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異世界への手引き人  作者: kenken
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~初クエスト~

 朝目覚めたら、シルが背中に抱きついてきていた為、なかなかすぐに起きることが出来なかった。本当、可愛いな。

 シルも疲れたのかもしれない。もう少ししたら、起こすことにしよう。あんなに歩いて、人が居るところが得意ではないのに頑張ったんだからな。


「シルそろそろ起きろ。多分、もうギルドもやってるだろうから、今日は仕事探しに行くぞ」

「うーん。私、光には弱いからもう少しだけー」

「そんなこと言ってたら、仕事なくなるから。もう違う世界なんだから、そんな甘いことは言ってられないんだって」


 寝坊助なシルをベッドから引きずり下ろして、ギルドへと向かう。お腹は空いているが、昨日のように空腹で辛いというほどではない。夜にしっかりと食べることが出来たから動く分には問題ないだろう。寝起きで眠そうなシルの背中を押して、なんとかギルドに到着。


「仕事を受けたいんですが、昨日登録したばかりで良く分からないので説明お願いしてもいいですか?」


 昨日登録した時に居た、お姉さんが仕事について説明をしてくれる。


「リョウさん、シルさんよろしくお願いします。それではクエストの説明をさせていただきますね。お二方は、登録したばかりですのでEランク、Fランクのクエストしか受けることが出来ません。基本的にEランク、Fランクのクエストというのは採取、街の中でのクエストがメインとなっております。簡単に言ってしまうならば、街のお手伝いさんという形でクエストをこなして貰うのがメインです」


 基本的に簡単なクエストだけしか、受けることが出来ないということなんだろう。この世界に来て3日目になったが、一向にバトルになりそうな雰囲気などない。本当にこの世界で活躍出来るのだろうか?このままじゃ、ろくに成長することなく、年齡だけ重ねていきそうな気がする。


「Dランクになりますと、狩猟クエストなども行うことが可能です。基本的にここからが本格的な冒険者という形になります。きちんとEランク、Fランクのクエストをこなすことが出来ると判断しましたら、こちらからDランク登録を推薦させていただく事になります。きちんとクエストをこなすことが出来なければ、冒険者登録を行うことが出来ませんので、頑張ってクエストをこなしていきましょうね」

「はい。ありがとうございます。とりあえず、Fランクのクエストをご紹介してもらってもいいですか?」

「承りました。それではFランクのクエストを紹介させて頂きます。初めてということなので、簡単にこちらで見繕っても宜しいですか?」

「はい。それで構わないのでお願いします」


 そうして紹介されたクエストが2つ。採取クエストと、お店の簡単な清掃を行うというものである。さてさて、どちらのほうが良いんだろうか。この街を知るという意味では、お店の清掃などを行うのもありかもしれない。街周辺の地理を知るという意味では、採取クエストの方が良いだろう。報酬に関しては、どちらも銀貨5枚だ。2人の宿代とプラス1銀貨という感じだな。


「シルはどっちのクエストが良い?」

「うーん。私は採取クエストのほうが良いかなぁー」

「まぁ俺もどっちでも良いから、今日は採取クエストの方やってみるか」


 シルが採取クエストが良いということだったので、採取クエストを選択した。どちらでも構わないが、お店の清掃などはどんな汚い場所かもわからないのだから無難と言えば無難だろう。


「はい。それでは採取クエストの方お願いさせていただきますね。薬草を10個採取してきて頂きます。基本的に街から少し離れた場所に分布されていますので、行き帰りで歩いて1時間半くらいはかかります。門番の方に、どの辺りにあるのか聞けば方角なども教えて貰うことが出来ますのでお聞きして下さい。10個以上採取してきて貰えれば、プラスで報酬の方もさせていただきますので、多めに採取されてきても問題はございません」


