第7話:絶望
「密花……お前、超能力が使えるって言ってるけど、具体的にはどんな超能力なんだよ?」
「おや、彼方君は僕が超能力を使える事をまるで疑わないんだね」
「この状況で誰がそんな馬鹿な嘘をつくかよ。つくならもっとましな嘘、つくだろ」
「はは、全くだ」
密花はそう言いながら頭を掻く。黄色い髪の毛はタンポポみたいに柔らかい。
「まあ、実を言うと自分でも、分からない。大体の事ができると思うけど、それがいつもできるとは限らない。その時その時で使える力は変わる。そんな感じだよ」
「はぁ」
こいつ、どんだけチートなんだよ。絶対に都合のいい時に都合のいい能力が出るだろ。
「で……俺達はいつまでここにいようか」
「そうだね。ここにいれば安全、しかし近いうちに奴らはここを襲ってくる。かといって今すぐにここを出たとして、安全を保証するモノは何1つない」
「ここにいれば、警察か何かが助けに来てくれるかも知れ「それはないよ」
彼方の言葉を遮る密花。微笑んで、楽しそうに。
「やっぱり彼方は幸運だけど不運だね。知らないんだろ、この現象の規模の大きさを、さ」
「規模の……大きさ?」
「少なくとも、日本規模」
大きければ、世界規模。
ふふふ、と密花は笑う。
「まるでファンタジーさ。地球に突然怪物が侵略してきましたーってさ。……けどさ、これがね、現実なんだよ」
「現実……」
現実。彼方は思いを巡らせる。
こんな現実、あり得るのか? 事実、俺はまだその怪物とやらをこの目で確かめていない。密花の出まかせの可能性だって、見間違いの可能性だってある。信じるものか。誰が、信じるものか……。大体、何だ? 怪物? 本当にこの世にいるわけないだろう? そんな突拍子もない力を持った生物、地球の法則的にもあり得ないじゃないか。
とたとたとた。
天井から謎の音がした。外を見ても、ただの曇り空。雨は降ってなさそうだが……もうすぐ降り始めるのだろうか?
「まずはこの現実を受け止める事から始めないとね。で、それから考えよう。生き延びる事を」
「生き延びる……」
「うん。もし本当に世界規模でこの異常が起きているとしたら」
「したら?」
突然、声をあげて笑う密花。
「言うわけないじゃん。言ったら……絶望して、泣いてしまうよ」
もし本当に世界規模でこの異常が起きているとしたら。
「安全な場所なんて、どこにも残ってないのだろうか……」
彼方は密花に聞こえない程度の声で、呟いた。
とたとたとた。
天井から謎の音がした。外を見ても、ただの曇り空。雨は降ってなさそうだが……もうすぐ降り始めるのだろうか?
そう、もうすぐ降り始めるのだ。