアオバにアオイは手を伸ばしてハグをする。
アオバの目頭が熱くなる。
「私はお前を王専属の星読み師として推薦したが、後にお前にはこの王国は狭すぎると感じていたのだよ。長老会の横行を止められなかったのは詫びよう。しかし、お前は自分の世界を見つけて戻ってきた。あの龍と共にな。私にはそれが何よりも嬉しい」
こんなに優しい父をアオバは見たことが無かった。アオバを優秀な星読み師にするべく、厳しく接してきた父。
ろくに褒められた記憶もアオバには無かった。だが、心の内では父の期待に応えようと努力を重ねていたアオバを、父は誇りに思ってくれていたのだ。
アオイがアオバから離れる。
アオバの頬は涙で濡れていた。
「男が泣くものではない。だが、今日だけは許そう」
久々に見た父の笑顔にアオバも釣られて笑った。
それから父と息子は長く語り合った。
アオバの母ヘレナはアオバが罷免され、荒野に一人追い出されたと聞いてその場で卒倒してしまったという。
しかし今は元気にやっているとのことだ。
一方、父アオイは長老会へヤンから推薦されたが、辞退したという。
そしてなんと、今アオイは王専属の星読み師だと言う。
「出来すぎた息子の跡取りとなるとはな」
アオイはそう言って笑っていた。
しかしアオバは心配だった。
「また長老会に目をつけられたりはしないでしょうか?」
アオバがそうだったように、父も長老会に目をつけられてしまうかもしれない。
「案ずるな。お前の一件から、私と長老会の一員ヤン・エルグ・ルイーン殿で長老会の横行を阻止するべく見張っている。長老会もあのルイーン殿にははむかえまい」
それから話題は塔の生活から魔法の話へと移った。
アオイもアオバも星読み師として、並々ならぬ魔法への熱意を有していた。
「エルフの少年の指導か! お前の初弟子が精霊魔法の使い手として名高いエルフ族とはな! 今後が楽しみだ」
親子の会話はその夜遅くまで続いた。
毎日投稿と謳いながら、しばらくお休みしてて申し訳ありません。
投稿は、作者鹿の子の気分が良いときだけしてます。ただの気まぐれです(*_ _)人ゴメンナサイ




