第91話 朝の日常
──まぶたの裏が、淡い光に染まっていた。
鳥の声。木の葉のざわめき。
遠くで聞こえる村の子どもたちの笑い声が、どこか懐かしく胸に響く。
リアムは、重たいまぶたをゆっくりと持ち上げた。
天井の木目。差し込む陽の光。
それが、柔らかく彼の頬を照らす。
しばらくぼんやりとした意識のまま、ベッドの上で上体を起こす。
寝起きの頭は少しだけ鈍く、夢の残滓が霞のように脳裏を漂っていた。
何か……大切な夢を見ていた気がする。
けれど、それがどんな夢だったのか、思い出せない。
ただ、一つだけ。頭の奥で、ひとつの名前だけが響いていた。
「……シエナ。」
小さく呟いたその名に、リアムは眉をひそめる。
聞き覚えがあるような、ないような。不思議な感覚。
「……誰だっけ、それ。」
胸の奥がざわつく。
けれどその答えは、朝の光の中に溶けていった。
◇ ◇ ◇
顔を洗い、簡単に身支度を整えたリアムは、宿舎のロビーへと足を運んだ。
すでに数人の声がそこから聞こえてくる。
ドアを開けると、木造のロビーにはレオン、セラ、アルトがそろっていた。
テーブルには湯気の立つ茶器が並び、柔らかい朝の空気が漂っている。
「おはよう、リアム。」
最初に声をかけたのはレオンだった。
その声音は、いつものように落ち着いていて、どこか兄のような温かさを帯びていた。
「おはよう、リアム!」
「おはよう、リアム!」
セラとアルトも笑顔で続く。
リアムは少し眠たげな笑みを返しながら頷いた。
「おはよう、みんな。」
その瞬間、部屋の空気がふっと和らぐ。
夜明けの柔らかな光とともに、仲間の笑顔が心に染み渡る。
レオンが腕を組み、軽く顎をしゃくった。
「さて、話は後だ。すぐ着替えろ。
復興作業の続きだ。」
「わかってるよ。」
リアムは伸びをして、気合いを入れるように肩を回した。
その姿にセラが笑いながら「まだ寝ぼけてるんじゃない?」と茶化すと、
アルトが「朝飯食ったら目ぇ覚めるだろ」と肩を叩いた。
今日からまた、新しい一日が始まる。
次回:恋心
読んでくださって、本当にありがとうございます!
投稿を始めてから、累計2000PVを達成することができました。
ここまで読んでくださった皆さんのおかげです。
「面白い」「続きが気になる」と感じて下さった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】から評価、または【ブックマーク】をお願いします!
あなたの応援が、次の更新の一歩になります!




