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プロローグ1

 アドリーム  ―境界に佇む者達―



   鍵は智の血を継ぐ者に託すべし。

   鏡中の宝は時満ちしころ現わる、

   扉を開けし真の智者に託すべし。

   邪な心が欲するとその命はない。



 プロローグ 1


「一人かい?」開いて見せた通行許可証に判を押しながら男がいった。役人である。

「ええ、まあ……」

 部屋の中、窓から入る太陽の光とテーブルを挟んで向かい合っていた。といっても、役人のほうは座っている。

「そうか。最近物騒だからねぇ、せいぜい気ぃつけなよ」

 仏頂面で、最初に見たときには怖そうな人なのかな、と恐るおそる出市の意を伝えたのだが、顔に似合わず優しい人らしい。

「はい。ありがとうございます」そこで思いついていってみた。「ところで、鏡の中の魔女さんて知ってますか?」

 そういうと、彼は奇妙な顔をして見せた。

「鏡の中の魔女? いったいなんの話だ?」

「ああ、いえ、知らなければいいんです」そういって、通行許可証を懐にしまった。「それじゃあ」

 立ち去ろうと背を向けると、背後から声がかかった。

「あんた、ずいぶん長い剣を持ってるんだなぁ」

「ああ、これ?」振り返ると、その反動で剣が大きくゆれた。背丈ほどもある極端な長剣である。「ええ、長すぎてとっさに抜けないんですよ」

 彼は呆れたように息を吐いた。

「あきれたな。とっさに抜けないじゃ、突然モンスターに襲われたときおっつかないだろうに」

「大丈夫です。街の外ではずっと抜き身で持ち歩きますから」

「抜き身? それじゃ、モンスターに襲われるころには腕が使い物にならなくなってるだろうな」男が笑う。

 それには直接答えず、笑顔で手を上げると、入出市管理室からでた。

 廊下は談笑、あるいは商談をしている商人たちで賑わっていた。彼らの間をぬって歩き、建物からも出た。ふうっと息を吐く。振り返り見ると大きな建物だ。なにせ、輸入、輸出する物資を一時保管、管理する場所でもあるから、そのスペースを抱える建物は、自然大きくなる。こんな大きな建物は、生まれ故郷のテリルにはもちろんなかったから、ただその中に入っていただけでも気疲れしてしまった。

 ――ここは、なんでもかんでも大きいなぁ。

 実際この街は、すべてにおいてスケールが大きかった。メインストリートの幅から、街の中心にある広場、宿屋も酒場も市長宅も大きかった。

 大きさだけではない。この街に住む住人の数にも驚かされた。いったい何人いるのか見当もつかない。なにせ、故郷の村では祭りのときでさえ見たことがないような人ごみが、朝や夕方といった移動時間のたびに、メインストリートを中心としたいたる場所で見られるのだ。この街についたばかりのころは、身の施し方が分からず、人通りが落ち着くまでじゃまにならないところに避難していたものである。

 だが、そんな圧倒されっぱなしだったこの街とも、しばらくのお別れだった。

 これから彼女――鏡の中の魔女に会いに行かなくてはいけない。

 ――でも、本当にいるのかなぁ。

 半信半疑ではあったが、しかしここまできたら、とにもかくにも行ってみるしかない。どうせ、ほかにすることもないのだ。

 肩を揺らし、背中に担いだ長剣を一度揺らすと、市外への門に向き合った。この門も、実に巨大であった。

 ――ボク一人のためにわざわざ門を開けてもらうのはわるいなぁ。

 そう恐縮したが、実際には門自体についている小さなドアが開けられただけだった。小さすぎて門番に会うまで気づかなかった。

「あ、えっと、トーイ・ウォルマーです」

 名前を告げ身分証明書をだしたが、門番は興味なさそうに一瞥すると小門を開けた。

「あれ、いいんですか。見なくて。さっき、ちゃんと判も押してもらったんだけど…」

 門番はめんどくさそうに、いいから早く行けとあごをしゃくった。

追い立てられるようにトーイが門を通ると、すぐ門が閉められた。

 ドアが閉まったとたん、それまで聞こえていた威勢のいい業者や商人たちの話し声、歌声、怒鳴り声などがすっと消えて、とたんに静かになった。

 こんなにさびしい出発は初めてだった。ため息を一つ吐き、トーイは門に背を向けた。

 街を囲む巨大な石壁や門の向こう側はにぎやかな都会だが、こちら側には何もなかった。門を背にして眼前に広がるのは、見渡す限りの平野と、生まれ故郷から続いていたものとは比較にならないほどの広い道。

