第一章 11
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口数は半端ではなかったが、しゃべりながらでもカーテの仕事ぶりはそつがなく、皿洗いもあっという間に終わり、プライの食事も、なかなかの手際で彼女は作った。
メニューは、手軽に食べれるようにとスープだったが、さまざまな食材をすったものが入っている、栄養十分のものだった。あとは薬と水差し。それを持って、ネイリンは厨房をでた。
皿洗いなどをしながら、ゆっくり二人だけでカーテとはなせた。それはよかったと思うが、しかし、あまり深い話などはできなかった。
できれば、石のことや、あの部屋のこと。それらを取り巻く人間模様なども、ロッテ以外の人間の口から聞きたかったが、そううまくもいかないだろう。突っ込んだことを聞きたいとは思っても、子供のロッテとはなすようにはいかない。
しかし、ロッテがまったくの一人っきりではなさそうだ、と分かったことは、友達として素直にうれしかった。あの人がそばにいれば、あんなのが父親でも――。
「また勝った! 見たかい? 今のショット。奇跡のショットだね」
大広間に入ると、ビリヤード台の前で、キューを掲げて飛び跳ねているジーナスが目に入った。
――バッカじゃないの……。
ネイリンはため息をついた。
「おお、お嬢さん、今の見たかい?」
「見てません」ネイリンは、目も合わせず、その場を通り過ぎようとしたんだ。
「よかったら、お嬢さんもどうだい? べつにすることもないんだろ?」
「あたし、プライにこれをもっていかないと……」
そういって、階段前で振り返ると、疲れた顔のラパルクが目に入った。
主はああだし、兄は婚約者といるし、娘はお勉強、でジーナスは暇しているのだろう。ラパルクはそんな彼に捕まっているらしい。
ふだんなら、そんな相手に合わせるように殊勝な男ではないのだが、招かれざる客という立場から、彼なりに気をつかった結果なのだろう。ただ単に、慣れない上品な環境に圧倒されて、いつものペースが乱れているだけかもしれないが。
――ちょっとかわいそうかな。
「あ、でもプライの様子が大丈夫そうだったら、少しぐらいなら……」
といいかけたネイリンの言葉にかぶせるように、ジーナスはいった。
「お、やるかい? いいねぇ、よし、じゃあテリル連合とガードナー親子の対決といこうじゃないか」
「え、ロッテ、さんも呼ぶんですか?」彼女は今勉強中のはずだ。
ジーナスはしばらく考えた後、いや、こっちは私一人でいいや。ハンデだハンデ、と気の弱そうな表情でいった。
ジーナスの立場、性格を現す表情に思えた。