 とりあえず、採取クエスト開始だな。薬草を10個採取するだけで宿代を稼ぐことが出来るんだ。思ったよりも手軽かもしれない。


「さぁ、シル。初めての仕事だ。頑張っていくぞ」

「イエッサー」


 そうして俺とシルの初クエストがスタートする。

 先ずは昨日会った、門番の人にまた挨拶をして薬草が良く生えているという場所を教えて貰う。薬草がどんなものかというのは、ギルドのお姉さんに見せて貰っているので特に問題はない。とりあえず、薬草を集めないことには何も始まらないのだ。


 歩いて少ししたら、薬草が生えているという場所に到着した。大きな木が目印ということで、とても分かり易い場所にあった。さてさて、探していこうと思った矢先にシルが見つけたと大きな声をあげた。負けていらないと思い、俺も探そうとしたら、シルがまた見つけたと声をあげる。


「おいおい。本当に薬草なんだろうな?」

「なになにーひっどーい。私の事疑うなんてー」

「見つけるのが結構大変です。って受付のお姉さん言っていたはずなのに、お前もう見つけてるじゃないか」

「うーん。なんとなくわかるんだよねー」


 ここに来てシル大活躍。シルが見つけたという2個を見せて貰ったが、お姉さんに見せて貰った薬草で間違いない。シルは何かを見つけるという点において、何か才能があるのかもしれない。この世界にはスキルというものが存在しているようなので、シルにもそういったスキルがあるのだろう。


「それってもしかして鑑定のスキルとか、そういったものなのか?」

「うーん。それとは違うような気がするかなぁ。なんかこう…感じるの!」


 なんて曖昧な。何かを感じるってだけで、簡単に薬草を見つけられてしまっては、こっちも立つ瀬がない。何とかシルの半分でも良いから薬草を見つけないといけない。まだ、時間はお昼前。今から1時間くらい探して、お昼過ぎくらいには帰ってご飯を食べたい。


「よし。とりあえず1時間くらい頑張ってお互い薬草を探そうか」

「はーい。シルちゃん頑張るよー」


 そうして、お互い頑張って薬草を探した結果。シル23個。俺2個という残念な結果に終わってしまった。11倍も違うなんて…これはほとんどシルが稼いだようなものになってしまうじゃないか。


「シル…悪いな。俺も頑張ったんだけどさ」

「別にいいよー。てきざいてきしょって言うから気にしない気にしない~」


 シルの頑張りのおかげで、初クエストは無事に完遂した。薬草は本当に見つかりにくいものらしく、短い時間でこれだけの薬草を集めることが出来たことに驚かれた。

 クエスト達成の銀貨5枚プラス銀貨7枚、合計金貨1枚と銀貨2枚という初クエストの報酬となったのだった。


「シル。やったな。これで俺たち生きて行けそうだ」

「だねー。採取クエストだけで何とか私達生きていくことできそうだね~」


 なんだろう。俺たちはこの世界に、草を集めに来たわけじゃない。この世界で活躍するとシルは言った。この世界を救うとか大層なことは考えているわけではないものの、採取クエストだけで生きていこうというのは何か間違ってる。確かに、生活基盤が安定するというのは嬉しい。ゆっくりゆっくり貯金も出来て、いずれは家を借りてのんびりと生活をすることも可能だろう。でも、そんなことをするために異世界に来たのかと言われれば違うような気もする。


 でも、目の前ので嬉しそうな笑顔をしているシルを見ていると、それでも良いのかもなと思ってしまう。シルは笑っている顔が一番だな。


「よーし、今日は初クエストで稼いだんだ。ちょっと豪勢に何か美味しいものでも食べにいこう」

「おーいいねーお酒でも飲みにいこー」

「いや、シルは飲んだら駄目だろう」

「この世界は別にお酒の制限とかないよー。見た目が大きければお酒も大丈夫~」


 本当だろうか。まぁ、お酒を飲むくらいなら問題ないかもしれない。シルは、結構お酒が強そうだしな。俺も1人でちびちび飲むよりも、気分が良い時には誰かと一緒に飲みたいと思う。


