~ギルドに仮登録~
街が見えた。
外壁に囲まれており、中は遠くからは見えない。多分、モンスターから街を守るために外壁を作っているんだろう。もしかしたら、人間同士の争いでの防御策かも知れないが、まだこの世界に来たばかり。もう少しこの世界について知っていかなければいけないな。
隣で能天気に空を見上げてる銀髪のロングをなびかせてる、シルちゃんは本当頼りないから。
「やっとだな」
「だねーお布団で寝たいー」
俺もだよ。本当布団で寝たい。
「思ったんだけど…俺たち、あの街普通に入れると思う?なんか、外壁とかあるし厳しそうなんだけど」
「ん?大丈夫でしょー」
「まぁ行かないと分からないか」
そして外壁の前まで到着。入り口どごだろうか?探さないと。中からは活気ある声が聞こえてきているから、間違いなく人がいる。それだけで、少し安心出来る気持ちになってくるな。
「反対かもな。とりあえず入り口探すか」
「はーい」
外壁沿いを歩いたら、最初に到着した反対側くらいに人の出入りがあった。それなりに人の出入りはあるようだ。歩いてる人が見受けられる。とうとう、人間以外の種族などにも会うことが出来るのかと思うとドキドキしてしまう。エルフとか勝手なイメージだと、凄い美人という印象だ。
「んー。なんか鼻の下のびてなーい?」
「なんでもないぞ」
「えっちなお姉さんとか期待してるんでしょー。さいてー」
シルはおとぼけてはいるものの、感は良い方なんだろう。ちょっとくらい、そういうのを期待しても良いではないか。俺だって、まだ男なんだから。
「多分ねー。あんまり良いイメージを持ちすぎるとがっかりしちゃうかも。この世界はねー。向こうの世界に比べると治安とか最悪だよー。奴隷制度とかもあるくらいだしー期待し過ぎるとあまりのギャップにショック受けると思うなー」
「奴隷か…」
「あーまた変な想像したでしょー本当リョウはやらしいねー」
奴隷と聞いたら、ちょっと位は変な想像してしまってもおかしくはないだろう。奴隷とか向こうの世界では居なかったからな。もしかしたら、アンダーグラウンドなところではあったのかもしれないが、一般庶民の俺には全く関係のないことだ。
「それにしても、向こうの世界とは色々違うんだな。知らないことを覚えていかないと、結構大変そうだ」
「まぁねー大変だと思うよーファイト!」
なんて投げやりなやつだ。手引きしてくれなきゃ俺、本当困るっていうのにさ。そんな会話をしているうちに、門の前までやってくる。歩いている人たちがどうしてか、俺とシルのことをジロジロと見ているのが気になるが…慣れてなさそうな人間を見るとみてしまうのかもしれないな。
門番らしき人が居たので、とりあえず入場するのにお金などが必要なのかを聞きに行こう。
「すいません。ちょっと訪ねたいんですけど、街に入るのにお金とかっていりますか?」
「ん?お金とかは必要ない。それにしても珍しいな。銀髪に黒髪か」
門番の人が髪の色を珍しいというので、周りを見渡して見ると確かに黒髪や銀髪の人間というのは居なかった。茶髪や赤髪、金髪などが大多数で俺やシルみたいな髪の色の人間というのは稀な存在のようだ。
「俺も隣の連れも田舎から出てきたんで、あんまり都会のことに関しては知らないんですよ。だから、街のこととか教えて貰えると助かります」
「田舎から出てきたなら、仕方ないか。この街では特に入場料などを取るということはしていない。ここよりも、もっと大きな街になったりしたら入るのにお金が必要なケースもあるから気をつけろ。残念ながらここは都会というほど都会でもない。王都などに比べると、住んでいる人数はかなり少ない」
この街はそんなに大きな街ではないみたいだ。それでも、こうして門番が居て外壁で守られているというだけでも、山で生活するよりは圧倒的に良いだろう。王都か…ここよりも都会で、異世界の大都会というのは一度は見てみたいな。
「この街は初めてみたいだな。【アインバルト】という街になる。それほど、大きな街ではないがギルドや教会、一応必要なものはあるから不便に思うようなことはないはずだ。何か困ったことがあれば、俺はここで門番をしてるから聞きにきてくれても大丈夫だ」
「ありがとうございます。何か困ったことがあったら、色々教えて貰いたいと思うので、宜しくお願いします。あ、ちなみに宿とかって泊まろうと思ったら、どれくらいお金必要になりますか?」
「この街の宿は2つあるな。ヤドリギの宿という宿は、泊まるのに2銀貨。もう一つの宿は少し高級になるからな。癒やしの小宿といって、泊まるのに10銀貨という感じだ。金貨1枚になるな。見る感じ、お金がないならヤドリギを選ぶほうが良いだろうな」
見た目はゴツく、体も大柄。鎧を着ていて俺なんかよりもかなり強そうに見える。見た目は怖いが、門番の人は本当に優しいみたいだ。鎧を着ているせいで、顔は見えないが門番の仕事もなかなか大変そうだ。
