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~転生したら鉛筆でした~

削られるたびに悲鳴を上げる転生鉛筆ですが、落ちこぼれ少年をトップ校に合格させました  〜消しゴム先輩と赤鉛筆さんとシャーペン後輩も出てきます〜

掲載日:2026/01/03

ブラック企業で死んだ俺は、なぜか“鉛筆”に転生した。

削られるたびに悲鳴を上げ、成果は消しゴム先輩に消され、

赤鉛筆さんには「ここ違う!」と怒られる。


そんな俺が出会ったのは、勉強が苦手すぎる落ちこぼれ少年。

これは、短くなる僕と、伸びていく君の、

ちょっと笑えて、ちょっと泣ける受験物語。

ブラック企業で働き続け、心も体も限界だった。

深夜のオフィスで意識が途切れた瞬間、

「もう働きたくない……でも誰かの役には立ちたい……」

そんな矛盾した願いだけが胸に残った。


——気づくと、木の香りがした。


「はい次の新人、鉛筆くんねー。芯の角度は三十度、悲鳴は自由でお願いしまーす」


……誰だ。

いや、それより俺の体、細長い。固い。木だ。


——転生したら鉛筆だった。


「ちょっと待て! 俺、人間に戻るとか、そういうのは……?」


「ないよー。うちはブラック企業で死んだ人材を積極採用してるから」


鉛筆工場の研修担当らしき“声”が軽い。

ブラック企業よりブラックな雰囲気を感じるのは気のせいか。


「じゃ、まず削り器さんに挨拶してきて」


ガガガガガガガガッ!!


「ぎゃああああああああああああああああ!!」


初対面でいきなり皮を剥がされた。

痛い。めちゃくちゃ痛い。

でも研修担当は言う。


「はい、これが“社会の洗礼”ねー」


いや、社会どころか拷問だろ。


次に消しゴム先輩がやってきた。


「お前の仕事、全部消しといたぞ」


「やめろおおおおおおおおおおお!!」


成果を消されるの、前の会社でもあったな……。

なんだこの既視感。


筆箱に入れられたら、今度は満員電車みたいにギュウギュウだ。


「おい押すな! 俺折れるって!」


「折れたら自己責任でーす」


ブラック企業よりブラックじゃねえか。


そんな地獄のような鉛筆業界での日々が続いたある日——

俺は、ひとりの少年に拾われた。



--落ちこぼれ少年との出会い--


「……またテスト、赤点だ……」


机に突っ伏す少年。

小学生高学年くらいだろうか。

筆箱の中はぐちゃぐちゃ、ノートは真っ白。


少年は俺を手に取ると、ため息をついた。


「どうせ僕なんて……勉強できないし……」


……おいおい。

その言葉、前の会社で何度も聞いたぞ。


俺は心の中で叫んだ。


「お前、まだ小学生だろ! 伸びしろしかねえよ!!」


もちろん声は届かない。


でも、少年は俺を握りしめたまま、ぽつりと言った。


「……この鉛筆、なんか“止めてくれる”気がする……」


おい、泣くぞ。



--教育に目覚める鉛筆--


少年は本当に勉強が苦手だった。


・ 漢字は左右逆

・ 計算は桁が迷子

・ 文章題は読んでる途中で寝る


だが、俺は知っている。

【できない子ほど、伸びる余地がある】ってことを。


だから俺は、紙に触れるたびに芯を震わせた。


「そこ違う! 止まれ! その字は逆だ!」

「桁を揃えろ! 揃えるんだ!」

「寝るな! まだ昼だ!」


もちろん声は届かない。

でも少年はなぜか言う。


「この鉛筆、なんか“教えてくれてる”気がするんだよな……」


そうだよ。

俺はお前の“元ブラック企業社員”だ。

指導力だけはあるんだよ。



--消しゴム先輩、再登場--


ある日、少年がノートを開くと、

そこに見覚えのある白いヤツがいた。


「お前の仕事、また消しといたぞ」


「やめろおおおおおおおお!!」


少年は驚いて言った。


「えっ……この消しゴム、勝手に動いた……?」


違う。

こいつはただのパワハラ上司だ。



--赤鉛筆さん、降臨--


受験勉強が本格化した頃、

筆箱に新しい仲間が入ってきた。


「よし! 間違いは全部私が赤で直すわよ!」


赤鉛筆さんは熱血だった。


「ここ違う!」「もっと丁寧に!」「字が踊ってるわよ!」


少年は泣きそうになりながらも、

赤鉛筆さんの指導でどんどん成長していった。


俺は横で震えながら思った。


「この人、怖いけど……有能だ……!」



--親と先生の“無理だ”宣告--


しかし、現実は厳しかった。


三者面談の日、

少年の母親と先生は言った。


「この成績では……受験は厳しいと思います」

「無理だと思うわ」


少年は帰り道で泣いた。

声を殺して、肩を震わせて。


「僕……やっぱりダメなのかな……

 どれだけ頑張っても……無理なのかな……」


その涙が、俺の芯に落ちた気がした。


俺は叫んだ。


「お前はできる。俺が見てきたんだ。

 誰よりも努力してきたお前を!」


もちろん声は届かない。

でも少年は涙を拭き、俺を握りしめた。


「……やるよ。僕、やる。

 君が……君が止めてくれるから」


その言葉で、俺の芯が熱くなった。



--受験前夜--


前夜。

少年は机に向かっていたが、手が震えていた。


「怖いよ……落ちたらどうしよう……」


赤鉛筆さんが珍しく優しい声を出した。


「ここまでよく頑張ったわね」


消しゴム先輩もぼそっと言った。


「……成果、消さねえよ。今日はな」


俺は短くなった体で、紙に触れた。


「大丈夫だ。お前はできる」


少年は深呼吸し、ゆっくりと目を閉じた。


「……うん。行ってくるよ」



--受験戦争、最終決戦--


試験当日。

少年は震える手で俺を握った。


「ここまで来れたのは……君のおかげだよ」


俺は短くなりすぎて、もうほとんど書けない。

紙に触れれば折れてしまいそうなほど、ぎりぎりの状態だった。

でも、最後の力を振り絞って紙に触れた。


「行け。お前なら勝てる」


少年は頷き、試験会場へ向かった。



--合格発表--


「……あった……僕の番号……!」


少年はその場に崩れ落ち、泣きながら俺を握りしめた。


「ありがとう……相棒……

 君がいなかったら……絶対に無理だった……!」


その瞬間、俺の芯は静かに折れた。

でも、痛くなかった。

むしろ、胸の奥が温かく満たされていくのを感じた。



--シャーペン後輩へのバトンタッチ--


中学生になった少年は、

新しいシャーペンを使い始めた。


シャーペン後輩は言った。


「先輩、ありがとうございました。

 ここからは僕が支えます」


——頼んだぞ、後輩。


少年は俺を机の引き出しにそっとしまった。


「僕の原点だから、大事にする」


俺の意識は静かに薄れていった。

けれど、少年の未来が明るく続いていくような気がした。

読んでいただき、ありがとうございました。

今回は「転生鉛筆 × 落ちこぼれ少年 × 受験戦争」というテーマで、

コミカルと成長ドラマを混ぜてみました。


短くなる鉛筆と、伸びていく少年。

そんな対比を楽しんでいただけたなら嬉しいです。


ブックマークや評価、感想をいただけると、

鉛筆がさらに削れて喜びます。

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