グラフで分かること:
「なるほど、書き込み数が時々ポーンと跳ね上がって、しばらくすると徐々にゼロになりますね。で、また突然増えて徐々にゼロになる... これを繰り返してますよね?」
「そうなんです。で、これに調査依頼案件にある犯行日と思われる日の横軸位置に、赤いマークを入れます。すると...」
画面を見ていた上森は驚いて言った。
「犯行日の次の日くらいから書き込み数が増えてる!」
「そうです。で、その書き込み内容を調べてみると、高額の買い物をしたとか、ウナギを食べに行ったとか、東京デゼニランドで遊びまくったという内容が続くんです」
上森は少し呆れて言う。
「ハァ〜、つまり犯行で騙し取ったお金を使って遊んでいる様子を書き込んでいると?」
「その通り!」
「なるほどねえ〜! 誰かを騙しては金銭を捲きあげて、豪遊を自慢。お金がなくなると、また犯行に及んでいると...」
「そういう事だと思いますね」
「うーん、悪質ですねえ」
「確かに。だけど迂闊と言えば、迂闊です。お金が入った事なんて黙ってれば疑われる事もないのにね」
「確かにねえ。すると今までは、たまたま逃げ得をしていたってわけだ」
「そう思います」
「そうかー、これはやはりお灸をすえてやった方が良さそうですねえ」
「そうですね。そのあたりの判断は上森さんにお任せしますが...」
「でも社長に報告したら絶対『コテンパンにやっつけろ!』って言うでしょうから...」
上森は笑いながら言った。
「社長、元正義の味方ですからねえ〜!」
「そうそう。ま、社長の意見は置いとくとしても、こちらでこれだけ情報も分かって来たわけですし、最終的には逮捕されて頂くとして、明日以降はちょっと世間の厳しさも知っていただきましょうかね」
「そうですね、明日は1934の食事会でしたよね?」
「ええ、そうです。長時間ターゲットと接触しますから、色々とこちらに有利な情報も引き出せるだろうと期待してるんです」
「なるほど。一応今の段階で FaceBook や Twitter で分かる雰囲気があります」
「雰囲気?」
「ええ、書き込みの内容を見ているとターゲット3人の中にも力関係の序列があるようなんです」
「ふむふむ」
「まず一番偉そうにしているのがシゲル、かけ子ですね。次がアキヒコ、受け子です。それから今回の案件では具体的な動きはないと思いますが、恐らく出し子のショウ。このショウが序列最下位、恐らく年齢も一番下の使いっ走りって感じのようです」
「なるほどなるほど!」
「あと、リコって犯罪に関わってない子は、どうもアニメファンのようで『星に変わってお仕置き』だの『真実はいつも一個!』とかしょっちゅう書いてますね」
上森は笑いながら答えた。
「フム、それは色々とネタに使えるかも知れない情報だなあ...」
「オヤ〜? 上森さん、目が輝いてますよ!」
「え? 斯波さんだって盛り上がってるじゃないですか!」
二人は思わず苦笑してしまった。
「ヨシ、明日は小野寺さんに三枝祐一役で登場してもらう予定でもありますし、ここは1934で一芝居打つ事にしましょう」
「いいですね。あそこの個室なら、こちらの自由にできますし」
「では高野君はギャルソン(給仕)、梶宮さんはレセプショニスト(受付)で入ってもらいましょう。特にギャルソンは執事役の実地練習にもなりますし、一石二鳥です」
「そうですね。高野君は最近、腐女子なお姉様に人気が出始めてますし、本格的なギャルソン修行は今後の芸のプラスになる事間違いなしですね」
「白三プロの新規事業で本格レストランなんてのも夢じゃないですね」
「それこそ『分室』の存在理由の『新規事業開拓』そのものですね!」
二人は笑いながら明日の細かい作戦を練り始めた。