 久しぶりの孤独感が襲ってきた。すぐに道連れができた旅だったから、考えてみれば、一人になるのは村を出て以来のことだった。

 一瞬、頭にアーカスやジャンクといった仲間たちの顔が浮かんだが、すぐに頭を振り、それらを打ち消した。

 ――もう彼らは一緒じゃないんだから、気を引き締め直さないと。

 ――行こう、まずは鏡の中の魔女だ。

 トーイは門を背にすると、歩きはじめた。

 剣を鞘から抜いておくことは忘れていた。


 きっかけは、ウテラと名乗る女性と出会ったことだった。

そのとき、トーイは街中央にある大きな広場の噴水端に腰掛けていた。ともに旅をしていた仲間、アーカスやジャンクと別れたばかりで、途方にくれていたのだ。これからどうしようと思っていた。といっても、目的がないのは、村を出たときからのことだったのではあるが。

 トーイが、村を出ようとはじめて思ったのは、ずいぶん前のことである。

 幼少のころ、生まれ故郷のテリル村に、伝説の勇者とともに戦った魔法使いの末裔、と名乗る男がやってきたことがあった。彼のような人物が村にくるのは初めてのことではないらしく、彼は当たり前のように村長の家に滞在し、そして村の子供たちを毎夜のように村長宅に招くと、勇者がドラゴンと戦ったときのことを歌うように語って聞かせたのだが……。

 端的にいえば、トーイは彼の話に影響を受けたのである。

 今から約二〇〇〇年前。人間とモンスターの間で大きな戦争が起こった。それまでも、出会うたびに個々で戦っていた人間とモンスターではあったが、そのときの戦いは、お互いの存亡をかけるほどの、それは激しいものであったらしい。

 戦争とは、現象としては各場所、各地域で同時多発的に起こる戦闘のことである。戦闘の目的は相手の殲滅にあることも多々あるが、しかし戦争の場合、多くは違う。その戦争においてもそうで、その目的は、今後この大地を支配するのはどちらなのか、それを決定させ、互いがその結果を認識することにあった。

 さまざまな場所で戦闘があった。力は均衡していて、どの場所でも、どの部隊にも、勝ちがあり、負けがあり、制圧があり、死があり、喜びがあり、悲しみがあり、負傷があり、病があり、飢餓があり、倦怠があり、不安があった。

 空前の規模の戦争である。決着はなかなかつかず、そんな状態が何年も続いた。

 やがて生き物たちは毛先まで疲弊し、いつしか当初の目論見を忘れ、この泥沼のように続く戦争を、心の底からただただ忌み嫌うようになっていった。

 誰もが、何よりも決着をほしがっていた。

 機は十分に熟していた。

 厳密には勝敗に関係しない、しかしながらその争いを象徴する一つの戦いが、その戦争の勝敗を決定する。そういった空気が、各所、各地域に染みるように蔓延したころ、魔法使いを伴って、長剣を持った一人の男が、衆人環視の「無」から突然現れ出でた。

 彼は、瞬く間に人間たちの信頼を得、リーダーとしてドラゴンと戦い、そして勝利した。

 太古の昔から覇権を競った異種間に、支配被支配にも似た絶対的な関係が出来上がった。

 その後ももちろん、出会えば人間とモンスターの間に戦闘は起こった。だが、それはどれも小さいものであり、基本的には、モンスターは人間を避け隠れるように生き、人間は、我が物顔に大地の恵みを支配できることになった。

 人知を超えた電撃的な登場、そして勝利に、彼はいつしか神の使いと信じられるようになった。

 ドラゴンを打ち破った彼は、以後、信仰の対象になった。

 今では、誰もが「勇者の教え」の信者である。もちろん生まれ故郷の村人たちもそうだったから、あるときは教会での説教で、またあるときは枕元での夜伽にと、その話はことあるごとに聞かされており、もちろんその話はトーイも知っていたが、勇者とともに戦ったという魔法使いの末裔を自称する男の話しぶりがあまりにも真に迫っていたため、トーイはまるで自分がそこにいたかのような錯覚を覚え、そしてふと我に戻ったときには、よし自分も大人になったら人のため、世界のために働こう、そのために村を出ようと幼心に決意したのである。

 だが、長ずるにつれ、その心境に変化が生じた。

 自分は勇者とは違う、同じことはできない、との思いから当初の目的は半ば形骸化したのかもしれない。しかし不思議と、その手段であった村を出る、という選択肢は確固としたものとして心の内に残った。

 トーイの育った村は僻地で、伝統的に村を出る者の極端に少ない土地だった。トーイも外の世界を知らずに育ち、それまでは丸太で囲まれた村が世界のすべてであり、またそれを疑問にも思っていなかったのだが、魔法使いの末裔を名乗る男の真に迫った話で、外への興味が一気に育ったらしかった。

 ならば、トーイが村を出た理由のほとんどは、外の世界への興味ともいえ、だからいざ出てしまうと、当座の目的をなんとなく探しながら当てもなくふらつく、ということになってしまう。

