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こちら声優探偵団  作者: MikBug
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権田原がやって来た


 二人が辺りを見回しながら擬似恋人会話を続けていると、駅方向の公園入り口からガタイのいいサングラスの男が噴水の方に向かって来るのが見えた。


 高野は梶宮との会話を続けつつスマホを操作して文字を送る。


テキスト送信者/高野:駅方向からターゲットらしき男が接近


『了解、経過を見守ってください』


 上森の声に緊張する二人。サングラスの男はその横を通り過ぎて行く...


テキスト送信者/梶宮:今、噴水の横を通り過ぎて小笠原さんの方へ向かっています


『権田原の可能性が高いですね。駅方向という事は電車の可能性かな...』


テキスト送信者/高野:そういう気がします



ーーーーーーーーーー


 高野たちがそんな会話をしていると、サングラスの男は辺りを気にしながらベンチに座る小笠原の背後に近づいた。


 ほどなく、二人のイヤフォンには聞きなれない男の声が入ってきた。少し体を引きめて会話に聞き入る二人...


”長坂トミ子さんですか? 長坂コウジさんのお婆さんの...”


 いきなりの妙な言い回しに二人は吹き出しそうになり、


「声優学校で言葉の使い方覚えた方がいいよね」


 とコッソリささやきながら立ち上がり、噴水の前でお互いの写真を撮るフリをしながらスマホをズームにして、遠くにいる権田原の姿を写した。幸いにも撮影時のシャッター音は噴水の音にかき消され、ほとんど聞こえない。


「上森さん、高野です。今、遠方からですがターゲットの写真を撮影してます。そちらのセキュアサーバーに転送しますから確認お願いします」

『分かりました。怪しまれないように続けてください』


 二人は代わるがわるスナップ写真を撮ってはそれをサーバーに転送する。遠方ではターゲットが赤いバッグの中の紙幣を数え終わったようだ。少しの会話の後、小笠原からペンを渡された権田原が、


 "ご・ん・だ・わ・ら、え〜とゴンの字は〜〜、ゴンゴン..."


 と言ったのを聞いて二人とも吹き出してしまった。


「う、ウケル! 自分の名前くらい書けるようにしとかないとねえ」

「フェアリーちゃんな世界から来て日本語が書けないのかも知れないわ!」

「黒の背広に品のないネクタイ、ガタイの良いスポーツ刈りで職業フェアリー。新しいキャラ誕生かも知れないな!」


 そんな事を言っていると、


 “それではお金の受け取りも終わりましたんで、私はこれで...”


 と言う声がして、権田原は向きを変え公園の出口へと歩き始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『追跡開始!』:



「ターゲットが移動を開始しました。これから梶宮さんと追跡します」

『了解です。そちらの場所はスマホの位置情報からも逐一ちくいち確認します。気付かれないようにね』


 上森の声を確認しながら、二人は権田原を追って公園を出た。


「ターゲットは公園を出て通りを駅方向に移動中」


 高野がそう言うと梶宮はスマホのコンパスソフトとマップを眺め、


「移動方向は北西です。500メートルくらい先が駅になりますね。やっぱり電車移動かしら...」


 と言いながら、


「繁華街へ近づいていますね、人が増えて来そうですから上森さんとの連絡は音声モニターをやめてテキストメッセージにします」


 と、スマホのメッセージソフトを操作し、分室のサーバーにテキストを送りつつ、先ほどの恋人設定の会話を始めた。


「アキラ君の飼ってた猫ってどんな子?」

「うちはアビシニアン!」


 二人はそう話しながらもメッセージソフトをたくみにあやつる。サーバーの画面には二人からのテキスト書き込みが次々に現れた。


テキスト送信者/高野:ターゲット駅前商店街に入りました


「あ、アビシニアンって友達のうちにいるけど、凄く人懐っこいよね!」


テキスト送信者/梶宮:マップだと駅の改札は北と東の2つ、車利用なら道はさらに1キロほど先に甲州街道


「そうなんだ、うちなんかお客さんが来ると、すぐにゴロゴロ言いながらひざの上に乗っちゃってさあ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『CDチームも行動開始』:



『上森です、マップで見ると、駅前の道はかなり入り組んでいるので、そのどこかに車が待っているとは考えにくい... 電車利用の可能性が高いですね。喫茶店で待機中のCチーム北、Dチーム駅前広場に移動してもらいます』


「わぁ〜、カワイイ! 私もアビシニアン飼いた〜い!」


テキスト送信者/高野:ターゲットは相変わらず赤のバッグ所持


『了解、先ほどの公園での写真も各チームのスマホに転送しました』


「今度うちのアビシニアン見に来て!」


テキスト送信者/梶宮:尾行続けます


 会話とテキストが入り混じり何だかパラノイアな状態だ。


「ウンウン、名前は?」

「アビちゃん」


テキスト送信者/高野:駅舎見えて来ました


「まんまですねぇ〜!」

「でもアビちゃんって名前はポピュラーらしいよ」


テキスト送信者/高野:ターゲット、北口をスルーしました


『了解、Cチームはそのまま待機、Dチームは東口路上に移動』


 二人が情報をやり取りしつつ猫会話を続けていると、権田原は東口改札方向へ道路を横切った。


テキスト送信者/高野:ターゲット、東口に入るようです


『了解しました。Bチームはそのまま道路を直進してターゲットをやり過ごして任務完了です。高野さん、梶宮さんはお疲れ様でした。追跡はCDチームが引き継ぎます。高野さんは今夜、研究科の授業。梶宮さんはソナスタのアフレコで見学兼ガヤの参加ですね』


テキスト送信者/高野:OK です。お疲れ様でした

テキスト送信者/梶宮:それでは失礼します


 二人はそのまま改札を通り過ぎると、追跡を次のチームにゆだねるのだった。


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