削られるたびに悲鳴を上げる転生鉛筆ですが、落ちこぼれ少年をトップ校に合格させました 〜消しゴム先輩と赤鉛筆さんとシャーペン後輩も出てきます〜
ブラック企業で死んだ俺は、なぜか“鉛筆”に転生した。
削られるたびに悲鳴を上げ、成果は消しゴム先輩に消され、
赤鉛筆さんには「ここ違う!」と怒られる。
そんな俺が出会ったのは、勉強が苦手すぎる落ちこぼれ少年。
これは、短くなる僕と、伸びていく君の、
ちょっと笑えて、ちょっと泣ける受験物語。
ブラック企業で働き続け、心も体も限界だった。
深夜のオフィスで意識が途切れた瞬間、
「もう働きたくない……でも誰かの役には立ちたい……」
そんな矛盾した願いだけが胸に残った。
——気づくと、木の香りがした。
「はい次の新人、鉛筆くんねー。芯の角度は三十度、悲鳴は自由でお願いしまーす」
……誰だ。
いや、それより俺の体、細長い。固い。木だ。
——転生したら鉛筆だった。
「ちょっと待て! 俺、人間に戻るとか、そういうのは……?」
「ないよー。うちはブラック企業で死んだ人材を積極採用してるから」
鉛筆工場の研修担当らしき“声”が軽い。
ブラック企業よりブラックな雰囲気を感じるのは気のせいか。
「じゃ、まず削り器さんに挨拶してきて」
ガガガガガガガガッ!!
「ぎゃああああああああああああああああ!!」
初対面でいきなり皮を剥がされた。
痛い。めちゃくちゃ痛い。
でも研修担当は言う。
「はい、これが“社会の洗礼”ねー」
いや、社会どころか拷問だろ。
次に消しゴム先輩がやってきた。
「お前の仕事、全部消しといたぞ」
「やめろおおおおおおおおおおお!!」
成果を消されるの、前の会社でもあったな……。
なんだこの既視感。
筆箱に入れられたら、今度は満員電車みたいにギュウギュウだ。
「おい押すな! 俺折れるって!」
「折れたら自己責任でーす」
ブラック企業よりブラックじゃねえか。
そんな地獄のような鉛筆業界での日々が続いたある日——
俺は、ひとりの少年に拾われた。
--落ちこぼれ少年との出会い--
「……またテスト、赤点だ……」
机に突っ伏す少年。
小学生高学年くらいだろうか。
筆箱の中はぐちゃぐちゃ、ノートは真っ白。
少年は俺を手に取ると、ため息をついた。
「どうせ僕なんて……勉強できないし……」
……おいおい。
その言葉、前の会社で何度も聞いたぞ。
俺は心の中で叫んだ。
「お前、まだ小学生だろ! 伸びしろしかねえよ!!」
もちろん声は届かない。
でも、少年は俺を握りしめたまま、ぽつりと言った。
「……この鉛筆、なんか“止めてくれる”気がする……」
おい、泣くぞ。
--教育に目覚める鉛筆--
少年は本当に勉強が苦手だった。
・ 漢字は左右逆
・ 計算は桁が迷子
・ 文章題は読んでる途中で寝る
だが、俺は知っている。
【できない子ほど、伸びる余地がある】ってことを。
だから俺は、紙に触れるたびに芯を震わせた。
「そこ違う! 止まれ! その字は逆だ!」
「桁を揃えろ! 揃えるんだ!」
「寝るな! まだ昼だ!」
もちろん声は届かない。
でも少年はなぜか言う。
「この鉛筆、なんか“教えてくれてる”気がするんだよな……」
そうだよ。
俺はお前の“元ブラック企業社員”だ。
指導力だけはあるんだよ。
--消しゴム先輩、再登場--
ある日、少年がノートを開くと、
そこに見覚えのある白いヤツがいた。
「お前の仕事、また消しといたぞ」
「やめろおおおおおおおお!!」
少年は驚いて言った。
「えっ……この消しゴム、勝手に動いた……?」
違う。
こいつはただのパワハラ上司だ。
--赤鉛筆さん、降臨--
受験勉強が本格化した頃、
筆箱に新しい仲間が入ってきた。
「よし! 間違いは全部私が赤で直すわよ!」
赤鉛筆さんは熱血だった。
「ここ違う!」「もっと丁寧に!」「字が踊ってるわよ!」
少年は泣きそうになりながらも、
赤鉛筆さんの指導でどんどん成長していった。
俺は横で震えながら思った。
「この人、怖いけど……有能だ……!」
--親と先生の“無理だ”宣告--
しかし、現実は厳しかった。
三者面談の日、
少年の母親と先生は言った。
「この成績では……受験は厳しいと思います」
「無理だと思うわ」
少年は帰り道で泣いた。
声を殺して、肩を震わせて。
「僕……やっぱりダメなのかな……
どれだけ頑張っても……無理なのかな……」
その涙が、俺の芯に落ちた気がした。
俺は叫んだ。
「お前はできる。俺が見てきたんだ。
誰よりも努力してきたお前を!」
もちろん声は届かない。
でも少年は涙を拭き、俺を握りしめた。
「……やるよ。僕、やる。
君が……君が止めてくれるから」
その言葉で、俺の芯が熱くなった。
--受験前夜--
前夜。
少年は机に向かっていたが、手が震えていた。
「怖いよ……落ちたらどうしよう……」
赤鉛筆さんが珍しく優しい声を出した。
「ここまでよく頑張ったわね」
消しゴム先輩もぼそっと言った。
「……成果、消さねえよ。今日はな」
俺は短くなった体で、紙に触れた。
「大丈夫だ。お前はできる」
少年は深呼吸し、ゆっくりと目を閉じた。
「……うん。行ってくるよ」
--受験戦争、最終決戦--
試験当日。
少年は震える手で俺を握った。
「ここまで来れたのは……君のおかげだよ」
俺は短くなりすぎて、もうほとんど書けない。
紙に触れれば折れてしまいそうなほど、ぎりぎりの状態だった。
でも、最後の力を振り絞って紙に触れた。
「行け。お前なら勝てる」
少年は頷き、試験会場へ向かった。
--合格発表--
「……あった……僕の番号……!」
少年はその場に崩れ落ち、泣きながら俺を握りしめた。
「ありがとう……相棒……
君がいなかったら……絶対に無理だった……!」
その瞬間、俺の芯は静かに折れた。
でも、痛くなかった。
むしろ、胸の奥が温かく満たされていくのを感じた。
--シャーペン後輩へのバトンタッチ--
中学生になった少年は、
新しいシャーペンを使い始めた。
シャーペン後輩は言った。
「先輩、ありがとうございました。
ここからは僕が支えます」
——頼んだぞ、後輩。
少年は俺を机の引き出しにそっとしまった。
「僕の原点だから、大事にする」
俺の意識は静かに薄れていった。
けれど、少年の未来が明るく続いていくような気がした。
読んでいただき、ありがとうございました。
今回は「転生鉛筆 × 落ちこぼれ少年 × 受験戦争」というテーマで、
コミカルと成長ドラマを混ぜてみました。
短くなる鉛筆と、伸びていく少年。
そんな対比を楽しんでいただけたなら嬉しいです。
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