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こちら声優探偵団  作者: MikBug
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最初のアジト発見!


 ヒロ&カイジのCチームは権田原を追って、駅の改札を抜け、電車通りを右に曲がった。


 電車通りと言っても商店が飛び飛びにあるさびれた通りだ。恐らく20世紀にはそこそこにぎわっていた商店街が、年月と共に歯抜けになり、シャッター商店街にもなり切れないような、中途半端な風景になってしまったのだろう。


 寒風吹きすさぶ人通りのない道を歩きながら、ヒロがボソボソと上森と連絡を取る。二人の地味な喋り方もこういう時には周りに聞こえなくて便利だ。



「ヒロです。現在ターゲットを追って...」


 ここまで言うとスマホを確認していたカイジが続けた。


「ウス、現在駅前通りを北東に移動中。駅から100メートルほどの場所です」


『上森です。追跡よろしく。そちらの場所は、こちらでも位置情報を確認しています。ターゲットは電話発信元の目黒通り沿いに向かっているのではないようですから、他にも仲間がいるのかもしれませんね。恐らく潜伏先の一つに行くと思いますから、よろしくお願いします』


「はい、ターゲットは今、右の路地に入りました。駅から150メートルほどの位置です。方角は...」


 ヒロが言うと、再びカイジがスマホを見ながら言った。


「ウス、やや南東方向に折れました。この先は公園と住宅街のようっす」


『了解しました。引き続きよろしく』


 二人は30メートルほどの距離を取りながら権田原を追う。道の両側には営業してるんだか、いないんだか、微妙なスナックがポツポツと並んでいる。


 離れてはいるが、黒服のサングラスに似合わない赤いバッグなので、とても目立って追跡は楽だ。


「これ、目立ちすぎて犯罪者失格だよな」


 ヒロがボソッと言うとカイジも、


「オウ、小林旭アニキにも怒鳴られるよな」

「お前さっき菅原文太とか言ってなかったか?」


「そうだったか? 基本漢気おとこぎあればオレ的には OK だからよ」

「お前そっち系?」


「そっち? どっちだ? 右か? 左か?」

「いや、まあいいけどよ...」


 どうやら二人とも見た目よりは、いい加減な性格らしい。

 そんな会話をしながら追跡を続けていると、権田原が右側の建物に入るのが見えた。


「ターゲット、右側の建物に入りました。これから建物の前を通過して情報を送ります」


『了解。気をつけて』


 上森からの言葉を聞きながら二人は建物の前を通過しつつ、スマホを建物の方に向けて画像を撮り、分室のサーバーに転送した。


「マンションの名前はフォレストヒルズ。入り口奥にターゲットらしき姿が見えました。エレベーターに乗るようです」


 ヒロがそう言うと、カイジがスマホを確認しながら言った。


「ウス、南町7ー5ー12の建物です」


『こちらでも位置確認しました。サーバーに送られた画像とストリートビューで建物も確認。現在の不動産情報を見ると、何室か賃貸が出ているようなので大まかな間取りも確認しました。ワンルームから2DK程度の部屋が12室あるようですね』


「この先に小さな公園があるようですから、そこで待機するっす」


『現金を受け取ったわけですし、この後、かけ子の目黒通り沿いに移動すると思います。こちら犯人と接触のチャンスを狙えるよう、巨匠きょしょうに登場していただこうと思います。配置まで30分ほどかかると思いますが、待機していてください』


「その間に動きあったら連絡します」


『ハイ、よろしくお願いします』


 二人は連絡を終えると、少し先の小さな公園入り口の階段に座り込んで雑談を始めた。


「巨匠も登場か...」

「オウ、今回、力入ってるよな」


 巨匠は声優界の重鎮じゅうちんで先のスズメちゃん役、小笠原さんの旦那さんでもあり、芸名は黒木健。古くから悪役系の声を得意とし、現在放送中の複数のアニメ番組で多元宇宙の支配者から、セレスト共和国の魔導士まで多数の声をこなしている。自分でも劇団を主宰しゅさいして演劇に没頭しつつ、若手声優も育てている精力的な人物だ。一説では白三プロの影の出資者では? という話もある。


「でもよ、人から聞いた話だけど、巨匠って実は、アソコが巨大なほど小さいから、実は巨小だって説があんだってよ」

「それ、ホントかよ? 危ねえな、おい、これ分室に聞こえてんじゃねえの?」


 イヤフォンから上森の苦笑まじりの声が聞こえた。


『聞こえてますよ〜。全部記録してますけど、今んとこハサミ入れ*ときます』

「危ねえ〜。カットよろしくお願いいたします!」


(注:ハサミ入れ=昔は録音物は磁気テープに記録していた。そのため、不要な音をカットしたりする場合、テープをハサミでカットして処理していた。転じて、不要部分のカットを『ハサミを入れる』という風に呼ぶようになった)



「ウス、じゃあ真面目な演劇論な。『カッコ良いみじめな殺され方の演技法』について」

「おう、お前また殺されんの?」




 と、まあ二人がそんな地道な演劇論を交わしてしばらくすると上森から連絡が入った。


『巨匠、堀井さん、氷室ひむろさんの3人が移動完了し、近くの車でスタンばってます。ターゲットが出て来るまで待てるかどうか分かりませんが、スケジュールが許す限り待機しますんで、引き続き監視お願いします』


「了解っす。堀井さん、氷室さんとは美女も登場っすね。よろしくお伝えください!」

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