~出会い~
三十路手前。
もう目前になって感じる、この空虚な感じ。周りは○Bやらツイッ○ーなどで結婚報告。幸せそうにしてる中で、俺は誰も待ってない真っ暗な部屋を目指してトボトボと帰宅中。
駅近にあるコンビニで買った、ビールとつまみ、おにぎり。本当、ドウシテコウナッタ。若い時の俺の未来予想図ではこんなことにはなってなかったはず…多分。夏も目前だから、ふといつも帰り道に通る公園で晩酌でもするかと立ち寄ったら、1人の女の子がいた。時間は22時過ぎ。こんな時間に女の子が公園にいるのは不思議で仕方ない。でも、こんな時間に何してるのかとふと声を掛けようかなと思ったが、おじさんに声を掛けられたとなったら大変なことになるかも知れん。
一応、こちらは社会人で立場もある。会社に援交まがいで警察のお世話になったとなってしまったら、間違いなくクビだ。三十路手前で職もなく、家族もいない。何もなくなってしまうなんて以ての外だ。1人ベンチに座り、さきイカを食べ、ビールを飲みながら、携帯で今日のニュースをチェック。
「ねぇ、おじさん」
目の前にしゃがんだ10代であろう女の子が、こちらに話しかけてきた。好奇心旺盛な年頃なのだろうか。
「どうしたの?」
「おじさん。今日泊めてくれない?」
……。少しの空白。この子が俺の家に?いやいやいや。可笑しい。何かあるんじゃないかと疑ってもおかしくはないだろう。本当、最近の子は簡単に他人の家に泊まるのに抵抗などないのか疑ってしまう。
「んー。なんで?」
「泊まるお家がないから。私、家なき子なの」
うん。まぁ俺の家に泊めるのに、何か大きな問題があるわけではない。家に帰っても、おかえりーと笑顔で迎えに来てくれる人も居ない。猫でも飼おうかなと独身OLみたいな気持ちにもなる。
「他人のお家だよね?それもおじさん。何かあるかもーとか危ない可能性もあるから止めた方がいいんじゃない?」
「おじさんは危ない人なの?」
「いや、危なくないしがないサラリーマンだね」
「じゃあ、別に安心だよね?」
この子は危機感というものがないのか。おじさんの家に泊まる=エロいことをされるかもとか普通なら考えるだろ。もしや…いやいや、俺はどっちかというと綺麗でボンキュッボンな女性の方が好きだ。
「えっとねー。知らない人のお家に泊まるとかってなったら、肉体的に求められたりとかするかもしれないからね。自分の体は大切にしなさい」
「別にいいよ?」
待て。えろいことをしてもいい…だと。待て待て待てない。
「まじ?」
「まじ」
まじか。まじなのか。日頃の疲れなどでここのとこ、そういうことは殆どしていない。俺もまだギリギリ20代。そういうことをしたいと思う時もある。据え膳食わぬは男の恥という言葉もあるように、男にはやらねばならない時がある。しかしだ。
「俺はそういうことは求めないけどね」
男とは格好つけたいものであり、目の前の餌に、飛びつかないクールさも大切。後々、後悔することになったとしても流石にこういうことを気軽に受け入れるのは抵抗があるのだよ。
「ふーん。やっぱりね。まぁおじさんのお家行ってもいいよね?」
とてつもない破壊力のある笑顔。俺もしかしたらロリなのか。そんな訳はない。公園の暗がりで良く顔が見えてなかったが、近くに来てよく分かった。この子は可愛い。綺麗な二重に、染めてるのか綺麗な背中まで伸びた銀髪。 こんな可愛い子が、家なき子というのは不思議で仕方ない。美人局…という言葉もよぎったが、女の子が困ってるなら助けるのが男。手を出さなければ問題ないだろう。
「はぁ。仕方ない。くるか?」
「うん!そういうって分かってた。早速行こ」
「待て待て、このビールの空き缶捨ててからな」
これが俺と彼女の初めての出会い。初めて会った時は援交と疑ったりしたが、この出会いのおかげで俺の人生は華やかなものとなる。神に感謝すべきなのか、彼女に感謝すべきなのか…わからない。それでも、この出会いがあったおかげで人生は大きく変わったのだから。