 それは、アーカスと名乗る男と出会ったことでも変わらなかった。

 アーカスは不思議な男だった。彼とは村を出てすぐに出会ったのだが、初対面のときから彼は調子よく、気がついたときにはもう、トーイの子分、というポジションに納まっていた。

子分だから基本的にはついてくるだけである。だから目的のない風来坊が二人になっただけのことだった。

 その後トーイは、ジャンクという男と出会い、そして一緒に彼の生まれ育った村を出た。彼の現状に心を痛めたトーイは、行動を共にするつもりだったのである。だが、まずアーカスが抜け、それをきっかけにするようにジャンクとも別れることになった。

 寂しくもあり、悲しくもあったが、ジャンクの目的は、つまり彼の物語に属するものであり、自分もまた独自の物語を生きなくてはならない、きっとそういうことなのだろう、彼との別れを、そうトーイは理解することで消化した。

 だが自分の物語とは――。

 肝心のそれが見えず、分からなかった。自分が何をするべきなのか。

 一人になったのを機に改めて考え、悩み、そして途方にくれていた。

 ウテラと出会ったのは、そんなときだった。

 彼女は、当座の目的を携えていたのだから、彼らと別れすぐに出会ったというのは、運命的ともいえる幸運と捉えることもできるのかもしれないが――。

 今になってそう思う。だが、そのときのトーイは、そんなふうには考えられなかった。

 ウテラとの出会いは、トーイに混乱をもたらすものだった。

 彼女は一言目に、こういったのである。

「お探ししました。あなたが、勇者の使いの方ですね」


 二〇〇〇年前に、後に勇者と呼ばれることになる男が、一人の魔法使いを伴いこの大地に姿を現した。彼はドラゴンを倒し、戦争を終結させた。これは伝説でもあり、また史実としても扱われている。このときの男は、神の使いとして認識されていて、信仰の対象になっている。

 彼が救った後の世界でも、人間は幾度もの危機に直面した。そんなとき、姿を現し事態を収束させた者たちがいた。この者たちが、トーイたちが信仰する「勇者の教え」でいう、勇者の使いである。

 神の使い、と呼ばれないのは、「無」から生まれた勇者とは違い、人間として生まれてくることにあるのだろう。特別な存在であることに違いはないが、神の使いである勇者とは一線をおいて存在を認知されている。

 ところがこの勇者の使い、人として生まれてくることと、世界が危機に面したタイミングで生まれる、ということぐらいしか知られていない。過去に勇者の使いと呼ばれる人間は四人も生まれたとされており、その存在が一般にも知られていて、また誰もが勇者の後に生まれているにもかかわらず、その実態はベールに包まれており、なかなか市井に伝わってこないのである。

 しかし、勇者の使いが、ある特徴を持っているらしい、ということだけは、実しやかに噂されていた。勇者の教えで公式にそう教えているわけではないが、そのことは半ば周知の事実として認識されていた。

彼は人として生まれ、人として育つ。彼が勇者の使いとして認識されるまで、多くの人間と触れるのだから、彼の実態の一端でも人の口を介し伝わってもおかしくはないだろう、そう考え人々は、噂に過ぎないともいわれるその非公式情報を本当のことだろうと信じているのだが、しかしその一方で、ではその特徴とは具体的にどんなものなのかと聞かれると、答えられるものはいないのだった。

 なぜ実態が見えないのか。一説では、勇者の使いが良からぬ企みを持つ者の手に落ちないように、勇者の教えの総本山であるアキラルが、全力でかん口令を敷いているせいともいわれていた。

 勇者が世界を救った後の危機は、国対国、思想対思想、主義対主義といった、モンスターを介しない、そのため複雑で、絶対的な善悪の判別が難しいものであった。

 勇者の使いをその手におさめた陣営がその戦いに勝ち、体制を獲得し、歴史を我が物にするのであれば、さまざまな団体がその存在を血眼になり探すだろう。

 だが、先に探し出したほうが覇権を取る、ということになってはいけないので、勇者の使いの証拠となるある特徴だけはアキラルが全力で隠している、というのが実情らしかった。

 勇者の使いが持つ特徴――。

 神の使いである勇者は、非常に長い剣を持っていた、といわれていた。アーカスと出会った日、彼はそこに目をつけ、勇者の使いもまた長い剣を持っているのではないか、その長い剣を持っているトーイは  ――そんな理由ともつかない理由で、トーイこそが勇者の使いではないか、といったことがある。

 今はどうやら時代の変革期らしい。それは片田舎に育ったトーイにも感じられたことだった。穏やかに変わっていくのか、それとも劇的に変わるのか。もし後者であるなら、既得権を得ている者と持たない者の間で軋轢、争いが起こることも考えられる。ならば勇者の使いが今生まれていることもあながちありえないことではない、とは思うのだが――。

