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第二章 6

      6


 プライの部屋には、当然のことトーナスはいなかった。

 続いて入ったネイリンの部屋に、トーナスがいないことを確認した後、ネイリンは二人と別れプライの部屋に戻った。三人で行動する必要もない、二人が部屋を見回っている間、プライの様子を見ておいてやろう――そう思ったのだ。

「やはり二階にはいないようです」見回り終えたロイが、部屋に入ってくるなりいった。

「そう……」

「どこに行ったんでしょう……」ロイが、心細げにいう。

「とりあえず、下に行ってみましょう。カーテさんが、見つけているかも」

「下にも、いなかったようなんですが」

 二階にもいなかった。下にもいなかったら、いったいどこに行ったというのか。

 だがこの時点で、ネイリンは、さほど不思議にも感じていなかった。

 不自然ではあっても、大の大人だ。心配することはない。ただ、ここにきて、気になりだしたことはあった。好奇心が再燃した、といった方がよいか。

 そう、自分たちには、まだ探していない場所がある。

 三人は、階下に向かうため、廊下を戻った。その曲がり角。

 あの鏡が封印された、あの部屋。

 この部屋は、探してもいなければ、話題にも上っていない。

 ネイリンは、しかしその部屋のことを指摘しなかった。この部屋は、開かないことになっている。だから、トーナスがいるはずもないことになっている。そして、ネイリンたちは、この部屋についてなにも知らないことになっている。まだ、ふれるタイミングじゃない。だが、トーナスがこのまま現れなければ、この部屋に自然と関われるチャンスがでてくるかも――。

「なあ、ロイくんか? この部屋探してないけど、」

 ネイリンは、肘で思いっきりラパルクのわき腹を突いた。

「う!」ラパルクが息をのむ。

「え?」ロイがきょとんとした表情でラパルクを見上げ、その後心配そうな顔をした。「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」

「うん、平気平気」ネイリンが答える。そして考えた。この後、どのような立場をとったらいいのだろう。この部屋については知らないことになっていたのに。

「この部屋にはいません。ここ、開かずの間なんです」ロイがなんてことないようにいった。

「え、あ、そうなんだ」彼のいいかたに、ネイリンは肩透かしを食ったような気分になった。

 この部屋は、タブーじゃなかったのか。

 ロイが、心配そうな顔でまだラパルクを見ていた。

「大丈夫大丈夫。行くよ、ほら」ネイリンは、青い顔をしながら腰を曲げているラパルクの肘に自らの肘を絡ませて、引っ張るようにして歩きだした。この部屋の前には、あまりいたくない。

 大広間の吹き抜けの部分まで行くと、下からロイを呼ぶカーテの声がきこえた。ロイが小走りで階段を下りた。二人っきりになったのを気に、小声でラパルクに文句をいった。

「ちょっと、なんであの部屋のこときいたのよ。そのことは、あたしたち知らないことになってるんだよ」

「馬鹿だな。だからこそ、きかないと不自然になるだろ。なんでこの部屋は調べてないのに、この人たちはそのこと気にしないんだろうって、ふつう変に思うぞ」

 いわれてみれば、たしかにそうだ。ロイの様子から、まだおかしくは感じていなかったようだが、そのうち疑問に思うかもしれない。この場合は、彼のいうようにきいといたほうが、あの部屋のことを知らないものの行動としては自然なのだ。

「なんか、あったかいものでも飲みたいね。紅茶とか……」

「おい、あやまれよ。じゃなきゃ、あのこと帳消しな」

「小突いてごめんなさいでした」


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