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第4話:●●

「うわあああああああああああああああああああああ」


 部屋で1人、叫んだ少年がいた。何もない、何も変わらない、何も荒らされていない、平和、いつもと、ついさっきとも何も変わらない空間で。

 そんな空間でなぜ少年は頭を抱えて部屋を転がりまわっているのだろうか。1人阿鼻叫喚、布団の上で転がりまわる。毛布を掴み、虚空に投げつける。壁を殴りつける。机を蹴飛ばす。本、木くず、舞う。


「うわあああああああああああああああああああああ」


 周りには誰もいない。家にも、周りにも、……この町にも。

 誰もいない。


「うわあああああああああああああああああああああ」


 叫んで、怯え、現実から逃げようとし、しかし逃げられずにいて。

 また、叫んで怯える。

 声は響く。だが何も反応する者がいない。

「うーっ、うーっ、……何でみんな消えたんだよ、なんで僕だけ、僕だけ勝手に助かったんだよ……。」

 頭をかきむしり、布団を頭から被る。

「怖い……」

 物音1つしない。時間が止まっているかのようだ。

「僕は……何で逃げ切れたんだ。何であの声が聞こえたんだ」


 ――青星昴あおほし すばる。●●を持って●●●に待ち伏せをするのだ。●●●が来たら……それを力の限り●●●●。そしてそれを……


「うっ」

 昴は口を押えて身体を丸めた。冷や汗と涙がぼろぼろ落ちる。

「僕は姑息だ……。勝手に1人で助かって、誰にもそれを教えなくて、僕は姑息で、……ううう」

 口の中、変な味が消え去らない。生臭い味が消えない。鉄に近い味が。

 生肉の味。

「嫌だ……何でこんな事に……」

 布団を投げ捨てた。昴はお腹に息を吸い込み、震えながら、涙の筋を頬に作りながら。

「何で、みんな死んでしまったんだよ――!」

 左腕が緑色の鱗に覆われ、手には強靭な爪を持った、そんな姿をした“人間”、青星昴は……死のうと思った。

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