 しかし、トーイはアーカスの考えを、笑って否定したのである。

 自分はそんな器ではない。それに、勇者の使いと呼ばれるほどの人間の特徴は、先天的なものではないか、ともトーイには思えたのだ。噂ではあるが、一般的にもそう思われている。

 ただ、気になることがないでもなかった。それはほかならぬトーイの持つ長剣だった。これは旅立ちの朝、家に伝わるものだ、もって行けば何かの役に立つだろう、と父が持たせてくれたものなのだが、これがなかなかに特殊なものだったのだ。

 ウォルマー家は鍛冶屋で、トーイもそのせがれとして分かることなのだが、この剣、その圧倒的な長さを支えるだけの厚みがないのである。この薄さでは、ふつう強度は期待できない。だが使ってみると、強度も切れ味も問題なく、いや、それどころか信じられないくらいによく切れもしたのだ。

 少なくともトーイの知識からすると、ありえない、あってはいけないほどの規格外の名剣であった。

 なぜ、そんなものが家に伝わっていたんだろう――と大いに不思議に感じもするが、だからといって、 自分が勇者の使いではないか、などとはとても思えなかった。それとこれとは話がべつだ。

 だが――出会いがしらにいわれたのである。

 ――お探ししました。あなたが、勇者の使いの方ですね。

 いきなりそういうぐらいだから、彼女なりにそう思う理由があり、彼女なりの確信があったはずだ。しかし、トーイがうろたえながらも、おそらく違いますよ、と告げると彼女はそれをすぐに信じ、呆然とした顔を見せると、そのままゆっくりと気を失った。

 あわてて受け止めたトーイは、その腕の中で眠ったように気絶している彼女を見て、戸惑うとともに、とにかく自分はこの人の力になってあげなきゃ、と理由もなく思ったのだった。

 といって、当面、どうしてよいのか分からなかったから、とにかく気を失った彼女を噴水縁に寝かせると、顔辺りを手で仰いだり、持っていた布を水で湿らせ、それをおでこに乗せたりした。

 そんなことをしながら、トーイは見るともなしに彼女を観察した。

 市井の人間とは違う、どこか高貴な感じのする、うすく上品な顔立ちであった。だがよほど長い時間旅をしているのだろう、お世辞にも綺麗な格好とはいえず、全身にうっすらホコリをかぶっている印象だった。

 そんな彼女を見ていたら、なんだか切なくなった。

 だが、同情ではない気がした。では、この感情はなんだろう。

 その感情の正体を見破るために、顔を見続けていたら、突然彼女が、がばっと起き上がった。

 事態を把握するため彼女は周りを見回し、そしてトーイに気がつくと、顔を真正面から見た。トーイはぼんやりとした表情で見返した。その愚鈍全開の風情に、彼女はなんら取り乱すことなく、寝起きのような風情で伸びをした。

「おはようございます」トーイはいった。

 彼女はちらとトーイを見、はあとため息をついた。

「やっぱり違うなぁ」肩をすくめ、微笑んだ。「さっきはそうだと確信したんだが」

「……すいません」なんとなくトーイは謝った。

「いや、いいんだ。べつにあなたが悪いわけじゃない」と彼女はここで、腿の上にある布に気がついた。「ああ、手を煩わせてしまったようだな。申し訳ない」

「ああ、いえ」

「迷惑をかけた。名乗っておこう。私はウテラ、という。苗字はない」

「ぼくはトーイ・ウォルマーです」苗字がないとはどういうことだろう、と一瞬疑問に思ったが、すぐに疑問自体を忘れた。「もう大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。たぶん疲れがたまっていたのだろう。最近、ろくに休息をとっていなかったからな」

