ゲロゲ〜ロな3人組
『あし、あし...ゲロゲ〜ロ...頭割れる...』のフレーズが10分ほども続いただろうか? ようやく平常心を取り戻し始めた3人は、シゲルの落とした箱を見た。
箱は落ちた勢いでフタが開き、中からは緩衝材のプチプチと共に、白い小さな箱が沢山飛び出して来ていた。
「な、なんだよコレ???」
「金塊... じゃなさそうだよなあ?」
「伝票に『Secure P-Lock System x2000』って書いてあるっす。エックス2000って、ロボットアニメっぽいっすよね、オェオェ...」
「で、その英語はなんだよ? 金塊じゃないんなら、ダイヤかルビーか?」
「いや、そんな感じじゃねえよな」
「と、とにかく開けてみるっす」
ショウは、そう言いうと、床に転がる白い小箱の一つを取り上げ、フタを開けて見た。
「なんすかね、これ?」
そこには厚手のビニール袋に包まれた10センチほどの大きさの金属製の何かが入っているようだ。
今度はアキヒコが小箱を取り上げると、そのフタに書かれている上書きを読んでみた。
「『PAD-LOCK』って書いてあるぞ、なんだ『ピー・エー・ディー・エル・オー・シー・ケー』って?」
「知るかよ、んなもん」
シゲルは、ショウが持っている小箱を取り上げると、中のビニール袋を力任せに引きちぎった。
中身はやはり金属製... よく見るとそれには数字の刻まれたダイヤルのようなものが4個ついている。
「なんだこれ? 鍵じゃねえのか?」
アキヒコとショウもシゲルの手元を覗き込むと、口々に言った。
「そうっすよ、これ錠前っていうんすか? 物置とかのドアにかけるやつ...」
「そうだそうだ、南京錠ってやつじゃねえのか? なんでそんなもんが入ってるんだよ?」
「いや、まだ他になんか入ってんのかもしんねえだろ。おら、アキヒコ、ショウ、他の箱も開けて見ろ」
シゲルはそう言いながら、次の箱を下ろしてフタを開け始めた。
アキヒコたちも次々と箱を下ろしては、フタをベリベリと開け、中身を引っ張り出して行く。
たちまち部屋の中は、梱包用のプチプチと小箱と南京錠で溢れかえり、足の踏み場もない状態になってしまった。
「オイ、アキヒコ、そっちの箱の中身はどうだよ?」
「こっちかよ、全部おんなじだよ。南京錠だ、南京錠!」
「ショウ、そっちはどうだよ? なんか違うもん入ってねえのかよ?」
「こ、こっちもおんなじっすよ。見てくださいよ、全部...」
「うるせえ、ドアホ! 見なくたって分からぁ、南京錠だってんだろ?」
シゲルは怒鳴り散らした。
「さっきの伝票の『x2000』って、ロボットの名前じゃなくて、もしかして南京錠が2000...」
「ショウ、テメエはっ倒すぞ! オレだって、なんかそんな気がしてきてたんだ!」
「おい、シゲル、これオレたち…」
「うるせえうるせえ! 騙されたってんだろ? ああ、オレだって分かったよ!」
「先輩! やっぱり怪しかったんすよ、あのオッさん!」
シゲルはその言葉にブチ切れて、ショウを蹴っ飛ばした。
ショウは床を2回半ほど転げると、口を押さえ、
「オェオェ〜! 吐く吐く〜!」
と叫びながらトイレに駆け込んで行った。
アキヒコも、
「ダメだぁ〜〜! オレ、精神的ショックで二日酔いの頭痛が限界、ちょっと寝かしてくれぇ...」
と、床にばら撒かれたプチプチと南京錠を布団代わりに引っくり返ってしまった。
「チックッショ〜! あのオヤジの野郎! と、とにかく電話してとっ捕まえたらブン殴ってやる!」
シゲルはスマホを取り出すと、三枝の会社に電話した。




