書物改革と買い出し
その日、ファシルとアオバは塔の横にある、元は憲兵たちの家だったと思われる建物内にいた。
憲兵達の家といっても、そこは貴族の敷地なわけで、かなり豪華な装飾が施されている。
ここに来たわけはアオバが発案した書物改革の一環である。
塔の書物改革
①中央塔に溢れた本をどこかに移動させる
② 本をジャンルごとに仕分ける
そうアオバが自慢げに今朝発案したのだ。
②は時間がかかるので、とりあえず①の下見のために元憲兵の家に来たわけだ。
「外の空気を吸うなんて何百年ぶりでしょう!」
ファシルが塔を一歩外に出ただけで深呼吸する。
ファシルは過去の辛い記憶を消すのと引き換えに元塔の主のヤーゴンによって塔に縛り付けられていたため、塔の外を歩くのは久しぶりなのだ。
元憲兵達の住宅は、二階建てで六つのフロアに分かれていた。
六つのフロアは本棚は無いが、かなり広いので大きな本棚を置いても問題なさそうだ。
「あとは本棚を用意しなきゃな」
無いものは作るしかない。
日曜大工すらしたことがないアオバは頭を抱える。
「大丈夫ですよアオバ。ほら、ここに本棚の作り方が載っています」
アオバがファシルが開いたページを見ると、見たことの無い文字が並んでいた。
頭にハテナが浮かんだままのアオバ。
「もーアオバったらゴブリンの文字も読めないんですか? 勉強不足ですよ!」
「知らねーよ! 俺はゴブリンじゃなくて人間だ!」
ぷくーっと頬を膨らますファシルにアオバが抗議する。
アオバにはゴブリンとドワーフの違いすらもよく分からない。
「でもこれ図付きでとってもわかりやすく書いてあります。図を見ながらなら何とかなるでしょう」
「でも工具が無いぞ」
「それはアオバが買ってくれば問題ありません」
「マジかよ......」
こうしてアオバは町へやってきた。
「えっと...工具屋、工具屋っと...」
大通りをいつもの司書服で歩くと目立つので、今日はマントで中の服を隠している。
愛馬ピーターの手綱を引きながら歩いていくと、『工具屋』の看板の文字が目に入った。
ピーターを店前で休ませて、アオバは店内へと入る。
「らっしゃーい」
太い男の声が響く。
「あんちゃん何をお探し?ここにゃー大抵の工具は揃ってるぞ」
「えっと......本棚を一から作りたいんですけど...何が必要ですかね」
アオバが言うと、店長の男は驚いたという顔をする。
「あんちゃんみたいに細いのが本棚を一から作りたいだって!? まぁ必要なのはノコギリとカンナと釘とヤスリってところだな」
「じゃあその四つ下さい」
アオバがそう言うとあいよ!という威勢のいい声で店主の男が言う。
「じゃあカンナとノコギリと釘とヤスリで二百ルピーね」
店主が手際よくカンナとノコギリと釘を袋に詰めていく。
アオバが出した銀貨を数えながら店主の男は言う。
「あんちゃんみたいに細いのが本棚を自分で作りたいとはねぇ......いや、工具店の俺からしちゃあ嬉しいことだが、あんちゃん、王都の星読み師みたいに真っ白で細いから心配でよ」
正体を見破られてしまったアオバは冷や汗を隠しながら笑顔を向ける。
「ありがとうございました」
「おう! おまけも入れといたからもし指に釘刺しちまったら使ってやんな」
恐ろしい未来予知を言われたアオバは引きつった笑顔のまま店を後にした。
ついに第2章開幕です!
これから新たな出会いや事件が起こっていきます。アオバたちはどう乗り越えていくのか!?
乞うご期待!