「そうですか。あ、そういえば、勇者の使いがどうとかおっしゃってましたが……」

 さすがにそれは覚えていた。なぜそんなことを思ったのか、ずっと訊きたいと思っていた。だがウテラは、それに対しては口をにごした。

「いや……深い意味はないんだ。というより、疲れが白昼夢でも見せたのだろう。うわごとだ」

「そんな感じには見えなかったですけど……」

 トーイの言葉の途中でウテラは立ち上がった。

「私には少し休息が必要のようだ。これから宿にでも行って、しばらく休むとするよ。それでは」いって彼女は歩き出した。

「あ、待ってください」トーイは追いすがった。「あの、ボク、実は勇者の使いじゃないかっていわれたの二回目なんです」

 なぜそんなことを二回もいわれるのか、アーカスのときはともかくも、ウテラにいわれたのは釈然としない。うわごとというのにも頷けない。その理由をしっかり聞きたかった。

 ウテラは立ち止まり振り返った。

「二回目?」

「はい。前にいったのはアーカスという人なんですが……」

 そこでトーイは、アーカスにいわれ、そしてその意見に自分は笑って否定したことを告げた。ウテラは黙って聞き、アーカスとの話の発端になった長剣を見た。

「確かに、めずしい剣だ。名剣だとも思う。だが、私はそれを見て、あなたを勇者の使いだと思ったわけではない」

「あ、やっぱり思ったんだ」トーイはすぐいった。

「い、いや、だから、無意識のうちに思ったことが白昼夢に反映されて……」

 モゴモゴいうウテラの言葉をさえぎって、トーイはいった。

「ボクね、自分が勇者の使いじゃないってのは感覚的に分かるんだけど、ただ、怪しいかなっていう人は一人知っていて」

「え、」

 といってウテラの顔色が変わった。期待、焦り、そういった感情が表情から見て取れた。彼女のそんな様子で、やはりウテラは勇者の使いを探しているんだということをトーイは確信した。

「プライっていう人なんだけど……」

「プライ? 男性か?」

「はい。まだ十二才で子供だけど、村では宝のようにいわれてて……」

「宝……」噛みしめるようにウテラが繰り返す。

「はい。ボクの生まれ故郷のテリルという村にいるんですけど……」

 実際プライは特別な存在であった。はじめにその才能に気づいたのは、ふらりと村に立ち寄った教会関係者だった。プライがまだ言葉も満足に話せないころ、親や村長が、この子には大きな才能がある、どうか私に預からせてはもらえないだろうか、そのようなことをいわれたらしい。

 最初は誰も信じていなかったそうだが、その言葉を裏付けるように、彼はほかの子供とは比べものにならない速度で知的成長をし、今では、若くして村をしょってたつ存在になるだろうと、村の誰もが確信していた。

 そんなプライなら、もしかして――。

 アーカスに、勇者の使いではないかといわれたとき、思ったのである。

 だが、彼がどれほどぬきんでた存在か、それを説明しても、ウテラの反応はぱっとせず、それどころか説明すればするほど興味をなくしていくようだった。

「個人的に会ってみたいと思わせる人物だな、そのプライという方は」ウテラは首を振った。「だが、勇者の使いではないようだ」

 彼女の様子は、もう勇者の使いを探していることを隠すつもりがないようだった。いまさら隠しても遅いと思った、というよりは、トーイの警戒感を抱かせない雰囲気に呑まれ、隠す気がなくなったというのが本当らしかった。

 しかしトーイとしては、そこまでは気づいていない。ただ単に、話に夢中になっていた。

「どうして、そう思うんですか? 会ってもいないのに分かるものですか?」ウテラが答える前に、トーイは思いつきいった。「あ、もしかして年齢が違うとか?」口を開きかけたウテラを制するようにトーイはつづけた。「その前に、勇者の使いって、今生まれているんですか?」

「そんなにいっぺんにいわないでくれ」ウテラは苦笑した。「まず、会ってもいないのに分かるのかという質問には、わかるはずだ、としか答えられない。あと年齢は、そうだな。たしかに十二才ぐらいだ。それから、勇者の使いが生まれているのか、という質問に対しては、それも、そのはずだ、としか答えられない」

「でも、どうしてそんなことが分かるんですか?」トーイは首をかしげた。

「そう感じるからだよ」ウテラは笑っていった。「わたしはアキラルの人間だ」

 なぜ笑ったのか、アキラルの人間だったら分かるものなのか、そして、アキラルの人間が勇者の使いを探していることが本当だとして、それは、ふつうこうも簡単に明かすものなのか、そういったいくつもの疑問に同時に襲われ、トーイは困惑した。

「えっと……」言葉が出てこない。

「そんなことをいわれても困るよな。こんなことをいうなんて、やはり疲れているのかもしれない」ウテラはわずかに下を向き、苦笑しながら首を振る。

 たしかに疲れは、彼女の全身からにじみ出ていた。本来なら、彼女の疲れに気を使わなくてはいけないところだろうが、どうにも彼女の境遇や事情が気になり、とにかく話を聞きたい、という気持ちがトーイを支配していた。

「勇者の使いって、本当に生まれているんですか?」とりあえずトーイはそう訊いた。

「おそらくはな。少なくともわたしはそう感じ、そしてそれを信じている」

「アキラルの方は、そういったことを感じる能力があるのですか?」

「いや、わたしだけだった。だから、一人で行動しているんだ」

「それって、ボクにいっちゃってもいいものなんですか?」

「今までこういったことを話したことはなかったが、まあ、今は個人で行動している身だ。特にこれといって問題はないのだろうが、まあ、進んでいいふらすようなことでもないな」

