5年後 ~30番街にて~
朝日が窓を通して龍の顔に当たる・・・
「龍!朝ごはん出来てるよ!」
凛が龍を呼ぶ声が聞こえる。彼は重たい体を起してリビングに向かう。
「おはよう、龍。」
隼人はすでに朝食を食べ終えていた。龍は椅子に座った。
「おはよう・・・。」
彼らはなんとか研究所を抜けだし、暗黒大陸の<ダークガンダ王国>で暮らし始めた。彼らが居るのはこの国で一番治安が悪い30番街南東。だが、あの研究所よりは全然マシだ。
今日はこのダークガンダ王国の守護者になる任命式がある。彼らは今日のために力のコントロールを勉強して、働いて金をためてここで5年を過ごしてきた。そして、今日はその努力が報われる日だ。
守護者というのは、いわゆるこの国の警備隊だ。だが、ただ警備をするだけでなく、各国から集まったに依頼をこなして金を貯めて暮らしている。住む場所は城の周りの塀の中にある家か、城の中にある寮。どちらを選ぶも自由だ。
「もう時間だから、行くか?」
「そうだな。」
「そうね。」
彼らは城に向かう扉へと向かって歩き始めた。
城に着くと長髪で気の強そうな女性・短髪で大人しそうな女性・黒いマントの人がが立っていた。
「第七将軍の翠仂神奈よ。藍音凛はあたしについてきなさい。」
翠仂将軍はそう言うと城の中に入って行った。凛は「じゃあね。」と言うと後に続いて行った。
「第三将軍の萬璽鴜紗です。壊鳥隼人君は私についてきてくれますか・・。」
萬璽将軍はおどおどしながら、城に向かう。隼人は龍に手を振ると後に続いて歩いて行った。
「・・・・・。」
黒いマントの人は何も話さない。
「あの・・・、貴方は将軍ですか?」
黒いマントの人は横に首を振った。そして、ようやく口を開いた。
「将軍は今忙しいので代わりに来ました。」
声だけでは男か女かわからない。それ以来その人は口を開くことはなかった。俺は城の中の奥のほうに連れて行かれた。そこには黒い扉があった。
「それでは・・。」
黒いマントの人は何処かに行ってしまった。龍は戸惑いながら扉を開けた。
ガチャッ・・・
その部屋は畳が敷かれ、障子の先には庭があった。そこには一人で茶を飲んでいる男が座っていた。
「ん・・?おお、お前か例の新人は。」
そう言って龍に笑いかけた。
「・・・・・。」
黙っている龍にその男は怒った顔で近付いてきた。
「おい。まず、お前が名乗って頭下げろや。」
さっきの笑顔からは想像できないような顔で俺の頭をつかんだ。
「く・・黒風龍です。宜しくお願いします。」
そう言うと男は龍の頭から手を放してまた笑顔になった。
「第一将軍の武良政蒼助だ。ヨロシクな!」
すると、急にものすごい勢いで走ってくる音が聞こえた。そして、武良政将軍の頭に向かって蹴りをいれた。よく見ると短髪で男の雰囲気を感じさせる女性だった。
「痛って~!何すんだ、簾麻!」
武良政将軍の言葉を無視して龍の方を向き、先ほどの顔からは想像できないような笑顔で話しかけてきた。
「第一副将軍の櫻牙簾麻よ。よろしくね。」
確実に武良政将軍を無視していた。龍はとりあえず「宜しくお願いします。」と言って頭を下げた。櫻牙副将軍は将軍の方に向き直ると、またあの顔で、「てめぇ、なめてんのか。あ゛~?他の将軍はちゃんと出迎えに行ってるっていうのに何でてめぇはいかねぇんだよ。」
一体どっちが将軍なのか・・・武良政将軍はさすがにビビっていた。(まあ、あれで怖がらない人はいないだろう。)
「だってよ・・何で新人の出迎えなんかしなきゃいけねんだよ・・。」
言い訳だった・・・。櫻牙副将軍に聞こえないようにしたのかすごく小さな声量だった。
「どうした?そんな顔して・・・。」
櫻牙副将軍は心配そうに龍を見ていた。「なんでもないですよ・・・。」うまく笑えない。(あきれたなんていえねぇし・・・。)
「あたしのことは簾麻でいいからな。」
龍はうなずいて、二人に頭を下げて部屋を後にした。
龍は城の寮に入ることにした。隼人や凛は周りにある家を買うと言っていたが、少し金は掛かるが出来ればあまり人がいないところの方が彼の性に合っている。
「依頼でも受けに行くか・・。」
龍は部屋に鍵をかけて依頼部屋に向かった。
ガチャッ・・・
扉を開けるとそこにはいろんな人がいた。一から十までの軍隊の人たちがそれぞれ専用の依頼板を見ている。龍は一軍だから、一と書いた依頼板のところに行こうとしたが、彼の目の前に知らない男たちが来た。
「よう・・。お前が一軍に入った新人か?俺らは一軍の四官と五官だ。ここの依頼受けれるのは一年ぐらいここにいて俺たちみたいに実力をつけてからにしな。」
(いかれた奴らめ・・・・。)
「なら・・、俺があんたらに勝ったらいいってことだよな・・・。」龍は相手が身構える前にそいつの腹に一発ぶち込んだ。ぐあっ!向こうは腹を押さえて動かない。もう一人の奴が殴りかかってきた。が、(遅いにもほどがある)。龍は一瞬のうちに相手の後ろに移動して、首に一発喰らわした。
「俺に勝つなんて千年はえよ・・・。」
龍はそう吐き捨て依頼板を見た。彼は背中に化け物を見るような視線を感じていた・・・。




