第十話
第十話です。
お砂糖注意報
ブラックコーヒー推奨
五分間にも及ぶ土下座の後、一時間の正座を自主的に敢行することにした僕を置いて、晴が朝に言っていた本題に入ることになった。
…のは良いのだがその本題に入る前に僕がその答えを知ってしまったせいで、晴が不貞腐れてしまっているのが現状だ。
「あの〜、晴さん?そろそろ機嫌を直されていただいても…」
「やだ」
「…ですよね〜」
「だって日影が私の日記を勝手に見るから…
お陰で私が話そうと思ってたこと何も無いじゃん。」
「ごめんって。もう僕は勝手に倒れないし、どっかに行ったりしないから!」
「……もう!そうゆうところ!」
そう言うと晴が僕の方に飛び込んできた。
そして抱き止めた僕の腕の中で三日前と同じように泣き出してしまった。
まさかまた泣かれるとは思っていなかった僕は思わず動揺して、オロオロしてしまう。
そんな僕を置いて、晴はまた言葉を紡ぐ。
「…勝手に一人で考えて、答えを出して、勝手にどっかに行って…
そうゆうとこ今はいいから!」
「…あのそれは…」
「分かってる!でも辞めないんでしょ!
せめて私に一言ぐらい頂戴!そして私も連れてって!」
「…分かった。約束する。」
「よ〜し!言質とったからね!」
どうやら泣いたフリだったらしい。僕はまんまと騙されてしまった。
…まぁ僕が晴を疑うわけないからどのみちだったけど。
ここは話を変えなければ僕が不利になる一方だ。
「ところで忘れ物ってなんだったの?」
「…うん、これのこと?」
晴はポケットから何かを取り出した。
手のひらサイズの小さい…箱?
すごく見覚えのあるようなものだ。具体的に言うと恋愛ドラマの最終回の海辺とかでよく見たやつだ。
「…ちなみに聞くけどそれは?」
「う〜んとね!左手の薬指に付けると一生一緒にいられるっていうアクセサリー!」
「指輪じゃんか!?いつ買ってきたの!?」
「日影がサラちゃんに魔術のこと教わってた時!」
割と直近だった。
「いや、急に付け出したら他の人たちに僕らの関係バレるじゃん!?」
「付けること自体は否定しないんだね〜。
関係については大丈夫!日影が倒れた時にみんなに言っておいたから!」
「だからか!王宮のどこに行っても優しい生暖かい視線を感じ続けたのは!」
ここ数日間の一番の疑問が今、解消された。
「さあ、早く諦めてお揃いの指輪をつけましょう?」
「それは良いけど、どこに付けるの?」
「それはもちろん……………
右手の薬指かな……?」
「そこはヘタれるんだ…」
「いいの!どっちみち一生続く契約になるんだから!」
その言葉を聞いた時に、ふと思い出した。昨日の晩に新発見をしたことに。
「晴、そういえば何だけど「話変えない!」変えない、変えない。変えないから。
ステータス画面開いてくれない?」
「ステータス画面?良いけど急だね。」
「たった今思い出しただけだから許して。
んで、スキルのところ指でなぞってみて?」
「…何これ?これってこの間聞いてきた」
「あれのこと。良いから読んでみて。
あと指輪頂戴。」
「いいよ〜。はい、落とさないでね〜」
「ありがとー。読み終わったら教えて」
そう言って僕は心を落ち着かせる。
ここから先に必要なのは覚悟。それだけだ。
静かに息を整える。その時が来るまでただ、待つ。
「読み終わったよ〜」
「了解。………晴。」
「どうしたのそんな改まって。」
「ずっと好きでした。一生僕の隣にいてくれますか?」
「………え?へ?え?何で?」
「…恥ずかしいからあんまり言わせないでね。…スキルの契約だよ。
……プロポーズとも言うけど」
「………いいの?私で?」
「晴じゃないとダメなんだよ」
「……そっか。不束者ですがよろしくお願いします。
じゃあ私も。私の側にずっといてくれますか?」
「うん。もちろん」
僕らは互いの指に指輪を付ける。そして顔が近付いて……
月明かりが重なる二人の影を照らし出した。
「「………はは、あははははっ笑」」
どちらからかともなく笑い出す。全く同じ想いを抱いて笑う。
その想いは何だったのか。それは二人のみぞ知る……
「ちょっとステータス画面変わったか見てみよっか〜」