「あ、だれにもいいませんよ」トーイはあわてていった。

「そうしてくれるとありがたいな」ウテラはまた苦笑した。「まあ、いったところで、そう信じてもらえるような話でもないが」

 その様子には、身体的だけではなく、精神的な疲れが色濃く見て取れた。そんな彼女を見て、トーイは最初に感じたことを唐突に思い出した。

「力になります」トーイは付け足した。「といっても、たいして頼りにはならないでしょうし。何ができるってわけでもないですが。でも、」

 ――力になります。

 と、そうトーイはいった。

 ウテラは、そんなトーイの様子を、不思議そうな目で見ていたが、やがて納得したような顔でいった。

「やはり、わたしは何かを感じることができる人間なのかもしれないな」

初めてウテラが素直な表情で笑った。もしかしたら、自分が思っているより彼女は若いのかもしれない、とトーイは思った。

「あなたに、ほかの人間とは違うものを感じたことも、正しい感覚だったのかもしれない」

突然ウテラが、周りを見回してから、顔を近づけてきた。

 すうっと街の喧騒が遠ざかる。

 ウテラがいった。

「勇者の使いは、おそらく、世界から一人隔絶している」

「え?」

「たぶん、それが勇者の使いが持つという特徴のはずだ」


 鏡の中の魔女の住む家――。

 目印は大きな石だった。天然のものらしいが、何かを書くために作ったように、その石はこちら側が平になっているらしい。その真後ろ側にまっすぐに進むとその家はある、とのことだった。

 トーイは来た道を振り返り見た。考え事、というかウテラとのことを思い出しながら歩いていたので、見逃した可能性もあるかと思ったのだ。

 道はなだらかに曲がっているが、ずっと先まで見渡せた。

 そのような石はなかった。

 やはり考え事をしていたとはいえ、見逃してはいなかったようだ。

 だがそろそろ、その石があってもいいころだ。この辺からは、考え事をしないように、ウテラのことは一時忘れて歩こう、そう思わなければついつい思い出してしまう。何しろ、彼女との会話は興味深かった。中でも興味を引かれたのは、ウテラが感じる、勇者の使いのイメージかもしれない、などと考えながら、無意識のうちにトーイはまたもウテラの話を思い出していた。

 ウテラがいうには、勇者の使いが生まれた瞬間、そのことを感覚的に知ったのだそうだ。それからも常に勇者の使いの存在を感じ、調子のいいときなどは、勇者の使いを夢の中ではあるが、視覚的イメージで捉えられるのだそうだ。

 彼女のイメージでは、勇者の使いは真っ暗闇の中で一人浮かんでいるそうだ。夢の中で彼は、目と耳と口がなかった、ともいっていた。

 ――勇者の使いは、おそらく、世界から一人隔絶している。

 その抽象的な言葉は、そんなイメージからくるものなのだろう。そしてウテラはこうもいった。

 ――あなたに、同じイメージを見たんだ。

 トーイは確かに今一人である。でも故郷に帰れば、家族もいるし友達もいる。そんなに孤独ではないし、そもそも自分が、勇者の使いなんかであるはずがない。

 トーイは、失礼かとも思いつつ、こう訊いた。

 ――その感覚というのは、絶対なんでしょうか?

 勇者の使いが生まれている、そして彼は孤独の淵にいる、そういった情報は、すべて彼女の感覚がよりどころらしいのだ。信じていいものなのだろうか。

 ――わたしは、そう信じているし、勇者の近くに行けば、肌でその人だと判断できると信じて行動している。

 トーイは考えた。というより、ウテラの顔を見て判断した。

 ――信じます。ぼくも一緒に探します。

 どうして信じようと思ったのか、それは自分でもよく分からなかった。だが、感覚的に、この人は疑ってはいけない、と感じたのだ。

 ……この人に関する、こういった感覚は、いったいなんなのだろう。

 考えるトーイにウテラはいった。

 ――ありがとう。気持ちはうれしいが、一緒に行動しても、それほど効率が上がるとも思えない。気持ちだけありがたくいただくことにするよ。

 確かにそうだった。しかしそれではトーイの気がおさまらなかった。

 ――でも、お力になりたいんです。一緒に探すことに意味がないなら、別行動をとりましょう。それで、効率も……。

 ――どうしてそこまで?

 いわれてトーイは首をかしげた。どうして自分は、ここまで彼女を助けようと思うのだろう。どうして彼女のいうことを信じるのだろう。どうして彼女のことを……。

 それは、トーイ自身知りたいことでもあったのだ。

 人のための行動は小さなころに夢想したことでもある。その夢を思い出したのかとも思ったが、どうも違うようにも感じた。

 分かっていることは、ウテラのために行動したいということだけ。

 その情熱が通じたのか、それとも、彼女のほうでもトーイに理屈ではない、信じたくなるなにかを感じたのか、結局トーイの提案を受け入れた。

 その後細かい取り決め(連絡方法など)をしてから、ウテラと別れたが、勇者の存在を肌で感じることができないトーイにできることは、少なかった。

 道行く人に、勇者の使いがどこにいるか知りませんか、と聞いたところで、いい答えが返ってくることなど考えられない。どうしたものかと考えた結果、人探しの上手な人をまずは探すことにした。

 道行く人の顔を見比べながらしばらく歩いたが、だれが人探しが上手なのかが分からない。まずは、人探しが上手な人を知っていそうな人を探すのが得策なのか。

 だが、人探しが上手な人を知っていそうな人を探して、道行く人の顔を続けざまに見ているうちに、だんだんと意識が朦朧としてきた。トーイは往来の端により、座り込んだ。

 しばらくうつむいて休んでいると、

 ――兄ちゃん、誰かをお探しか?