それにしても、泊まるのに銀貨2枚。これはどれくらいのお金の単位になるのか全く持ってわからないが…とりあえずやっぱりお金がなければ生きていくのも大変なんだろう。
「あ、あと1つ聞きたいんですが、ギルドに登録すればお仕事を貰えてお金稼ぐこと出来るんですか?」
「ああ、もちろんだ。冒険者ギルドに登録すればクエストを受けることが出来てお金を貰うことが出来る。魔物の討伐であったり、採取クエストなどを受けることが可能だ。自分自身に合ったクエストなどを選択すると良いだろう」
「その…俺たち本当に無一文なのでギルドに登録するのにもお金って必要なんですよね?」
「無一文って大丈夫なのか?初めてギルドに登録するのであれば、確かお金はかからなかったはずだ。一度ギルドの方に行って確認してみると良い。この門を抜けて真っ直ぐ歩いたら教会がある。その教会のとこを右に曲がると、大きな建物があるからすぐわかるだろう」
「ありがとうございます。とりあえず、ギルドの方に行ってみることにします」
親切な人もいるものだなーと思い、説明されたとおり教会を目指して歩くことにする。それにしても、街に来てからシルは先程の元気はどこへやら。元気がない。もうお腹でも空いてきてしまったのだろうか。
「シル元気ないな?どうした?」
「んー大丈夫。なんか色々見られてるから緊張してるだけー」
「まぁ、珍しいって言われてたな。俺とシルの髪色」
「うん。あんまりこうして人が居るとこ来たことないからー」
確かに、向こうの世界に居た頃はほとんどお家に居たシル。街に何度か連れて行ったことはあるが、その時もあまり元気がある方ではなかった。人混みが得意ではないのだろう。
「なんかさー街に来たら色々な種族の人が居るって勝手に思っていたんだけど、人間しかいないな。こう色々な種族の人が入り乱れてるものだと、勝手に思っていたんだけどそうでもないんだな」
「差別とか奴隷とか色々あるからねー。多分、この大通りからそれた道に行けば嫌なもの見ることになっちゃうかもしれないよ」
嫌なものも見なければいけないのか。まぁ、シルは俺をこっちの世界に手引きするのに抵抗があったみたいだから、向こうの世界とのギャップなども多々あるのだろう。
「とりあえず、ギルドに行って登録出来るかどうか話し聞きに行くか」
「うん!」
教会が見えた。凄く大きく立派な教会。十字架が掲げられており、まさに教会という佇まいをしている。元居た世界同様、宗教というのは人の支えになっているんだろうな。そこから、門番の人の言うように右に曲がって歩いたら大きな建物が見えた。やっと、異世界らしくなってきた。ここから俺の冒険がスタートするんじゃないだろうか。そして、ギルドの扉を開けた
ギルドの中というのは、俺のイメージ通りあまり治安が良さそうには見えなかった。大剣やナイフを磨いている、大男も居る。男性が多いと思っていたが、女性も多く露出度の高い服を着ている。冒険者なんだろうか?と思うような、見目麗しい女性たちも居るのだ。この、綺麗な女性達もモンスターと戦ったりするんだろうか。
「すいません。ギルドに登録したいんですけど、大丈夫ですか?」
「はい。ギルドの登録ですね。まだ受付時間内なので、大丈夫ですよ」
受付っぽいところで、受付のお姉さんにギルドの登録をお願いする。とりあえず、お金がかかるのかが一番心配だ。
「登録するのに…お金って必要だったりしますか?」
「登録するのには、お金は必要ありませんよ。初回登録の方は必ずランクがFからスタートになります。Dに上がることになりますと、登録料が必要になります。ランクがF.Eの方というのは、仮登録という形になっておりギルドカードの発行を行っていません。なので、登録するだけであれば特に問題はございませんよ」
良かった。そういうスタイルであれば、ランクが上がるまではお金を貯めていきDを目指していけば良いだろう。とりあえずは、仮登録だけを済ませることにする。そこで1つ問題が出てきた。話をすることは出来ても、この世界の言葉というのを俺は書くことが出来ないのだった。
「私書けるよ~」
そこで救世主のシル様の登場。シルはこっちの住人だけあって、文字は書くことが出来るみたいだ。言葉は話しすることが出来ても、文字は書くことが出来ないのか。不便だ。この世界の文字というのは、まるで象形文字のような形をしており覚えるのはなかなか大変そうだった。
「これでギルドに仮登録を行うことが出来ました。もう時間も遅いので、クエストなどを受けられるのであれば、明日以降が良いと思います」
「ありがとうございます。それじゃ明日またクエストを受けたいと思います」
ギルドにも登録が完了。
明日からお金を稼ぐことが出来るようにはなった。後の問題は1つだけ。
なんとかそれを乗り越えて、明日こうしてまたギルドの受付のお姉さんと話をしてクエストを受けたいものだ。