二人の決意
ヤーゴンの手記はここで終わっていた。
「ヤーゴンもファシルのためを思って記憶を奪ったんだな......それなのに俺はその思いを踏みにじってファシルに自我を忘れさせてしまった......」
アオバは自分のしてしまった事の重大さを嘆いた。
「でも、このまま放って置いてもファシルは自分で思い出したと思うよ」
魔法をかけた者が死んだ後、相手が何であれかかった魔法はどんどん効果を失っていく。
ヤーゴンが死んで三百年が経った今、その効果が切れていてもおかしくない。
「ということは......俺がファシルの魂を解放する前からファシルは自分の記憶を取り戻していた......?」
「推測に過ぎないけどね」
シャズイーニが冷静に答える。
「もしそうなら......ファシルは過去と向き合う必要があるな」
過去に目をつむり、蓋をして誤魔化してきたファシル。魂を開放されたことで、閉じていた蓋が開いてしまったのだ。
「ファシルが過去と向き合うためには、まず僕らがファシルの過去を知る必要がある」
シャズイーニの意見にアオバも同感だ。
「星導魔術に、夢を通じて寝ている相手の記憶を見る魔法がある。ただそれには莫大な魔力が必要だ。俺にはそんな力無いんだ」
「それなら心配ない。僕の魔力を使うといい」
いつになく気前のいいシャズイーニにアオバは苦笑する。
「あとこれは人間の世界では禁忌とされている魔法だ。他人の記憶をいじることも出来るからね。俺らは禁忌を犯す訳だ」
「禁忌だろうが何だろうが、僕らには関係ないさ」
ふふんと笑うシャズイーニにつられてアオバも笑い出す。
「そうだな! 禁忌ごときが何だってんだ! 俺達はやるぞ!」
一人と一匹は拳を突き合わせてやるぞーっと叫んだ。
その声が塔の中をこだました。
今回は短かったですね。
しかし御安心を! 今日は2話投稿します。
次の23話は夜8時頃投稿予定です。