 声がしたほうを見ると、となりで男が寝ていた。長いこと旅を続けていたらしいアーカスやウテラよりも、肌も服も薄汚れていた。つばの広い帽子を、顔の上にかけており、顔も表情も分からなかった。

 ――えっと、

 ――そんな顔をしてたぜ。

 ――人探しが得意なんですか?

 トーイは、そう訊いてみた。彼の口ぶりに、妙な自信が垣間見られたからだ。

 ――おれは探さねぇ。だが、いい人間は紹介できるかも知れねぇぜ。名前は?

 ――あ、えっと、トーイ・ウォルマーといいます。

 ――てめェのじゃねえよ。ウォンテッドのお人だよ。

 ――ああ、分かりません。

 ――分からねぇ? じゃ、属性は?

 ――それは、

 こんな、正体の分からない人間に、勇者の使いを探していることをいっていいものだろうか? いいよどんでいると、男が先回りしていった。

 ――いえねェのならいわなくていいよ。まずいお人なんだな。

 まずい、のだろうか? よく分からず、口ごもっていると男がいった。

 ――面白い女を紹介してやる。鏡の中に住んでいる魔女だ。あいつのお眼鏡にかなったら、力になってくれるだろうよ。

 鏡の中に住む? 魔女? いろいろ疑問に思ったが、この男の話しぶりから察するに、きっと比喩の類なのだろう、そう思い、トーイはあえて聞かなかった。

 ――ほんとですか? ありがとうございます。で、その人はどこにいるんですか?

 男は、その魔女が住むという家の在り処を教えてくれた。

 ――入れなきゃ相手にはしてもらえんがな。

 ――あ、がんばります。じゃ、ありがとうございました。

 ――待ちなよ、兄ちゃん。情報もらっておいて、あばよはねェだろうよ。

 ――ああ、そうですよねぇ。でもあいにく持ち合わせが……。

 そういったところで思い出した。家を出るとき、次兄からターク石をもらっていたんだった。これを売れば、1ヶ月ぐらいの食事代にはなるだろう。

 ――これ、どうしたい?

 ――ボクの故郷はテリルっていうんですけど、その裏で結構取れるらしいんです。

 ――ほう……。

 ――じゃ、ありがとうございました。

 そういって立ち上がり、二、三歩歩き、ふと振り返ると、もうその男はいなかった。


 ふと振り返ると、モンスターがいた。

 手を使わず両の足で立っている。一見姿勢の悪い人間のような立ち姿だが、大きさが人間のふた周りほども大きく、全身が毛に覆われていた。

 故郷のテリル村では、ドイルゴーストと呼ばれているものだった。

 意味が分からなかった。

 トーイが状況を認識するのを待たず、ドイルゴーストは襲いかかってきた。

「うわ!」トーイは反射的に一撃目をかわすと、即座に右手を振った。空回りする。空手だった。

 ――しまった! 剣を抜き忘れていた!

 トーイは思わず背中に手を回し、背負った剣を抜こうと柄に手をかけたが、この剣は長すぎて、背負ったままでは抜けないことを思い出し、頭が白くなった。

 ――やばい。どうしようもない……。

 しょうがないので、トーイは勢いよく振り向くと、全速力で走り出した。モンスターが追ってくる。背負った剣が長すぎて、走るたびに左右に揺れ、大いに邪魔だった。

 結局、そのまま持久戦になった。

 トーイは足が遅い方ではない。だが、足の速さというものは、相対的なものだ。いくら人間として足が速かったとしても、人間が想像もつかないほどの速さで移動できるモンスターに追われたら、ひとたまりもない。

 このモンスターはどうだろう。トーイは走りながら後ろを振り向いた。先ほどの距離とかわらずついてくる。猫背で姿勢がわるいので、ゆっくりとした動きだったが、足がトーイよりも長いので、結果的には同じぐらいの早さだった。

