第一章 12
12
プライの部屋に行くと、彼は先ほどと同じ体勢で静かに眠っていた。おでこに手を当てると、幾分熱が下がっている気がする。これなら、もう一回たくさん食べて薬を飲めば、かなりよくなるのではないだろうか。
ネイリンは肩を軽くゆすりながら、小さな声で呼びかけた。
「プライ、ご飯持ってきたよ。プライ」
彼は薄っすら目を開け、目をしょぼしょぼさせた。
「プライ、気分はどう?」
ネイリンを認めると、思いのほかしっかりとした表情で口を開いたが、声がでないようだった。でも、必死になにかをいおうとしているような気がした。
「なに、プライ。なにかしてほしいことあるの?」
不安そうな表情だった。ネイリンにも、こういった経験はあった。子供のころ、熱などをだしたとき、自分はもうこのまま死んでしまうんじゃないだろうか、なんて考えて不安になったものだ。プライも今、そんな状態なのだろう。普段は大人びたプライだが、こんな子供っぽいところもあるんだな。そう思って、おかしくなった。
「大丈夫よ、プライ。きっと疲れがでたのよ。お薬ももらってきたし、すぐよくなるから、安心してね」
プライは安心したのか、見ようによっては諦めたような表情にも見えたが、とにかく、目を閉じた。
「あ、だめだめ、ご飯食べないと。食欲なくても、食べないと元気でないよ。はい、起きて」
プライはなんとか身体を起こすと、食事と薬を押し込むように口に入れると、また倒れるように眠りについた。
大人びているとはいえ、子供なんだよなぁ。
考えてみると、今までの行程は強行軍にすぎた。これからは、プライの体力などにも気を配りながら進まないといけないな。
ネイリンは、プライの、少し汗ばんだ髪の毛を撫でた。
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