すべての始まり
ある研究所・・・
「368番!」
コンクリートで囲まれた殺風景な部屋に響く冷たい声。
「実験終了だ・・・」
その男に368番は手をひかれて部屋に戻される。
ここで行われている実験は<守護霊>を一人の体に何体も契約させるというものだった。この世界のすべての人々は魔力を持っている。その中で強い魔力を持っている者が所有しているものを<守護霊>という。
守護霊は一人2体以上との契約は体の消滅に繋がるため、その確率が低い子供のころにこの実験が行われる。
368番は生まれてすぐにここに連れてこられた。ここにいる子供は全員親に捨てられたり、売られた奴らだった。彼は特別な親に売られたらしく連れてこられたときから実験のための体づくりをさせられた。
この研究所には約500人の子供がいる。大体の子供は4体の守護霊を契約させて実験を一時中断される。しかし、368番は異例で5体目の契約に成功した。今は身体を消滅させないように慎重に調整を行っている。だが、5体目の契約後368番は感情が崩壊し、数人の子供の命を奪った。そのため、俺は一人部屋に移された。今俺は何も感じることができず、誰にも心を開けなかった。
「368番・・・」
しかし、その中でなぜか心の開ける奴らがいた。
「よっ!久しぶり!」
「ハロー!」
一人は男254番で向かいの部屋にいるいつも皆の中心にいるような奴だ。もう一人は女477番で隣の部屋にいる新しい奴が泣いていたりしているのをなだめたりする優しい奴だ。
「今日は何する?」
「なんでもいいよ・・・」
「あんたはいつもそうだね(笑)」
こんなやり取りをいつも繰り返している。
数時間後・・・
「もうそろそろ帰るね。」
「じゃあな!」
368番は手を振って見送る。そして二人の姿が見えなくなった後、眠りについた。
眼覚めて向かいの部屋を見てみると誰もいなかった。話している研究員の話が聞こえてきた。
「368番以外の子供を全員の一斉実験なんてな。」
「所長がいうにはめんどうになったとか。」
(あいつら・・・何言ってやがる・・。)
バーンッ!!
衝撃的な破壊音とともに無理矢理に壊したのは368番だった。
「黒帝・・・」
368番は手に珍しい模様の弓を持っていた。その弓で彼は研究員を討った。「ぐぁぁぁああッ!!」彼らはその場に倒れ動くことはなかった。その足で彼は実験室に向かった・・・。
368番は実験室に着くと物陰からこっそり様子を見ていた。全研究員が集まっていた。彼がそこで見たのは衝撃的な光景だった。
「あああああああああああーー!!」
実験室に響く悲鳴。そしてその子供は消滅した。何人もの子供が同じように消滅していった。彼は吐き気がして意識が飛びかけていた。しかし次の子供はあの二人だった。
「助けてーーー!」
「放せーー!」
実験台に縛られる二人・・・368番は体が動かなかった。実験が始まった。
「ああああああああああーー!!」
頭が割れそうだった。目から涙が溢れてきて息苦しくなってきた。
「・・ろ。・・めろ。やめろおおおおおおお!!!」
「な!なんだ!!」
ガラスを割り現れたのは368番だった。彼の周りは黒色の光が包んでいた。そして4人の彼の守護霊が実験室を破壊し始めた。研究員、子供たち、368番の目の前で守護霊がありとあらゆるものを破壊していった。皆はその光景に見入っていた。研究員は彼の守護霊を掴まえようとしていたが、そのたび守護霊に反撃を受けていた。彼の周りを包んでいた黒い光は消えた。368番は我に返り今のうちに実験中だった二人を安全な処に移動させた。
「死ねーーーーーー!!」
いきなり彼の背後から研究員がナイフで斬りかかってきた。しかし・・・
キーーン!
彼の手には黒色の弓が握られていた。彼は相手に向かって矢を放った。368番は不思議な感覚だった。彼はまるで最初から使い方が分かっていたかのように。先ほど研究員を殺した時も同じような感覚だった。今まで守護霊の解放をしたことのない彼にとって不思議でならなかった。
「368番!!」
その声は254番だった。254番は彼に向かって走ってきた。研究員が254番に拳銃を向けていた。
「来るな!」
368番は無我夢中で254番のもとへ走った。
バーーン!!
避けることができた・・・と思ったが368番の肩に激痛がはしった。肩から真っ赤な血が流れてきた。
「おっおい・・・大丈夫か・・?」
254番の声は震えていた。実験のすぐ後だったからか、それとも彼が肩を撃たれたのは自分の所為だと思っているからか。だが368番は「へ・・平気・・だから・・・。」そう言った。だがそんなことを言ってるひまなどなかった。彼らの後ろには拳銃を持った研究員が立っていた。
「終わりだ。」
だが、ドサッ・・・守護霊が彼らを助けたのだ。実験室を見渡すとそこにはもう1人の研究員も立ってはいなかった。守護霊たちは368番に笑顔を見せると彼の体に戻って行った。
他の子ども達はそれぞれで固まりこれからの事を話していた。368番、254番、477番は368番の部屋に行って今後どうするかについて話し合った。
「この研究所を出よう・・・。」
唐突に368番が言った。
「そんなこと不可能に決まってんだろ!それにたとえ出られたとしても行くところがない。」
254番の意見は正しかった。この研究所は海に囲まれた場所にある。それにここを出たことのない彼ら知り合いなど、いるわけがなかった。
「でも・・私はここにいるより・・いい。」
477番は震えた声で答えた。きっと仲が良かった奴らがいなくなってショックを受けているのだろう。
「とにかく、ここを出ることを考えよう・・・それからのことはその時考えればいい・・」
254番は少し納得がいかないようだが承諾してくれた。
「名前を決めよう。番号じゃ怪しまれる。」
「そうだな。」
「そうね・・。」
「じゃあ477番は女の中で一番美しく、勇ましい・・そして藍色のように静かで綺麗な声をしているから・・・凛・・藍音凛」
その名前が気に入ったようで笑顔でうなずいた。少し照れくさそうに顔を赤くしていた。
「254番は隼のように天を駆け巡る破壊の鳥・・・隼人・・壊鳥隼人」
「悪くはない。」そう言って納得してくれた。
「じゃあ368番は力強く何色にも染まらない孤高の龍・・だから龍だな。」
「名字は黒風にしましょ。あの時の黒いオーラ、風みたいだったから。」
凛は少し不安げに言った。藍音凛、壊鳥隼人、黒風龍3人の名前になった。
確実にこの世にはないような話ですが
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