 だが、というか、それとは関係ないかもしれないが、懸命に走るその表情が気持ちわるく、鼻息もすごく荒かった。

 トーイの全身に鳥肌が立った。

 生理的に、この相手はだめだ。

 トーイは前を向きなおし、必死に足を動かした。

 初めての景色が後ろに飛んでいく。視界が小さくなっていく。

 トーイは走りつづけた。

 どれぐらい走っただろう。苦しい。走りつづけるうち、頭がぼんやりとしてきて、だんだんと回らなくなってきた。酸素不足から、四肢の感覚も鈍くなってきて、身体と頭が、なによりも休息を望むようになった。

 ――もういいや、走るのやめよう。

 トーイの中で、唐突になにかが切れてしまった。徐々にスピードを落としていって、そのまま地面に手を突き、仰向けにひっくり返った。

 暴れまわる心臓と、小刻みに震える肺に身をゆだねた。

 煮るなり焼くなり好きにしてくれ。そんな心境だったが、腹を見せているトーイを襲うものはいなかった。澄み渡る空だけが、眼前遠くに広がっている。

 寝っころがったまま首だけを起こし、自分の足元を見る。足の向こうの来し方には、モンスターの姿は見えなかった。どうやら、むこうが先にへばっていたらしい。

 ――やった、勝った……。

 剣技館で、毎日体力の限界まで剣の稽古をしていたことが役に立った。

 トーイは、そう思った。

 ――それにしても、

 とトーイは思う。いったい、目印となるあの大石はどこにあるのだろう。立ち上がり、寄りかかりながら周りを見回すも、それらしきものはない。先を見てもない。

 はあ、とため息をついて、トーイは手をついていた石にもたれかかり、そのままずるずると腰を下ろした。その石は、こちら側が平らで、背もたれのようになるのではないかと本能的に思ったからなのだが、なにしろその石の表面が平らすぎ、寄りかかって少しも楽ではなかった。

 ――たく、役に立たないなぁ。

 と振り返ったところで、その石が件のものであることに気がついた。

 ――ああ、これだ。てことは、魔女の住む家というのも……。

 トーイの身体から疲れが消えた。立ち上がりその石の裏側に回り込み,そのままの方向に歩いた。剣を抜くのはまたも忘れていたが、幸運にもモンスターに会うことはなかった。ただ、目指す建物もなかなか見つけられなかった。

 その存在を教えてくれた男は、石の真後ろ方面にまっすぐに進むとあるといっていたが、石の向こう側は、ほとんど森といっていいほどの場所で、木を避けながら歩くうち、どの方向がまっすぐ方面なのかが分からなくなってしまったのだ。

 なかなか見つけられないので、やけになったトーイは、感覚だけを頼りにめちゃくちゃに歩いた。いわゆる道に迷った状態だったが、やはりついているのだろうか、トーイは偶然というか、たまたまといった感じで、魔女が住むという家らしき建物を見つけた。

 変わった家だった。ここに住んだら、さぞかし寿命が縮むだろうとも思った。

 その家は、絶壁の岩場に寄り添うように建てられていた。崖崩れがあったら、一発で死んでしまうだろう。そんな場所だった。

 トーイは、おっかなびっくり家に近づいた。扉があった。かわった扉だった。横幅があり、ほとんど正方形だった。そこに、鏡がはめられていた。

 鏡の大きさは両手を広げたくらいか。形は丸い。

 鏡を取り囲む枠は木製だが、それはただ単に丸いわけではなく、その中に、鏡を挟み込むようにXの字に木がはめられていた。

 飾り、なのだろうか。不思議だった。デザインのことではない。デザインも、またそれを扉に取り付ける感覚も独特ではあるが、不思議だったのはそれらのことではない。

場所である。

 その飾りは、トーイの腹部付近の高さにあったのだ。そして、ノブもその左下、トーイの身体でいうと、太腿辺りにあるのである。

 魔女は、よほど背が低いのだろうか。

 ――それにしたって……。

 トーイは、ノックをしてみた。返事はなかった。ノブを握って回してみても、うんともすんともいわない。いないのだろうか。側面に回ってみた。崖を正面に見たときに対する面である。

 なにもない。せめて窓があれば、中が見えるし、人がいるならこちらの存在をアピールすることもできたのだが――。

 いや、そもそも不在なのだろうか。ノックはしているのだし、いたら何かしらの反応はあると思う。

 トーイは扉の前に戻り、中腰になって鏡をのぞいた。

 鏡の中の魔女、と呼ばれる彼女。

 ――まさか、本当にこの中にいるわけじゃないだろうな。

 いたとしても、トーイには入れない。

 そのとき、その鏡の中に人影を見た気がした。反射的にトーイは振り返った。背後には誰もいなかった。

 ――鏡の中に入ろうなんて考えたこともないけど、やってみたら意外と入れるのかな?

 トーイは向き直り、鏡に向かって手を伸ばした。

 指先は、鏡に当たって、こつん、と音を立てた。


毎日、夜の7時に更新していきます。

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