エピローグ1-1
エピローグ 1
「なんか、ひさしぶりに歩いてるって感じね」ネイリンはいった。
「わたしなんか、寝てばかりいましたからね、身体にこたえます」プライが息もきれぎれにいう。
「休みながら行こう。疲れたらいってね、プライ。ラパルクに持たせるから」
「ええ。でもまだ大丈夫です」肩に背負った荷物を一度背負いなおしてプライがいう。
「なんでおれが持つんだよ。プライは寝て体力を温存してたんだから、逆に持ってもらいたいぐらいだよ」ラパルクがぶつぶつといった。
「あんたが持ちなさいよ、無駄な筋肉つけてんだから。っていうか、今持ちなさい」
「おまえなぁ……」
「この感じ、すっごいひさしぶりな感じがします」プライが微笑む。
「そうねぇ」ネイリンもしみじみいう。「たった二日ぶりなのにね。なんか、濃い二日だったなぁ」
「濃いなんてもんじゃねぇよ。もう、ほんとに大変だったぞ」
本当は、大変なんてもんじゃなかった。二日で二人も死んだのだ。しかもすでに母親を亡くしている友人の父親と伯父がだ。
だが、そのことに真正面から向き合うと、もう言葉が出てこないので、二人はわざとかるくいった。
「お役に立てなくて、申し訳ありません」プライが頭を下げる。
「しょうがないよ、病気だっ」
ネイリンの言葉をせき止めてラパルクがいった。
「お役に立たなさすぎだよ。おまえが寝てたせいで、おれは普段使わねぇ頭使うはめになったんだぞ」彼は眉をしかめる。「まだ頭の奥が変な感じがするよ」
「はあ……」プライがしょげる。
「気にしなくていいよ。さっきもいったけど、プライが起きてても、事態はかわりようがなかったんだから」ネイリンは歩きながらいう。
「そりゃイボーが逃げてくれたから、プライがいなくてもすんだけど、もし逃げてなかったら、一働きしてもらうところだったぞ」
「そうね。でも、ま、理詰めでイボーさんを追い詰めるよりは、なんか逃げてくれてよかったかも」
「なんでだよ。捕まえた方がいいに決まってるだろ」
「ううん、ま、そうかもしれないけど。でもいいじゃない、とにかく終わったんだしさ。すっきりしたよ」
「すっきりするかしないかで物事決めるな」ラパルクが横にきて、ネイリンの後頭部をはたいた。
「あ痛っ」その衝撃で、あることが頭に浮かんだ。「あ、そんなすっきりもしてないか」
「ん?」
「だって、ほら。結局石があったかどうかは分からなかったわけじゃない? せめて、イボーさんが持っていったにせよ、ジーナスさんが隠したにせよ、あるってことが分かったんなら、まだすっきりもしたと思うけど、あるのかどうかすら分からない状態のままじゃん」
「まあ、それは最初に話を聞いたときとなにも変わってねぇな」ラパルクが、足元にあった石を蹴り飛ばした。「でもそんなもんなんじゃないのか、伝説って? っていうか、そういうほうが、きっといいんだよ。分かっちゃうよりさ」
「まあね」
「石、見たいですか?」プライがネイリンの顔を覗き込む。
「そりゃ見たかったけど……」
「じゃ、どうぞ」プライが、ネイリンの胸元に向かって、なにかを投げた。
「わ、ちょちょちょ」
投げられたものを受け取ろうと手をだしたが、すっと手に収まらない。そのなにかは、ネイリンの手の上で何度か跳ねた後、やっと手の上に収まった。
ほっとしてから、醜態をさらしてしまったことに気づいた。顔が赤らむ。
腹が立った。このタイミングで石を投げられたら、あの石だと思ってしまうではないか。
「もう、いたずらはやめてよ、プライ。……でもきれいね、これ。いつ拾ったの?」
「拾ったんじゃありません。それですよ、『再命の石』」
「……え? 何の冗談?」
「冗談じゃありません。あの部屋に入って、鏡の中から取り出してきたんです」
ついネイリンは立ち止まった。ラパルクも同じように止まる。プライが二、三歩進んだところで振り返った。
ネイリンとラパルクは顔を見合わせた。
「嘘だろ?」ラパルクが訊く。
「いえ、本当です。ご主人に挨拶に行くっていったとき、あの部屋に寄ったんです。そのとき出して、ご主人のところに持っていったら、君のものだといって、くれました」
「……えええっ!」
ネイリンとラパルクはもう一度顔を見合わせてから、異口同音に叫んだ。