番外編・なんでもない日常 その1
番外編その2です。
こっちでは日影視点の短編集です。
◯読書家
今日は訓練がいつもよりも早く終わった。
午後二時ぐらい。晴はまだ訓練中だろうし、サラさんは晴と一緒にいるはずだ。
こういった時、僕はいつも図書館に行くことにしている。
日本にいた頃から僕は読書が趣味だった。
この王宮にある図書館はとても広い。小説もあれば、研究に使うような本、地図や辞典など一通りは揃っている。そして大事なこと。それは僕が読んだことないような本がいっぱいあることだ。
日本にいた頃は近所の図書館に通い詰め、全ての本を読破してしまった僕に取ってはとても大事なことだ。
図書館に入った僕は続きを読むべく、前読みかけだった本を手に取った。
ボロボロの表紙に、擦り切れた紙。題名には「セフィラ神話」。
そう、神話の本だ。
最初は読む気が無かったが、何気なしに手に取った瞬間、読まなければならないという使命感に駆られた。
それ以降コツコツ読み進めている訳だ。
いくら僕が速読できるとしても、千ページを超えている本をすぐに読み切るのは不可能だ。
一時間程読んだ時、僕は本に暗号のような何かが書かれていることに気づいた。
勇者召喚の儀ではこの世界の言語は読めるようになっていると別の本には書いてあった。
なのに全く読めないことが不思議だった。
三十分程考えた。答えは出なかった。
断片的には解読出来たのだが、文章として成り立ってないような気がして解読することを諦めた。
言葉になんか深い意味があるのかもしれないが、分からない。
ただ、僕の魔法の詠唱に参考になりそうな言葉があったから使ってみよう。
僕は本にメモを挟んだまま本を元の棚に戻した。
「黄昏、?、結界、邪神、?」
◯呼び方
今日は訓練が休みの日だった。
また図書館でも行こうとしてたら、晴から念話が来た。
『日影〜今暇?』
『図書館行こうとしてたとこ〜
どうしたん?』
『じゃあちょっと庭の机のところまで来て〜
サラちゃんとお茶会するから日影も一緒にどう?』
『オッケー今すぐ行く』
僕は図書館に向かいかけてた足を庭の方角に変える。
王宮の庭には机と椅子が置いてある。
花が咲き誇っている中で、あの机でまったり本を読んでみたいなと何度思ったことだろう。
まあ時間がないから今のところ出来そうな気配はないが…
そんなことを考えながら歩いていると、庭までたどり着いた。
晴とサラさんが座って待っていた。
「あ、日影!迷わなかった?」
「流石に一ヶ月もいたらもう迷わないって」
「日影様?この間武器庫までの道で迷っていたのは一体どちら様でしょうか?」
「………」
「日影〜やっぱまだ迷ってんじゃ〜ん(笑)」
相変わらずの会話。
そんな会話から始まったお茶会はとても楽しいものだった。
最初に飲み物の好みで話し合いとなった。
具体的にはコーヒー派の晴と紅茶派のサラさんでお互いの良さをプレゼンし合っていた。
審査員は僕だ。させられたとも言う。
最終的な結果は引き分けということで収まった。僕はどっちも飲むからね。
そんな会話を交わしてるうちに次の話題に変わった。
「そう言えば、二人は今何歳でしたっけ?」
「………日影って今何歳?」
「僕は今十七歳だよ。晴も十七歳。
僕より誕生日早いんだから…」
「そっか!
サラちゃん!今二人とも十七歳だって!」
「自分の年齢忘れてたのはちょっとアレですが…
じゃあ二人とも私より三歳年上なんですね!」
「「え?」」
正直、サラさんは僕たちの同い年だと思ってた。
話し方とか態度とか僕たちのお説教とか。
……正直クラスの学級委員長みたいな雰囲気があったのもあるのだが。
「待って!?サラちゃんって年下なの!?」
「そうですよ晴。まさか同い年だと思っていました?」
「「うっ………」」
「え、待って二人とも?私冗談のつもりで言ってたのに…」
「いやだって、よく僕たちサラさんに怒られてるし…
あと身長…(ボソッ)」
「日影?誰がちっちゃいだって?」
余談だが晴の身長は155cmでサラさんの身長は160cmである。
「でも二人とも年上でしたか…
呼び方も変えるべきですかね…?」
「別にいいとは思うけど…
例えばどんな感じ?」
「そうですね…
日影兄に晴姉…とかですかね…」
そう呼ばれた瞬間に僕たちに電撃が走った。
それは危険過ぎる…!主に僕たちの尊死的な意味で。
もちろん晴も同じことを思ってるだろう。顔を見たらバレバレだ。
それを見てると悪戯心が芽生えてきた。
「さ、サラちゃん?それはちょっとなんか違う気がするんだけど」
「そうだぞサラさん。その呼び方は僕と晴姉さんによく効く」
「ちょっと日影!?なんで!?ちがうのわたしは!?
……ううっ……(プシュー)」
あ、晴が顔真っ赤にして煙上げ始めた。
これはもうしばらくはこのままだろう。
「ちょっとサラさん。晴が使い物にならなくなっちゃんだけど。」
「トドメさしたの日影様ですよね!?
あ、日影兄だよね!?」
「サラさん?無理して使わなくてもいいんだぞ〜」
この後もなんやかんや騒ぎながら茶会は過ぎていった。
ちなみに呼び方は三人だけの時は、サラさんが「日影兄」「晴姉」に、僕が「晴姉さん」と呼ぶことになった。
晴も僕のことを何故か「日影兄」と呼ぶようなった。
……誕生日早いのは晴なんだけどな。
◯認識の齟齬
「そう言えば日影様って身体能力テストってしたことありますか?」
「日本にいた頃のなら覚えてますけどそれで大丈夫ですか?」
「項目が一緒なら大丈夫です。
ではまず五十m走ですがタイムは分かりますか?」
「確か八秒ぐらいだったと思います。」
「八秒!?とてもお速いですね。」
「いやいや、クラスにはもっと速い奴がもっといましたよ」
「えっ?」
「え?」
「………じゃあ次ですが、握力の数値は分かりますか?」
「左右ともに三十kgです」
「三十!?普段から何か特別な運動でもされてたんですか!?」
「いえ、何も」
「えっ?」
「え?」
微妙な顔をしながらグラム将軍は去っていってしまった。
……グラム将軍は一体何が聞きたかったのだろう?
ニュアンスの違いですが
サラさん→「日影にぃ」「晴ねぇ」
晴→「日影にい」or「日影にいさん」
です。覚えてもなんにも無いです。
後は伏線回です。




