暗夜の決断
日が暮れた頃、アオバとピーターに町まで見送られて自分の宿に戻ったシラヌイはふぅと息をつく。
これからが彼の仕事の時間なのだ。
アオバには休暇でここに滞在していると伝えてあるが、本当は王直々のある任務を仰せつかっているのだ。
コンコンという規則正しいノックの音と共に男の声がドアの向こうから聞こえる。
「見張り担当のケンゴ・スターレアンであります。今日の報告へ参りました。入室を許可願います」
「ああ、入ってくれ」
シラヌイは男を部屋に入れると、廊下に人がいないことを確認する。そして用心深くドアを閉める。
聞き耳を立てる輩がいるかもしれないので、この部屋での報告ややり取りには紙に文字を書いて行われる。
部屋に入った男は事前に用意しておいた一枚の報告書をシラヌイに手渡す。
シラヌイはそれにサッと目を通すと考え込んだ。
そして紙とペンを取ると、そこに日付を記す。これはある計画を決行する日付だ。
日付を記した紙を男に渡し、全員に伝えるようにとメモした紙を見せる。
御意、とメモで答えた男はシラヌイの部屋を出ていった。
誰もいなくなった室内でシラヌイは考え込む。
(計画の決行を早めてしまったが大丈夫だろうか......いや、相手が気づいていない以上早いにこしたことは無いな)
シラヌイは男との会話に使ったメモを握りしめる。
すると無詠唱化されて現れた火の魔法によって手の中のメモは塵と化した。
サブタイトルの「暗夜の決断」って声に出すと「あんよのけつだん」になりますね。
なんだか赤ちゃん言葉みたいで可愛いけどダサいような複雑な気持ちです。