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異世界への手引き人  作者: kenken
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~正式採用~

 それから1週間。採取クエストオンリーの生活を行った。寝て起きて、ギルドに行き採取クエストを受けて、完遂したら大猫の食堂でエールを飲んでご飯を食べる。

 その生活サイクルを繰り返していくうちに、大猫の食堂の常連のようになり、それなりに知人と呼べる人物などもできた。俺、今まさに異世界を満喫しているという感じだ。身の危険もなく、採取クエストを行っては小金を得る生活。悪くない。


 最初は、草むしりをしに異世界にいるわけじゃないとは思っていたものの知り合いなどが出来てしまうと、こういう生活も悪くないと感じる。俺が活躍しているというよりも、生活のほとんどがシルに頼っているという現状が歯がゆいという感じだ。採取クエストでは、俺の何倍もの働きをシルがしてくれているので助かっている。

 彼女なしに、俺の生活は成り立たないだろう。もうこれは半分くらい、ヒモと言っても良いかもしれない。


 他にも大きな異変というか、元の世界と違った点が一つある。鏡などを見ることもなかったので気づくことが出来なかったのだが若干年齢が若返っているであろうという点だ。シル曰く、こっちの世界に来るにあたって、それに適応した年齢になったということみたいだ。曖昧で良く分からないが、今現在の俺の人相というのは20歳前後くらいになっている。10歳もの若返りに成功していた。これにはおじさんも驚いた。シルの見た目が変わっていなかったため、気にも留めていなかったのだが…10歳近く若返るというのは気分的に少し嬉しい。

 シルと俺は年齢的に近いこともあってか、兄弟のように思われているとのことだ。お兄ちゃんと妹という間柄のように、移るらしくシルとしては少し不満に思うこともあるらしい。俺としては当然、俺がお兄ちゃんであることに不満があるわけもない。


 こんな風に、俺の異世界での生活というのは順風満帆。少しずつだけど、貯金もできるようになっている。当面の目標はというと、採取クエストを行っていき、小金を貯めていき、宿ではなく家を借りることだな。

 家を借りて生活基盤を作っていき、楽しい生活にしたいと思っている。夢踊る異世界ライフというのに憧れてはいたものの、俺は一向に強くなることがない。このまま、採取クエストライフでシルと楽しく生活が出来れば良いのではないだろうかと思っている。


「シル、お前が居てくれて本当良かったよ」

「リョウ何言ってるのー。いきなりーおっさんくさいよ」


 おっさんなんだよ。見た目が若返ったとしても、心までが若返るということはなかったようだ。


「さて、今日も採取クエストで頑張って小金稼いでいこうぜ」

「おー頑張ろうー!主に私が頑張っているだけに思うんだけどーリョウは私に頭が上がらないねー」


 そんなことは言わないでくれ。元いた世界では、お前の面倒は俺が見ていてやったじゃないか。それが今は少し逆転してしまっているだけだ。正式にギルドの登録を行えば、狩猟クエストなどにも挑戦してみよう。もしかしたら、俺の隠れた才能とやらが発揮されるかもしれない。


 早く俺も少しは生活の手助けになりたい。


「シルの採取のセンスというのは、本当にずば抜けてるよな。どうして、そんなにホイホイとわかるんだ?」

「ん~なんだろうねー。ここにあるってのが伝わってくる感じなんだよねー」


 天才の発言だな。凡人にはわからない、天才にのみわかるという感覚。採取の天才という二つ名がつけられても可笑しくはないな。この才能に頼れば、生活に困るということはないだろう。


「今日も採取のクエストを受けたいんですけど、何かありますか?」


 いつも通り、ギルドのお姉さんに採取クエストの受注をお願いする。


「今日は、お二方に正式なギルドの登録をお願いすることが出来ればと考えております。このまま仮登録のままでもよろしいのですが、ギルドの登録をご検討して頂けないでしょうか?もちろん、ギルドに登録されますと、採取クエストの報酬などもアップします。お二方の今までの行動などを加味致しまして、正式にお願いをして問題ないと判断しました」


 ギルドへの正式なお誘いが、こんなにも早くかかるとは思わなかった。基本的に正式採用されるまでは1か月間くらいの、期間が必要という認識が一般的みたいだ。酒場で冒険者のおっさんと話をしているときに教えて貰っていた。


「俺たちはまだ登録して1週間くらいしか経っていないので、こんんなに早く声をかけて下さるとは思わなったです」

「そうですね。一般的には1か月くらいは様子を見させていただくことになるのですが、お二方はこの1週間採取クエストにおいて素晴らしい功績を残していらっしゃいます。薬草に関しては、お二方のおかげで十分な量が街に出回ることになりますので、大変感謝しているのですよ」


 そうだったのか。お二方といわれると若干、抵抗はあるのだが…。ほとんどが、そう隣にいるシルのおかげだからだ。シルが居なければ、残念ながら俺がギルドに正式に採用されるということはなかっただろう。シルが居てくれたおかげで、何とか正式採用にこぎつけることが出来たということか。


「やったな。シル。これはシルの才能のおかげだってことだ」

「へへ。まぁねー。シル様は天才だからさー」


 調子に乗っているが、本当にその通りなので何も言い返すことが出来ない。周りからはしっかりものの兄に、能天気な妹みたいなイメージを持っている人も多いみたいだ。だが、実際のところは活躍しているのは妹のほうだという。悲しい。


「ま、まぁな。本当感謝してるよ」

「もっと感謝してー今日もエール沢山飲みたい」


 最近、シルのおかげでお金が潤っているせいもあり、シルの我儘をいう回数も増えてきてしまっているような気がする。特にエールを頼む回数が増えている。酒乱と言ってもおかしくはないだろう。昨日なんて飲みすぎて、べろべろになっておっさんと歌を歌いながら帰り際にゲロを吐くという醜い有様を見せていた。

 なんとかしないとと思うものの、俺もつい飲みすぎて一緒に楽しく飲んでいたので何も言えない。見た目は若くて可愛いが、中身は存外おっさん臭いのがシルという人物であるといって過言ではないだろう。


「それではお二方、正式にギルドへ加入されるということでよろしいですか?」

「「はい!」」


 二人そろって返事をする。これで俺たちもとうとう正式に冒険者になったということだ。これで楽しい、楽しい冒険を行っていくことが出来るだろう。そういえば、俺装備など何も買っていないな。これからの為に、色々と今日から揃えていかなければいけないな。もちろん、今まで貢献してくれたシルには良い武器や鎧なども買わなくては。そもそも、シルは戦えるのだろうか?それも要相談だな。


 冒険者としてら活動していける。これからの冒険に胸が躍りそうだ。

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