「さんせ〜!じゃあせーので開けよう!」
「「せ〜の!」」
月野 日影 17歳
スキル
夜の王
状態異常
なし
契約者
日野 晴
スキル
昼の女王(前:白の女王)
日野 晴 17歳
スキル
昼の女王
状態異常
なし
契約者
月野 日影
スキル
夜の王(前:黒の王)
「「え?」」
前略、ジグルド様、サラさん
日本からの恋人にプロポーズしたらスキルがなんか変わっちゃいました。
ーーーーーサラ視点ーーーーー
ーーーーー玉座ーーーーー
「失礼します。おじいさま、グラム様」
「おお、よく来たサラ。そこに座ると良い。」
「サラ様、ご無沙汰しております。」
「ええ、お久しぶりです。では早速本題に。」
「うむ、お主らから見て、あの二人はどんな感じじゃ?」
「まだ魔術に関しては晴しか見れていませんが、才能としては飛び抜けていますね。
半日もの間、魔術を撃っても全く底が見えない魔力量に、見ただけですぐ理解するどころか、重ね合わせて新たな魔術を作りかけたりと末恐ろしいほどの頭脳を持ち合わせていますね。
スキルも王スキルとはっきり言って流石勇者といった感じですね。
本調子でもないのにこの状態で、これから先まだまだ上達するとなると、人類の限界点に辿り着くのも遠くはないかと。流石は私の親友です。」
「関係性も良さそうで何よりじゃ。これからも目を離してあげるなよ?」
「それはもちろん!…あ、失礼しました。」
「ははは、そっちもすごそうだねぇ。
ではこっちからですが、晴様の方は剣術の方はからっきしですね。できても精々護身術程度になるかなと。」
「そうか。では日影の方は?」
「はっきり言ってバケモンですねぇ。この国の近衛兵がするような訓練を初日から余裕を持って着いて来たのに加え、模擬戦とはいえうちの副隊長から一本取りましたからねぇ。
もちろん、私とやった時は私が勝ちましたが、ギリギリで競り勝ったと言うような状態ですね。
剣を初めて持ったというのにこれほどとは…」
「私も食堂で話を聞きましたが、あの精強で知られる近衛兵の訓練に着いていくだけではなく、他の国との交流試合で無敗を誇る副隊長を倒すとは…」
「フォッフォッ、…ほんとにワシらの国に協力してくれるなんてありがたい限りじゃ。
じゃが彼らがいくらすごいからと言っても、彼らはまだ子供じゃ。
あまり無理はさせんと、ちゃんとメンタル面のケアも忘れずにな。
また、ワシらも彼らに置いてかれんように頑張らないとな。」
「「はい!」」
「さて、進捗の報告はこれぐらいにして、あの二人の人柄はお主らから見てどうじゃ?」
「二人とも真面目で好感が持てますね。少々精神面では不安定さもありますが…それはまああの二人が支え合っていってくれるでしょう」
「晴は天然でうっかりが多いですが、頭は良くとても真面目ですね。
日影さんも頭が良く真面目ですが、良く晴のうっかりをカバーしているのでどっちかと言うと真面目というより、しっかり者と言うべきでしょうか。まぁ、たまにポンコツですが。」
「日影には方向音痴もありますからね。まさか王宮から訓練場までで迷うとは思っていませんでした。」
「国の人々もあの二人に尊敬と敬愛を持っておるし、みんなから愛されるような勇者になるじゃろうな。
いや〜本当に良かった。」
「あと一個相談なんですが」
「ほう、どうした?」
「晴が指輪買ってたっていう報告を王宮のメイドからされたんですが、
私はどう反応したらいいとおもいますか?」
「「・・・?」」
「いやだから晴が」
「いやそれは分かっておる。…え?どうしたら良いんじゃ?グラム将軍助けてくれ」
「いや私に聞かれても」
「前の世界からの恋人だったらしいので祝福すべきなのでしょうが、どうしたら?」
「と、とりあえず祝うのは確定で、王宮で働いている人たちは二人の関係性知ってましたよね。」
「あ、ああ。日影が運ばれて来た時に晴が言っておったからのぉ。」
「とりあえず……………」
こうして夜は深まっていく。
なお、サラが勇者二人からステータス画面を見せられて倒れるまであと十二時間……
ということで第十話でした。
ちなみに指輪の場所は右手の薬指です。
左手にはまだ早い…!




