第二章 13
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主が大広間をでてから、それまで黙っていたカーテが口を開いた。
「あの――昨夜は、トーナス様や、ネイリン……様たちが、ここにおられたんではないのですか? それとも、ずっとここにおられたわけではないんですか?」
確かに、その問題はあるのだ。もしトーナスなり、某かが、このケースを開けたのなら、ネイリンたちが、気づいていておかしくないのだ。
――あたしは寝てた時間があるけど……。
「ラパルク。あなたもずっと起きてたわけじゃないよね?」
「ああ、寝たよ」彼も、ネイリンがいわんとしたことが分かったみたいだ。「三人ともが寝ていた時間があるかどうかは分からない」
「念のためきくけど、トーナスさんは……」
「おれが知るかぎりはきてない。ほかの人も同じだ」
もし、二人が寝ていて、ジーナスだけが起きているときに、誰かがこのケースを開けにきても、気づくだろう。信じていないと公言していたとはいえ、この家の秘密につながるケースをだれかが開けようとしていて、静かにしているジーナスではないと思う。
では、三人ともが寝ていると隙を見計らって、誰かがこのケースを開けにきた?
そのケースも、考えづらい。
そもそも、このケースを開けるためには、主の持つ鍵が必要だからだ。
考えれば考えるほど、このケースが開けられた可能性は低い。
本当は、先ほどから気づいていたのだ。だが、あの部屋の中が見たいから、気づかない振りをしていたネイリンである。
ただ、あの部屋以外に、トーナスがいなさそうなことも確かなのではあるが。
「ネイリン」ロッテに呼ばれて振り返ると、彼女はいつの間にか移動していて、大広間の隅にある、あのケースの前で中腰になって立っていた。「ちょっと……」
小走りで彼女に近づき、横に並ぶ。
「どうしたの?」
「これを見てください」
指差された場所を見ると、そこは鍵だった。いわゆる南京錠である。
「鍵がどうかしたの?」
「最近使われた形跡がありません。ほら、ホコリが溜まってる」
いわれてみれば、確かにそうだった。南京錠の表面だけではなく、鍵穴の中にも、ホコリは溜まっているようだった。ならば、このケースの中の鍵も使われていないし、あの部屋にも、誰も入っていないことになる。
つまり、もうあの部屋に入る必要はなくなってしまった――。
「でも、見たいですよね。あの部屋の中」ロッテが、無表情にいう。
ネイリンは、内心を読まれた気がして、ドキッとした。
「まあ、うん……」
「このまま黙っておきましょう」
「うん」
主が、ゆっくりとした足取りで、大広間に戻ってきた。