「じゃあ、一緒に乾杯するか!まだ昼だから、お酒飲めるかはわからないけどさ」


 受付のお姉さんに美味しいお酒と、ご飯が食べれる場所を聞いて向かう。お昼からでも、お酒も飲むことが出来るみたいだ。RPGと言えば、酒場は定番だもんな。もしかしたら、そこで仲間を集めることが出来るかもしれない。まだ仲間が必要というシーンもないので、特に募集することはないけどな。


「おー、ここか」

「なんかうるさいー。変な人いそー」


 受付のお姉さんに言われた所に来たが、中は昼には似つかわしくなくドアの外まで声が聞こえてくるほどだ。


「どうする?やめとくか?」

「うーん。他のお店わからないしーここでいいよ」


 そうして、2人でお店の中に入る。【大猫の食堂】という名前のお店らしいが、中はそれなりに盛況しておりカウンターの席が空いていたのでそこに座る。後ろではお昼から大宴会をしている、人たちがおり居心地は正直よろしくはない。


「とりあえずオススメとお酒貰えるかな?」

「了解しました。お酒はエールで宜しいですか?」

「エールってお酒が定番なのかな?」

「ええ。冒険者の方は大抵エールをご注文されますね」


 こっちではビールというのはなく、エールというお酒が定番のようだ。一つ今日も勉強になった。


「じゃあ、エール2つ。それとオススメのご飯でよろしくするよ」

「わかりましたー。少しお待ち下さい」


 お店の中の雰囲気は非常に良い。騒いでる人さえ居なければだが。暫くしたら、エールと料理が運ばれてきた。


「じゃあ、乾杯するか」

「うん。今日のシルちゃんの活躍に…かんぱーい」

「ああ、ありがとう!乾杯!」


 そうして、2人でエールを飲んでご飯を食べる。思ったよりも、飲みやすいお酒でグビグビと飲むことが出来た。シルもエールが気に入ったのか、追加で注文をする。後ろの連中も宴会がヒートアップしてきたのか、アルコールが回ってきたのか他の客にも絡んできているという始末。 


「そこに居る~珍しい銀髪と黒髪くーん」


 無視を決め込んでいたものの、とうとうこちらにまで絡んできてしまった。こういう酔っぱらいというのは、本当に厄介だ。酒は飲んでも飲まれるなっていうのを知らないのか。


「シル。メシ食ったら行くか。絡まれたら面倒だ」

「うん~やだねーああいうの」


 2人して無視を決め込む。それでも執拗に絡んでくる酔っぱらい。どうしても、俺とシルの髪の色が珍しいということに対して突っ込んでくる。


「お前ら2人染めてるのか~~?英雄の髪色をしてるなんてまーーた珍しいなぁ~」

「英雄?」


 ついつい反応してしまった。英雄の髪色。そんなことは言われたことがなかったので、聞き返してしまう。


「お前ら~しらなかったのかー。この街を歩いて黒髪や~銀髪なんていなかっただろう~~~お前らみたいな髪色をした英雄が300年前に居たっていうのは誰だって知ってる有名な話しだ~~」


 そう言って酔っぱらいは限界を迎えたのか。眠ってしまった。一緒に連れ添ってきていた連中は、俺達に頭を下げてお店を出て行く。英雄の髪色か…なんか格好良い。うん。悪くないな。だが、残念ながら英雄には現在なれそうにない。悲しい現実だ。


「さーて、俺らも行こうぜ。シル」

「うん。シルお腹いっぱい~幸せ~。エールも美味しかったからまたこよー」


 お互い満足してお店を出る。日が傾いてきており、もう少ししたら夕方になりそうだった。こっちの世界の夕方も、向こうの世界と何も変わらないなと思い。隣にいるシルの幸せそうな笑顔を見てると、明日も頑張ろうと思える。とりあえず、明日はシルよりも頑張って薬草を集めよう。


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