犯人の余罪?:
翌日の午後、上森と斯波は分室でコンピューターの画面を見ながら話し合いをしていた。
「昨日、みんなが撮った写真と調査依頼が来ているファイルの人物像を比べてみると、幾つかのファイルで共通する部分があるように思うんです」
斯波は Mac に表示された Excel のファイルリストを指しながら上森に言った。
「それは他の案件にも、昨日の詐欺犯たちが関わっている可能性があるって事ですか?」
「そう思います。もちろん法的な証拠があるわけではありませんが、叩けばかなり余罪が出るように思いますね。他の案件に出てくる外見的特徴とかですね...」
斯波は Excel の案件ファイルを開きながら説明を始めた。
「例えばファイル『S-104』にある小柄な男とガタイの大きいスポーツ刈りの男、それからファイル『E-005』にある電話の男のしゃべり方の特徴、ファイル『K-313』にあるメガネをかけた学生風の男と小柄なネズミっぽい男の組み合わせ、なんかです」
「なるほど、似ている部分がありますね。しかし、それだけだと人物や犯行の特定には至りませんよね」
「そうです、で、色々調べてみたんですが...」
そう言いながら斯波は、昨日キラウラや高野達の隠し撮りした画像を Mac の画面に出し、
「この辺の写真ですね、これをですね、最近流行りの顔認識機能で読み取らせるんです」
「ほうほう...」
「で、さらに FaceBook に登録してある人物名で、昨日のターゲットに近い名前をピックアップして、その投稿写真を比べてみたんです」
「なんだか、大変そうですね」
「まあ多少は... で、例えばですね、シゲルは『シゲル』『茂』の他に、『シゲ』とか...アキヒコは『アキヒコ』『昭彦』なんかの他に『アッキー』とか、そう言った可能性のありそうな名前を適当にピックアップして、その人物のプロフィール写真なんかをダウンロードして、顔認識機能で見比べるんです」
「なるほど...」
「そうするとですね、恐らく犯人グループのメンバーではないか? と思われる FaceBook のアカウントが浮かび上がって来たんです」
「それは、凄い! しかし、昨日の今日でそんなに調査できるものなんですか?」
「ヘヘ、実は最近 Excel や Apple Scriptのスクリプト書きに凝ってまして、それでキーワードを入れるだけで怪しい人物の画像やテキストの投稿日時をネットから自動的に拾って来て、一覧表にするソフトを書いてみたんですよ。なので、膨大なデータを調べてはいるんですが、私がやったのは幾つかのキーワードを入れただけなんです」
「ふーむ、時代は進んだもんですねえ」
感心する上森に、斯波は続けた。
「それで、絞り込んだアカウントの書き込みと、調査依頼のファイルにある犯行日時の関係をグラフにしてみると、面白い事が分かるんです。まず、これを見てください」
斯波はそう言いながら、マウスを操作した。Mac の画面には表とグラフが表示される。
「これは Excel のグラフ機能とかですよね?」
「そうです。横軸が日付、縦軸が FaceBook や Twitter への書き込みの数です」




