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塔の賢龍  作者: 鹿の子姫
第1章 出会い
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災難


エクーナ王国といえば人間が住まう地域の最西端に位置する大国である。

国土の四割が農耕地で、その豊かな実りがおよそ人口二十七万の腹を満たしている。

国の中央の王都では王や貴族と共に、星を読んで王国の未来を占う星読み師が強い権力を持っていた。

星読み師は未来を占う他に、星や星座の力を借りて魔法と呼ばれる奇跡を起こせるとされていた。

しかし、星読み術は王直属の星読み師以外には門外不出で、飢饉や大きな災害の時以外に一般市民に魔法の恵みをもたらすことは固く禁じられていた。

そんな星読み師になるにはまず王家の血筋を持つか、代々続く星読み師家系に生まれなければならない。そこから星読み師育成学校で才能を見出された者のみが王直属の星読み師となれる。


アオバ・エルグ・リトゥーバは若いながらも星読み師としての才能を買われ、現在王のリー・フォルン・エクーナ王専属の星読み師に任命された出世頭だ。

普通の星読み師が王国の未来を占うのと違い、王専属の星読み師は王個人の運命を占うのが主な仕事である。王に危険が迫るようであれば身を呈して王をお守りするのがアオバの使命だった。


「その栄誉ある仕事もこれまでだな」


アオバの絞り出すような声に深い溜息が続いていく。広い一人部屋と言えどこの静けさの中、その溜息混じりの皮肉は思いがけず大きく響いた。

なぜ出世頭とも言われた天才星読み師が仕事を追われることになったかというと、ただの星読み師同士の権力争いに巻き込まれたのだ。

星読み師の中でも王に助言し、強い権力を振るえる王専属の星読み師ならば狙われて当然だ。

もっと注意しておくべきだったと後悔するアオバだが、あとのまつりだ。


あの日、空には満点の星空に、一筋の流星が流れた。流星は大亀座の頭から足先までを滑り落ちた。大亀座といえば大いなる安定を意味し、そこに吉兆とされる流星が落ちたのだ。王にはもちろん吉兆の報告をした。

ところが、翌日から王は床から起きられないほどの腹痛に一ヶ月悩まされた。吉兆の報告とはなんだったのかという所に、星読み師の全体の意見では流星は無かったと言う知らせが王の元に届いた。

星読み師としての資質を疑われ、責任取りのために王専属の星読み師を罷免されたという訳だ。

「大方、若い俺が王専属の星読み師の座に居るのがヨボヨボの老害星読み師どもは気に食わなかったのだろうな」

アオバの読みでは王を腹痛にしたのは星読み師の長老会の中の誰かが事を仕組み、王に死なない程度の呪いをかけ、長老会の権力で流星を無かったことにしてアオバを嵌めたのだ。

明日には王都を去れるよう荷造りをしていた時だ。自室のドアがノックされ、王からのお呼び出しを下女が伝えてきた。王の元へ馳せ参じると、それはそれは長い苦言と文句を並べられたが要約するとこうだ。


「こ度のお主の失態、王専属の星読み師としてあるまじき行為。普通なら星読み師としての資格剥奪、罷免が正しいところである。しかし、お主の若さと将来の可能性を見据えて特別な任務を与える。この任務を完遂すれば星読み師としての資格剥奪は大目に見よう。必ず成功させるように」


つまり失敗すれば身の破滅、なんの成果も得られずノコノコ帰ってくれば命すら危ういという事だ。

任務というのが、魔獣ひしめくルーリエの森とエクーナ王国の境界線付近一帯に広がる荒野に行き、三百年もの間消息を断っている貴族のヤーゴン・エルグ・レグチャフの城へい行き、星の周期記録が記された記録本を取ってこいというものだった。去年王国騎士五十人がヤーゴンの城へ向かったが、帰ってきたのが半数、しかも皆口を揃えて

「怪物を見た」

と言うのだ。そんな所へ護衛一人も付けずに行けと言うのだから、死んでこいと言われているのと同然だ。

「まぁ命じられたからには行くしかないが、何とかなるだろう。」

アオバは愛馬のピーターの背の上で揺られながら独り言ちる。

最後の人間の町を通り過ぎてから二時間。

目の前には草もまばらな荒野が広がっている。

災難続きのアオバ。作者の私が言うのもアレですが、これからどうなってしまうのでしょう。

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